DX コラム

    2021.02.11

    第2回 隗より始めよ

    DX化は、身近なところからはじめるのがいい

    管理部門がDX推進をしていくといっても、どこから手をつけたらいいか難しいものです。

    「隗(カイ)より始めよ」という、中国の故事成語があります。

    昔、中国の戦国時代の燕(エン)の王様が、優れた人材を集めるために、専門家の郭隗(カクカイ)に相談しました。
    郭隗は、「まずは凡庸な私を採用してください。そうすれば、私よりももっと優遇してもらえると考える優れた人材が自然と集まるでしょう。」と答えました。王様が、郭隗を優遇してみたところ、優秀な人が燕の国に集まるようになったという話です。

    「壮大な計画を実行するには身近なところからはじめるのがいい」
    「物事は言い出した人が最初に始めるべきだ」という意味です。

     管理部門が全社のDX支援をしようと動く前に、管理部門自身はデジタル化されてるのでしょうか?コロナ禍の中で、リモートワークが難しかった部門が管理部門です。
     管理部門には、郵便物やFax受け取り、契約書・社内文書押印、請求書の送付等、アナログ対応が多々存在しています。管理部門がDX推進を支援するためには、まずは自部門のデジタルシフトが実施できていなければ説得力がありません。

     管理部門のデジタルシフトでわかりやすいのが、脱ハンコの電子契約です。電子契約の導入にあたっては、業務フローとガバナンスの問題につきあたります。
     電子契約システムを入れただけだと、システム上で承認をするときに、
    誰が何の目的で契約しようとしていて、誰が確認したかもわかりません。
    また、代表者自身が時間を割いて承認作業をしなくてはならず、社内に混乱が発生してしまいます。契約書の締結にあたっては、以下の流れが各企業にあります。

    ・事業部門が必要な契約書をひな型から選択もしくは作成
    ・法務部門の確認
    ・契約先企業との交渉、同意
    ・両社の代表者の押印

     自社における業務フローを整備して、誰がどういった役割をもって電子契約システムを使うのか整理する必要があります。また、こうした際に今の業務を置き換えるのではなく、業務を再構築しないとシステムのメリットを活かすことができません。

     例えば、弊社の場合でいうと、今まで契約書は、ワークフローにのっておらず、書類の担当者、法務部門、私とでやり取りしていました。電子契約システム導入にあたり、ワークフローシステムと連動させ、担当者がワークフローで起案したものを法務部門、社長が承認することで、電子契約システム上でも押印される流れを構築しました。

     まずは、手始めに協力会社とのやり取りを電子契約に変えました。また、業務フローでは、自社フォーマットを使って電子契約システムで送付できる場合と、他社の電子契約システムを使う場合とで異なります。
     他社フォーマットや自社が採用していない電子契約システムを利用する場合は、ワークフロー承認の結果をもって、法務部門が電子契約システムでの押印を代行します。

     このような、デジタル化を管理部門が主導ですると、業務整理、システム、社内調整を実施することができ、これらの経験が、まさにDX推進に必要なスキルとなります。重要なスキルがどんなものか具体例をもとに、簡単に解説させていただきます。

    DX化に重要な3つのスキルとは?

    【業務整理】
     目的を明確にしたうえで業務整理を実施することが必要です。
     電子契約の目的は何かというと、無駄を省き業務をより迅速にすることです。リモートワークを導入して、どこでも契約が締結できるようにしたいところですが、そのために効率化が犠牲になれば意味がありません。
     目的がはっきりしてないと電子契約の仕組みをいれたのに、かえって業務が複雑化し、時間がかかり、責任があいまいになるような事態が起きてしまいます。電子契約やワークフローシステムを活用し、業務フローを整備することで以下を実現していきます。

     ・契約書の発送、物理的時間の撲滅。
     ・ワークフロー化により、契約書締結までのプロセスを可視化及び、責任の所在の明確化
     ・契約に関わる登場人物を整理し、迅速化。
      責任者以外の情報共有が必要な人には回覧で対応。
     
     業務フロー作成に関して、関係各所の既存業務をヒアリングして可視化をすることで、無駄を省き標準化していくことになります。
     目的設定から業務フロー作成までの一連の力が業務整理には必要となります。

    【システム】
     目的が明確になり、業務フローが整理されていることがシステム導入の前提です。隣の芝生が青く見えて、導入が目的になってしまうとシステムを導入したのに、まったく使われないということが発生します。その上で、電子契約サービスは、以下のようなポイントを踏まえ、選定します。

    コスト:初期、固定費と従量課金とありビジネスボリュームから従量部分を想定
    実績:利用者が多ければ、フィードバックも多く、機能が洗練されていく可能性が高い
    機能:機能として存在していても、実際の業務と適合しているか、お試し期間やデモ環境の提供をうけ、管理部門で実際の業務を想定して動かしてみることが必要
     
     また、システム化で多くのことが実現できますが、その中でも効果の差ががあります。あれもこれもと欲張ると、すべてが中途半端になってしまうので、本来の目的達成に集中しましょう。そして、導入して完了ではなく、導入後の課題にあわせて、システム利用方法の見直しや改善が肝心です。導入時の苦労と比較すると、導入後の改善のほうが労力が少ないうえに、得られる効果が大きいものです。
     また、実際にシステムを導入すると想定外の事象も発生し、選定のときに確認しておけばよかったということがあります。こういった失敗経験がDXを推進していく上で、何よりも変えがたいものとなります。


    【社内調整】
     新たな業務フローを考案して、システムを導入しても実施されなければ意味がありません。社長・関連部署への根回し、レクチャー、導入時のサポートと揃ってはじめて実施されていくものです。社長への説明は、会社にどういったメリットをもたらすのかを簡潔に説明する必要があります。

    ・リモートワークを可能とし、コロナ禍対策となる
    ・取引企業とのビジネスの加速、1週間ほど短縮できる
    ・社内業務の可視化、責任の所在をはっきりさせ、承認フローを短縮させる

     コストについては、収入印紙が電子契約では不要になるので、この分で捻出できます。同時に社長がいままで押印していた業務を、ワークフローで承認することで完結し、処理は法務部門で実施するなど運用イメージも説明します。
     システムの導入に対し、事前に社内説明をしても新しい変革には衝突がつきものです。何度も説明をして納得してもらい、導入サポートを続け、利用が浸透するまで根気づよく社内対応をしていく必要があります。

     電子契約という一例をあげましたが、管理部門がDX化されると、DXに必要となるスキル・経験値を習得することができます。また、社内においても管理部門との連携業務や社外とのやり取りから、デジタル化されたことを感じ、身近な成功体験となっていきます。
     顧客も巻き込んだ会社全体のDXは関係者も多く、実現まで時間がかかることも多いのですが、自部門でのDXは自社の問題なので短期間に実施可能なのもメリットです。

     最近では、政府がデジタル庁の発足にあたり、まずは省庁の業務・行政手続きからハンコをなくしていくという話がありました。ハンコという手段がデジタル化されて便利になるだけでなく、その裏で業務が再整理され、デジタル推進力がつき、成功体験を実感できる効果があるわけです。

     自分のこともできてないのに人の役に立つことはできません。「隗より始めよ」であります。
    林 雅也
    (株)ecbeing 代表取締役社長
    (株)ソフトクリエイトホールディングス代表取締役副社長
    一般社団法人日本オムニチャネル協会専務理事
    全農ECソリューションズ(株)取締役

    1997年、学生時代に、株式会社ソフトクリエイトのパソコンショップで販売をするとともに、インターネット通販の立ち上げ。1999年、ECサイト構築パッケージecbeingの前身であるec-shopを開発、事業を推進。EC構築パッケージメーカーとして、2005年大証ヘラクレス上場、2011年東証一部上場へ寄与。2012年、ホールディングス体制移行にともない新たに設立した株式会社ecbeingの代表取締役社長に就任。 2018年、全農ECソリューションズ(株)取締役 JAタウン運営およびふるさと納税支援事業実施。2020年、日本オムニチャネル協会専務理事。
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