DX コラム

    2021.02.11

    第4回 激動の時代、経営の羅針盤となる財務

    DX推進における、管理部門との衝突

     小売業においてオムニチャネルをはじめとする、デジタルシフトを推進していくと、推進しているメンバーと管理部門とで衝突が発生します。

    「将来のための投資をお願いしているのに、許可されない」
    「で、いくら儲かるの?そんな見込みのないことに割くお金はない 流行に踊らされてないか?」

    「失敗から学んでいく時代、どんどん打席に立たせてほしい」
    「前に投資したものは評価したの?」

    「会社が存続するため、経費をもっと抑制し、一人あたりの生産性を高めなければいけない」
    「また人件費の削減で現場が疲弊する」

     上記は対立的なやり取りでありますが、みな会社のことを思っての発言です。
     共通の目指す物差しがない中、各自が自分の立場で部分最適で必要と思われることを改善すべく意見しているため、対立が起きております。今の収入、支出、マーケティング費、投資費用がどうなっているか、1年後はどうなりそうか、3年後どうあるべきか、お互い理解していれば発言内容は変わってくるはずです。

    経営の見える化

     デジタルシフトするにあたり、多くの小売業で以下のような、既存事業の効率化及び、攻めの施策が経営戦略としてあげられていることと思います。

    効率化の施策
    原価
    ・仕入れ抑制
    販管費
    ・販管費抑制 固定費を中心に損益分岐点をさげる
    ・本社等で、業務標準化やデジタル活用をし効率化

    攻めの施策
    売上
    ・目先の売上をおわずに、CXを高めたり、商品を絞る、ブランドを高めて生き残っていく 
    ・デジタル化による、あらたな顧客層の開拓、既存顧客の深堀

     上記効率化で当面の資金繰りは目途がたちますが、中期に構造変換して攻めの施策を実現できるかが勝負になっている会社が多いのです。

     ここまでは、大筋賛成のはずです。
     ただしばらくすると、効率化ばかりで、攻めが止まってしまう、攻めばかりで効率化が進んでいない、攻めの施策を実施したけれどもうまく軌道に乗っていないといったことが起き、前述のような対立がおきるわけです。
     企業理念やビジョンに沿って優先順位を決めていくとともに、これを防ぐためにも、データドリブンな見える化された経営が必要となります。データドリブンな経営は、事業形態に合ったビジネス状況の把握とPDCAが回る管理体系の構築となります。

     従来から、経営の見えるかは財務部門の重要な役割でした。
     主なデータ指標の例については以下の通りです。

     経営指標/業績指標の計画策定と実績管理で、大きな物差しを示します。

    商品軸
     売上と粗利益の拡大に繋がる商品カテゴリー分析および荒利益率管理
     販売機会ロスや在庫費用削減、商品の改廃判断に繋がる指標管理
     商品ライフサイクルと需要予測

    顧客軸
     顧客層別分析による顧客の購買把握
     顧客ロイヤリティー分析

    店舗ごと、部門ごと、地域ごとで上記指標をしぼりこみ比較することによる潜在的な課題の発見といった様々な角度で管理会計を展開していました。
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    デジタル化とともに変化すべき管理会計

     デジタル化の進展により、消費者行動が大きく変わりビジネススタイルも変化するとともに、いままででは測定困難であったこともデータとしてつかめるようになり、管理指標をかえる必要に直面しています。

     モノ → コト
     本部管理 → 個人主導
     販売員 → プロデュサー・オムニチャネル化
     商品 → LTV
     インセンティブ主導 → 顧客体験

    と時代は変わってきております。

     「アクティブユーザ(AU)×ライフタイムバリュ(LTV)」
     店舗×EC

    と、実店舗とECの連携、顧客管理・在庫、商品単品と顧客との紐づけ、LTVなど取り入れるべき要素が上がっております。

     その結果、以下のような管理会計でみる項目が検討されてきております。

    ・売上額 と 売上比率(EC比率)
    ・オムニチャネルの実態の把握やアクティブ状況の把握が可能な顧客コホート分析

     全体が伸びていればいいのですが、ただ、お互いに食い合っているだけでは相乗効果がでておりません。
    店舗とECで取扱商品数は同じで、欠品が生じてないか?
    ECで獲得した顧客が店頭にきているか、店頭で獲得した顧客はECで購入されているか?
    こういった項目を、店舗ごとにECもあわせて分析します。

     さらに、スタッフの生産性についても、ECの登場で店舗だけで考えることはできなくなり、EC関与売上の概念などもいれないと、店舗が頑張った結果、ECの売り上げが伸びても店舗は無関心であるので、オムニチャネルな施策が進展しません。
     一方で、EC関与売上をKPIにすると「店舗の純粋な実力」が見えなくなる側面が悩ましいものです。
     また、自社のみで運営していればいいのですが、販売代行会社に店舗やネットを任せていれば、その取り決みの利益配分も悩みとなります。

     売上拡大ではなく、市場縮小する中、収益性を意識していなければ企業は生き残れません。各従業員が所属する事業はもうかっているか?これを管理会計で示すわけですが、店舗×ECとなるように、調整・ルール決めは肝となるわけです。
     お互いが協力関係となるためには、どの部署でも店舗でも管理会計・評価は「平等」であることがいります。売上の配分、人件費・出店費等々、各部門への経費配分は、管理部門としては横串で平等に提供していくこと大事です。いかにいい管理指標をもっていても、一部の人しか知らなかったり、共有までに時間がかかっては、変化の激しい時代に適応することはできません。データ分析ツールの発達により、即時にデータを集め、集計し、ビジュアルに全従業員で共有し、仮説検証することが可能となったので、多くの企業で活用が始まっております。
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    財務部門は、経営の羅針盤

     好条件の立地に店をだせば、売上・業績・利益が伸びていく時代は終わりました。とはいえ、ただコスト削減をして、といっても実際の現場では業務が煩雑に存在して疲弊します。また、DXを推進する中、数多くのトライも発生することでしょう。しかしながら、新規事業の成功率は低く、IT大手でも1~3割であります。トライの開始は心躍るものですが、撤退は難しいものです。多数打席に立つためには、早期の見極めも必要となります。
     そのためにも、管理会計をやり直し、データドリブンな経営が求められます。経営戦略だけでは結果はでません。全社員が、改革マインドとデータ活用力をもち、スピーディな意思決定が必要となりわけです。
     財務部門においても、指示待ちではではなく、全社員に先駆け動き、投資なども、意思決定が決まる前に事前準備はすべて済ませておくくらい気が利いてないと、いざ実施の後に数カ月準備が発生し、スピード感のある取り組みができません。
     オムニ視点で、売上計上・返品計上それぞれ、今までの管理会計の考え方を壊してでも考えることができるか、財務部門の手腕が問われる時代です。
    財務部門は、経営の羅針盤であり、戦略的財務部門へと変貌が求められます。
    林 雅也
    (株)ecbeing 代表取締役社長
    (株)ソフトクリエイトホールディングス代表取締役副社長
    一般社団法人日本オムニチャネル協会専務理事
    全農ECソリューションズ(株)取締役

    1997年、学生時代に、株式会社ソフトクリエイトのパソコンショップで販売をするとともに、インターネット通販の立ち上げ。1999年、ECサイト構築パッケージecbeingの前身であるec-shopを開発、事業を推進。EC構築パッケージメーカーとして、2005年大証ヘラクレス上場、2011年東証一部上場へ寄与。2012年、ホールディングス体制移行にともない新たに設立した株式会社ecbeingの代表取締役社長に就任。 2018年、全農ECソリューションズ(株)取締役 JAタウン運営およびふるさと納税支援事業実施。2020年、日本オムニチャネル協会専務理事。
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