日本オムニチャネル協会 インタビュー

    2021.08.26

    在庫管理のリアルタイム性追求へ、顧客基点でサステナブルな物流網の構築目指す/~日本オムニチャネル協会 物流分科会リーダーに聞く

    オムニチャネルの振興を主たる事業とする日本オムニチャネル協会。「商品」「売場」「販促」「CS」「物流」「管理」の6つの分科会を活動主体とし、会合を定期的に開催するなどして現場の課題解決に取り組みます。ここでは「物流」分科会のリーダーである小橋重信氏に、活動内容や主な課題、今後の取り組みなどを聞きました。

    ―物流分科会の主なテーマ、活動内容を教えてください。

     「商品を届ける」という物流の役割は、オムニチャネル化によって変わろうとしています。特に実店舗を展開する小売店は、これまでは決められた日時に商品を店舗に配送すればよかった。しかし新たにECサイトを構築・展開したとき、原則として個人に配送しなければなりません。そこには店舗までではなく、その先の顧客に注文が入るたびに原則として配送を準備する必要があります。これまでの物流の仕組みや考え方が変わり、顧客やニーズに応じた配送が求められるようになります。

     こうしたオムニチャネル時代の物流はどうあるべきか。まずは物流分科会に参加する会員間で現状を把握・共有し、どう変わるべきか、何が足りないのか、何を考えればいいのかといった基本的な内容から1つずつ議論を積み重ねています。

     特にテーマとして重視しているのが「在庫」です。物流の仕組みが変わると、商品を保管する倉庫の役割、在庫をどう管理すべきかも考え直さなければなりません。ECサイトで商品を販売すれば、24時間注文が入って在庫が変動する。しかし、在庫管理システムにその情報が反映されなければ欠品しかねない。オムニチャネル化が進むことで、ECサイトの在庫はもちろんのこと、倉庫在庫含め店舗在庫も正確に把握する必要があります。在庫をどう捉え、どのように管理するのが望ましいか。物流分科会としてきちんと考えなければならないと思います。
    写真:日本オムニチャネル協会 物流分科会リーダー 小橋重信氏

    写真:日本オムニチャネル協会 物流分科会リーダー 小橋重信氏

    ―オムニチャネルを目指すにあたり、分科会ではどんな課題を議論しているのでしょうか。

     小売店がオムニチャネルをというと、その定義が曖昧で、企業ごとに規模や取り扱う商品の特性、目指すべきビジョンなどが違うのが現状です。しかしこれでは、分科会が取り組みを評価するのは難しい。そこで、オムニチャネルの進捗を定量的な評価基準で比較できる指標を設けるべきだと考えました。「この取り組みをしているならオムニチャネル度合いはいくつ」といった具合で定量化できれば、各社の進み具合いや課題を明確にできると考えました。しかし、この指標づくりが難しい。どんな取り組みをモデルケースにすべきか、そのときの評価はどれくらいかなどを考えるべきですが、具体的に進められずにいます。物流分科会の大きな課題の1つといっていいでしょう。

     物流分科会に参加するメンバーに、物流担当者や物流責任者が少ないといったことも課題ととらえています。オムニチャネル化による物流改革は、企業の根幹をなす戦略にほかなりません。そのため参加メンバーには、経営企画部やデジタル推進部、DX推進部などの戦略を担う担当者が多く参加しています。もちろん上流となる物流戦略を考えるには、こうした方々の意見が重要で役立っています。しかし半面、その物流を取りまとめ、現場での運用だけでなく、企業全体の物流戦略を現場視点で考える必要があります。目の前で起こる課題をどう解消するか、効率性を少しでも高めるため現場ではどんな改善策が求められるかといったボトムアップの取り組と同時に、企業の物流戦略を中長期的に考えることも重要です。分科会ではこうした声が少ないと感じます。企業のオムニチャネル化を見据えた「改革」と、現場の効率化を追求する「改善」。分科会では、これらを並行して取り組むための意見交換や提言をできるようになりたいと思います。

    ―課題に対し、分科会ではどんな解決策を模索していますか?

     指標づくりや現場の声を吸い上げるといった課題の解決策ではありませんが、物流分科会として取り組んでいるのが「在庫のリアルタイム化」です。オムニチャネル化には不可欠な取り組みと考えます。

     オムニチャネル化で物流に求められるのは、端的に言えば「顧客が欲しいときに商品が届く仕組み」です。つまり物流施策は顧客満足度と直結する取り組みなのです。では、欲しいタイミングで商品が届き、満足度を高めるために何が必要か。その1つが在庫数をリアルタイムに把握する仕組みです。実店舗を展開する小売店の場合、在庫管理システムには店舗と倉庫の在庫数を日次のバッチ処理で更新するケースが大半でした。在庫管理システムの在庫数と実際の在庫数が一時的に異なっていたとしても大きな問題ではありませんでした。しかし、24時間注文が入るECサイトでは、商品の在庫数が「1」なのかどうかが極めて重要です。「1」だと思っていたが、実際は最後の1点が売れて「0」というケースが起こりかねない。在庫の持ち方、考え方にはいろいろありますが、オムニチャネルを実現するためには、複数の実店舗、複数のECサイトで在庫数を共有し、かつリアルタイムで在庫数が反映されるシステムを構築するのが望ましいと考えます。

     とはいえ、従来の在庫管理システムを刷新し、データがリアルタイムに反映される在庫管理システムを導入するのはコストも時間もかかります。使いこなすための社員教育や運用するためのルールづくりも必要でしょう。こうした課題を解消してリアルタイム性を追求することが、オムニチャネル化で顕在化してくる課題解決につながると考えます。

    ―物流分科会の今後の予定、目指すべきビジョンを教えてください。

     これからは、企業視点での効率性を重視した物流を構築するだけでは不十分です。目を向けるべきは消費者です。「このECサイトで購入すれば、商品が明日届く」「商品を返品する場合、このECサイトは有料になってしまう」など、消費者は配送サービスをシビアに評価します。自社の都合ではなく、「顧客が欲しいタイミングで商品を受け取れる」ための物流を構築すべきだと考えます。

     分科会では今後、現状や課題を洗い出した上で、リアルタイムに在庫を管理するためのソリューションの要件を詰められればと考えます。在庫の考え方も含め、会員で議論を深められればと考えます。

     物流の「シェアリング」についても話し合えればと思います。競合企業同士が手を組み、地域によっては共同配送を展開するケースが増えています。配送するトラックの積載効率が低かったり、ドライバーが不足したりという問題が顕在化する中、非効率な取り組みを企業同士で解消する動きを推進できればと考えます。

     最近は「持続可能」や「サステナブル」という言葉の重要性が増しています。物流分科会として、こうした動きは見逃せません。物流をどう「サステナブル」へと昇華させるか。分科会ではこれからのビジョンとして積極的に取り組んでいきたいと考えます。
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