日本オムニチャネル協会 インタビュー

    2021.08.11

    会員同士の「協創」「共闘」を推進 持続的顧客エンゲージメント獲得と新たな顧客の需要創出を目指す~日本オムニチャネル協会 販促分科会リーダーに聞く

    オムニチャネルの振興を主たる事業とする日本オムニチャネル協会。「商品」「売場」「販促」「CS」「物流」「管理」の6つの分科会を活動主体とし、会合を定期的に開催するなどして現場の課題解決に取り組みます。ここでは「販促」分科会のリーダーである亀卦川篤氏に、活動内容や主な課題、今後の取り組みなどを聞きました。

    ―販促分科会の主なテーマ、活動内容を教えてください。

     オムニチャネルを前提としたとき、これまでの「販促」の意味や役割は変わると考えます。従来の販促は短期的な取り組みによって集客を図る、もしくは売上を高めるといった瞬発的な「仕掛け」施策の要素が強かった。しかし、これからは従来の「仕掛け」に加え、顧客とのエンゲージメントを「継続的」に高め、顧客期待に応え続ける「仕組み」が重要となります。オムニチャネルの実現に向け、会員同士でデジタルを活用した新しい「仕掛け」と「仕組み」を考え、実践し、成功モデルを産み出すことが販促分科会の主な役割です。

     もっとも、従来の短期的な効果を見込める販促を否定するつもりはありません。こうした販促を展開しつつ、顧客のエンゲージメントを継続的に高め、新しい需要を産み出す販促を組み合わせていかなければなりません。

     また、販促の「成果」をどう考えるかも、分科会のテーマの1つです。販促の役割が変われば成果の捉え方も変わります。そこで、従来の瞬発的売上を成果の指標としつつ、顧客のエンゲージメントや、継続的な売上の推移を把握する指標としてライフタイムバリュー(LTV)の成果測定・体制をどう構築すべきかを考えています。

     このように販促の役割や成果の測り方が変わると、顧客を取り巻くあらゆるタッチポイントで販促活動が必要になるのではと考えています。集客にとどまらず、売場や接客、決済、物流、仕入れ、商品、各チャネルなど、オムニチャネルを構成するサプライチェーンを見渡し、その価値をタッチポイントごとに伝え、継続的な集客・購買につなげる販促を検討しなければなりません。さらに、「販促=施策」だけではありません。これまでにない新たな販促の「仕組み」を模索しなければと、分科会では認識しています。
    写真:日本オムニチャネル協会 販促分科会リーダー 亀卦川篤氏

    写真:日本オムニチャネル協会 販促分科会リーダー 亀卦川篤氏

    ―オムニチャネルを目指すにあたり、分科会ではどんな課題を議論しているのでしょうか。

     従来型の販促では差異化できなくなったことが課題の1つです。例えばこれまでの販促といえば、チラシやPOP、クーポン、ポイントなどが一般的で、今なおこれらを実施する店舗も少なくありません。しかし、こうした販促は画一的で、他店と差異化しにくく、消耗戦となっている。これでは新たな効果を見込めません。そこでどんな販促が有効なのか。オムニチャネルを想定した販促の姿を議論しています。

     実店舗とECサイトのデータが連携していないことも、販促にとっては大きな課題です。ECサイトでは、どんな人がいつ、どの商品を買ったのかを調べられる。1回あたりや毎月の購入額から優良顧客も把握できる。しかし、実店舗ではECサイト同様のデータを収集できない。さらに、ECサイトの購買データを実店舗と連携できないなどの問題があります。オムニチャネルの推進には顧客を中心としたデータの連携や活用、分析するための環境づくりは必須です。これは販促に限らず、他の分科会でも重要課題として認識していることでしょう。どんなデータを収集すべきか、どのくらいの頻度で収集するかなど、データをどう連結・維持・管理し、顧客起点で活用していくのかから考え直さないといけないと認識しています。

    ―課題に対し、分科会ではどんな解決策を模索していますか?

     消費者の嗜好や行動は日々変化している。にもかかわらず、自社、業界都合が優先され、多くの店舗は顧客変化・ニーズを追随できずにいます。これからは店舗同士が競争するのではなく、共に手を取って新たな顧客ニーズと需要を創造する「協創」が求められると考えます。海外の大手プラットフォーマの勢力が強まる中、一緒に組んで立ち向かう「共闘」も必要です。「協創」と「共闘」が可能となる協会ならではの取り組みが解決策のヒントになるのではと捉えています。

     販促やキャンペーンなどの企画・運営を外部に依頼する委託先企業も巻き込むべきです。外注先を企画を考えてもらう発注先としてではなく、オンライン・オフラインを組合わせた新しい販促の仕組みを構築するパートナーとして「協創」するのが望ましいと思います。広告代理店やコンサルティング会社などに依頼して終わりではなく、前述の「仕掛け」や「仕組み」を一緒に考えるDX(デジタルトランスフォーメーション)や体制づくりを模索していきます。

     もちろん、これまで競合だった店舗と協創、もしくは共闘するのはハードルが高いかもしれません。しかし、独自の販促だけでは、ECを含めた業種の参入によって守勢になるのは周知の事実。今こそ真剣に協創や共闘の道を模索すべきと考えます。例えば同じエリアにある異業種店舗同士で協創し、エリア内新規需要創造と顧客エンゲージメントを高めるといった取り組みも手です。自店が他店への来店を促しつつ、他店が自店への来店を促す。消費者が近隣店舗を回遊しやすくする仕組みをつくることで、1店舗では難しい効果的な販促を実施できるようになり、地域の経済も活性化させる。これは一例にすぎません。顧客を中心に、自社発行のポイントカードと他店のポイントカードを連携し、利用者の購買行動によって顧客をきちんと理解する。これにより、詳細な消費行動に基づく販促を打ち出せるようになります。自社独自に実施可能な販促を打ち出しつつ、他店などと連携した販促も実施する協創と共闘が重要になるでしょう。また、DXによってこれが可能になると考えます。

    ―販促分科会の今後の予定、目指すべきビジョンを教えてください。

     消費者の行動や購買データなどを踏まえた2つの販促モデルを分科会全体で策定します。1つは、データを活用した産学連携による“今を捉えるオムニチャネル販促モデルの構築”です。会員企業が保有する顧客データを活用し、主なパターンや課題を分析して販促モデルを設計します。データ分析などに取り組む大学と連携し、消費行動を踏まえた販促モデルを産学連携してアウトプットする予定です。

     もう1つは、新型コロナウイルス感染症の影響で変化・加速した生活者の購買意識行動に対して、会員同士の予測・協創による“未来型オムニチャネル販促モデルの策定”です。実現性の高い販促モデルを策定し、日本オムニチャネル協会として、未来の「販促の姿」を提言できればと考えます。グループディスカッションやグループワーク中心の活動になりますが、ゴールを明確に定めることで深い議論を展開できるのではと期待しています。

     一方、コロナ禍における消費者のライフスタイルや購買行動の変化をつぶさに読み取ることも不可欠です。各会員の事業から生まれる「課題」を抽出し、各会員が自分事として課題解決に真剣に取り組んでいくことが、販促分科会の姿勢として持ち合わせていきたいと思います。
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