日本オムニチャネル協会 インタビュー

    2021.08.02

    売場が抱える課題と向き合い解消へ。オムニチャネルを見据え店舗の存在意義から見直しを図る~日本オムニチャネル協会 売場分科会リーダーに聞く

    オムニチャネルの振興を主たる事業とする日本オムニチャネル協会。「商品」「売場」「販促」「CS」「物流」「管理」の6つの分科会を活動主体とし、会合を定期的に開催するなどして現場の課題解決に取り組みます。ここでは「売場」分科会のリーダーである郡司昇氏に、活動内容や主な課題、今後の取り組みなどを聞きました。

    ―売場分科会の主なテーマ、活動内容を教えてください。

     売場分科会ではまず、「売場」の定義から見直しました。生活者のオムニチャネル化により、「売場=店舗」ではなくなったからです。

     例えば流通機能を基点として売場を定義すると、これまでは「流通の3要素(物流・情報流・商流)すべてが収束する場」でした。生活者を基点として売場を定義すると「情報と商品への接触、そして(最終的な)商品の取得を一度の来店で可能とする場」でした。

     しかし例えば、商品情報に接する機会はWebサイトにもあります。WebのニュースやSNSを介して商品について知る機会もあります。商品について知る機会を得られる売場の役割は変わり始めているのです。

     そこで現在、流通機能を基点とした売場は「流通の3要素(物流・情報流・商流)」のいずれかが提供される場」と定義し直しています。生活者を基点とする売場の定義も「情報と商品への接触、そして(最終的な)商品の取得のいずれか、あるいはその組み合わせの提供を可能とする場」にしています。

     このように売場とその役割が変わる中、どのように顧客行動をとらえるか。顧客行動データを元に仮説を作り、いかに顧客体験を高めるか。さらには実店舗とECを連携するとき、店舗の存在意義どう考えるのかなどを議論するのが主な活動内容です。
    写真:日本オムニチャネル協会 売場分科会リーダー 郡司昇氏

    写真:日本オムニチャネル協会 売場分科会リーダー 郡司昇氏

    ―オムニチャネルを目指すにあたり、分科会ではどんな課題を議論しているのでしょうか。

     分科会に参加する皆さんがどんな課題を抱えているのかを洗い出し、特に関心の高い課題の解決に乗り出しています。例えば、実店舗とECサイトの接客コミュニケーションの違いや方法を探ったり、メーカーの直販サイトと一般的なBtoC向けのECサイトの役割をどう切り分けるべきかを考えたりしています。

     スタッフの育成や評価も課題の1つです。実店舗とECサイトのスタッフでは学ぶべきスキルが違うし、何を基準に評価すべきなのかも異なります。オムニチャネル化が進めば、実店舗のスタッフがECサイトを案内したり、ECサイト訪問者に実店舗への誘導を促したりするケースもある。現実問題として各事業会社において、こうした取り組みを推進したスタッフをどう評価すればいいのかも悩みです。

     一方、データ活用も大きな課題です。実店舗で取得するデータとECサイトで取得するデータを掛け合わせ、新たな気づきを導出するといった取り組みをすべきだが、そもそも必要なデータを収集できないケースが今なお多い。実店舗は今も紙の台帳を使って顧客を管理(または顧客台帳すらない)しているという声も意外と多くあります。こうした状況ではオムニチャネルもままならない。顧客管理基盤となる顧客DBをどう使いこなすか、まずはどんなデータを入力すればいいのかなど、企業によってCRMの実現度合いも異なります。CDPに行く前段階の企業は、将来のCDPを踏まえて顧客DBのデータ設計が必要です。

     顧客行動を探る上で非構造化データの利活用も大切です。非構造化データを構造化するなどして分析対象となるデータに加工するなどの措置が必要です。しかし、どう構造化すべきか、どんなツールを使うべきかなど、分析フェーズまで進めずにいます。例えば、構造化された商品データに、関連する顧客行動や商品の画像(非構造化データ)をどう紐づけるか、画像をどう加工すべきかなども考えなければなりません。売場分科会に限ったことではありませんが、施策の効果・検証に役立つデータの品質や鮮度を維持・管理するデータマネジメントにも取り組まなければいけないと考えています。

    ―課題に対し、分科会ではどんな解決策を模索していますか?

     分科会ではこれまで、どんな課題があるのかを徹底的に議論してきました。これから課題解決に向けた施策を検討していく予定です。具体的には、どんなITツールを使えばいいのか。どんな機能を備えるべきか。実店舗やECサイトとツールをどう連携して使えばよいかなどを考えます。特に関心の高い課題1つずつ、適切な業務プロセスの改善及びITツールを検討する予定です。

     顧客の声を収集することも大切だと考えます。オムニチャネルに向けた施策が顧客にとって便利なのか、有益なのかを考察すべきです。そこで新たな試みではないものの、利用者へのヒアリングを徹底しようと考えています。新店舗を出店するなら、来店する人にタブレットを見せて、来店理由を聞いてデータ化するだけでも効果を見込めます。住んでいる地域の郵便番号を教えてもらえれば商圏分析も可能になる。帰り際に店舗の品ぞろえについて聞けば、店舗のコンセプトと利用者のニーズの乖離も探れる。目新しいことではないが、質問の聞き方も含め、利用者の声をつぶさに拾い上げられるようにすることが大切だと思います。これまで取り組んだことのない施策を検証して次期施策の確度を高めるには、地道なヒアリングやアンケートの重要性が増すのではと考えます。

    ―売場分科会の今後の予定、目指すべきビジョンを教えてください。

     「売場は今後、こうなる」といった明確なビジョンは必ずしも持ち合わせていません。まずは目先の課題を1つずつ解消し、オムニチャネルに向けて一歩ずつ取り組むことが大事だと考えます。ビジョンに到達するまでの道は長い。途中で諦めることなく、分科会に参加するメンバーがともに課題を解決できるような分科会の組織形態こそ、描くべきビジョンかもしれません。

     売場では現在、「〇〇Pay」に代表される各種決済サービスやスマートフォンを活用した非接触サービスなど、DXの波が押し寄せています。これらから得られる新たなデータをどう活用すべきか、ECサイトとどう連携すべきかなど、新たな課題も顕在化しています。新たに定義した売場が果たすべき役割を踏まえ、デジタルと融合した売場の姿を模索していくことができればと考えます。
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