日本オムニチャネル協会 セミナー情報・レポート

    2021.10.04

    米在住者が登壇し、米国の「オムニチャネル」や「DX」の最新事情を紹介/日本オムニチャネル協会がオープンセミナーを開催

    日本オムニチャネル協会(JOA)は2021年9月24日、「動き出す世界、日本はどうする?」と題したオープンセミナーを開催しました。ロサンゼルス在住でMIW Marketing and Consulting Group Inc CEO/presidentの岩瀬昌美氏をゲストに招き、米国のオムニチャネルの実状、新型コロナウイルス感染症の影響などについて紹介しました。ここでは、セミナーの一部を紹介します。

    日本の方が米国よりDXは進んでいる?

     セミナーの第一部では、「日本人が信じているアメリカとその実態」 と題して岩瀬氏が登壇。JOA会長の鈴木康弘氏が聞き手となって、米国の現状に触れました。

     特に興味深いのが、日本と米国では常識と非常識が違うという点。例えば日本のテレビ番組を見ると、米国の高級ショッピングモールには白人が多く映っているが、実際は必ずしもそうではないと岩瀬氏は指摘します。「ここはアメリカなのかと思うほど中国人が多い。中国人向けに“中秋の名月フェスティバル”といったイベントも実施されている。白人より中国人をターゲットに販売施策を打ち出す店舗が目立つ」(岩瀬氏)と、日本の報道と乖離している点を強調します。チラシなども英語と並行して中国語で書かれたものが多く、日本人が思う以上に中国の影響を受けていると言います。とはいえ、新型コロナウイルス感染症の影響で人出は少なく「コロナ前に比べて半分程度」と、米国も日本同様、人の動きは十分ではない状況だといいます。レストランも20時30分には閉店し、日本の状況に近いとのことです。
    写真:岩瀬昌美氏  MIW Marketing and...

    写真:岩瀬昌美氏  MIW Marketing and Consulting Group Inc CEO/president

     もっとも日本国内の報道を見ると、米国の消費支出は戻りつつあるという内容も散見されます。この事実について岩瀬氏は、「2020年3月の時点で個人を補償しようと前トランプ政権が打ち出した。失業した人の場合、原則として最大1800ドル/月が支給される。さらにコロナで600ドル/週、もらえるようになった。月に約4200ドル受け取るようになったことで金銭的に余裕のある人が増えたのが、消費を押し上げた要因の1つだと思う」と考察しました。貯金せずに買い物する人が多く、消費が回復したように見えていると同氏は考えます。
    写真:鈴木康弘氏 日本オムニチャネル協会会長、株式会社...

    写真:鈴木康弘氏 日本オムニチャネル協会会長、株式会社デジタルシフトウェーブ 代表取締役

     一方、米国の小売大手であるウォルマートの状況はどうか。岩瀬氏にのもとには以前より、日本から「ウォルマートやアマゾンの動きはどうか」といった問い合わせが良く来るといいます。こうした問いを受け、実際の状況について岩瀬氏は、「DXは日本より米国の方が遅れているのではないか。デジタル施策を次々打ち出すアマゾンが好調のように思われるが、ウォルマートの牙城をアマゾンがそう簡単に崩せるとは思わない」と指摘します。日本ではウォルマートのデジタル施策が強調されがちだが、岩瀬氏は「ウォルマートにデジタルやDXといった特徴が見受けられるとは必ずしも思わない。日本の報道のウォルマートと実際は違う」と言い切ります。

     なお、ウォルマートのオンライン販売の売上は、2021年から2022年にかけて「上昇率は6%程度になる見込み」(岩瀬氏)とのこと。多くの消費者がリアル店舗で買い物する傾向があり、「リアル店舗の雰囲気や良さを知っている消費者が、オンラインではなく“店舗で買い物すること”に価値を見出している」(岩瀬氏)と言います。オムニチャネルとはいえ、そこには「リアル店舗ありき」の販売施策や集客施策が求められることに言及しました。さらに「コロナが終息に向かえば、外出したくなるはず。オンラインにはない店舗ならではの買い物の醍醐味がある。リアル店舗は、こうしたニーズを満たすための準備を怠ってはならない」(岩瀬氏)と続けます。

     最後にDXについて岩瀬氏は、自身が日本に来たときのことを引き合いに出し、「日本でタクシーに乗ったとき、PayPayなどのキャッシュレス決済の種類の多さに驚いた。クレジットカードすら必要ない。米国のタクシーはこうしたキャッシュレス決済はない。その意味でDXは日本の方がはるかに進んでいるのではないか」との考えを述べました。DX推進のための知識やスキル習得の意欲は、「米国人より日本人の方が高い」(岩瀬氏)とまとめました。

    返品専門店の登場や返品時のクーポン利用促進などの動きも

     第二部では、「動き出す世界、日本はどうする?」 と題したパネルディスカッションを開催。岩瀬氏のほか、ワコール ウェブストア営業企画課 デジタル戦略アドバイザーの大藪範子氏と、JOA理事でオムニチャネルコンサルタントの逸見光次郎氏、モデレーターにJOA 商品分科会リーダーで、ディマンドワークス 取締役社長の齊藤孝浩氏を交え、日本のオムニチャネルの状況や今度の同行などを議論しました。

     大藪氏は第一部を聞いた上で、「米国は国土が広く、オンラインで購入したものを店舗で受け取ったり、店頭で辺品したりするのが難しい。配送も翌日ではなく数日かかることもある。日本のオムニチャネルの考え方が米国では当てはまらない。真似すべき点、真似できない点をきちんと見極めるべき」と述べました。

     これに対し岩瀬氏は、ユニークな事例を紹介。「『ノードストローム』は、ものを販売しない百貨店として注目されている。オンラインなどで購入した商品の返品を受け付ける専門店舗で、新たな百貨店の形の1つになると思う」(岩瀬氏)と言います。さらに、「『コアーズ』という中規模の百貨店では、Amazonで購入した商品の返品を受け付けるサービスを展開している。Amazonのレシートには、コアーズの割引クーポンが付いており、返品しに来た来店者の購買を促すようにしている」(岩瀬氏)と、「返品」という行動をトリガーにした販促事例も紹介しました。日本と違って米国では返品率が高く、サンクスギビングデーやクリスマスなどのプレゼントも多く返品されるといい、「もらったプレゼントなどをゲーム感覚で返品する人も少なくない」(岩瀬氏)ことも、こうしたサービスが登場した背景にはあるようです。

     齊藤氏は岩瀬氏にヴィクトリアズ・シークレットのV字回復について、「下着などを扱う事業が厳しくなる一方で、美容品などを扱う小売店『Bath & Body Works』の業績が好調だったと聞く。米国では、ヴィクトリアズ・シークレットの評価などはどう聞こえてくるのか」と質問します。
    写真:齊藤孝浩氏 日本オムニチャネル協会 商品分科会リ...

    写真:齊藤孝浩氏 日本オムニチャネル協会 商品分科会リーダー、有限会社ディマンドワークス 取締役社長

     岩瀬氏はBath & Body Worksがヴィクトリアズ・シークレットの事業だったと知らなかったとしつつも、コロナの影響があったのではと推察します。「米国のレストランでは日本のように、おしぼりは出てこない。しかしコロナによって意識が変わり、清潔さを求めるようになったことがBath & Body Works好調の要因の1つではないか」(岩瀬氏)といいます。

     逸見氏は、日本で当たり前になりつつある「当日・翌日配送」の米国の状況について質問しました。これに対し岩瀬氏は、「一部の店舗に限られる。『1時間でデリバリー』を謳う企業もあったが、高額な人件費がネックになって数年で撤退した。やはり米国の場合、国土が広いという問題がある。例えばロサンゼルスからニューヨークに5キログラムくらいの荷物をフェデックス(FedEx)で翌日配送しようとすると約100ドルかかる。日本同様の配送環境を構築するのは難しいのではないかと思う」と言います。FedExはコロナを契機に、サインなしで荷物を届ける、いわゆる「置き配」を展開しているが、FedExのトラックを追いかけて置き配の荷物を盗む被害も増えていると言います。そのため、Amazonの宅配ボックス(Amazon Hub ロッカー)の設置が進み、大事なものはロッカーを利用するケースも見られるようになっています。
    写真:逸見光次郎 氏 日本オムニチャネル協会理事 オム...

    写真:逸見光次郎 氏 日本オムニチャネル協会理事 オムニチャネルコンサルタント

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