寄稿・連載

    2021.02.11

    第2回 マーケティング VS 物流(後編)

     物流で世の中を住みやすく、豊かな世界にする、そんな世界を夢見て、物流の大切さを少しでも多くの方に知っていただければと考えています。第1回の「マーケティング VS 物流(前編)」では、COVID-19の猛威の中 勝ち組として、お客様に届ける仕組みを準備してきたウォールマートについて触れ、マーケティングが需要創造し、物流が需要を遂行することの大切さについてお伝えしましたが、第2回は、マーケティングVS物流の後編として、これまでコストセンターとして日の目を見なかった物流が、プロフィットセンターとして企業活動に貢献することについて書かせていただきます。
     (977)

    「物流とは、最後の暗黒大陸である」

     これは、経営マネジメントの父と言われたピータードラッカーの有名なことばです。経営課題を論ずる際、営業力や研究開発体制の強化であり、物流は後回しにされてきました。しかし、物流には開発や発展の余地が十分に残されており、物流を新たな経営資源として見直し、未来へとつながる入口となります。
     また、物流の需要性を語る上で、物流のあり方を定義する「必要なモノを、必要な時に、必要な量、必要とする場所に届ける」このことは、企業における顧客満足と企業コストの両方に大きな影響力を持つことを意味しています。
     もう少しわかりやすくお伝えすると、商品を選ぶ際に、商品の到着時間や商品の受け取り方法などが購入する決め手になっていませんか?モノあまりの時代において、商品の機能差は少なくなっており、お客様が、時間とサービスに敏感になっています。商品そのものの価値より、商品の届け方が顧客に選ばれる理由となっています。
     そして、企業が物流にかかるコストは、流通小売企業で売上の約5%、Eコマースでは約12%と広告費などのマーケティングコストと同等かそれ以上のコストがかかっています。さらに、作り過ぎなどの在庫の問題は、商品保管、維持費にかかるコストだけでなく、企業のキャッシュフローにも悪影響を与え、廃棄などの地球環境にまで影響を及ぼします。

    「物流を制するものが、市場を制する」

     物流をコストセンターとして考えられてきた背景として、物流の領域を倉庫や配送業務に関わるオペレーションとして捉え、オペレーションにかかる作業コストをいかに下げられるかが重要視されてきました。「歩かない、探さない、考えない」「ムダ・ムリ・ムラの排除」などは作業における効率化を上げるため、日々倉庫などの現場で改善活動をしています。その活動そのものは極めて大切で、生産性を上げるために物流現場ではなくてはならないものです。
     ただ、ここでの物流=コストセンターからプロフィットセンターへの変革は、物流現場でのオペレーションレベルではなく、物流を戦略的に考える=「ロジスティクス」のことを示しています。 
     (982)

    物流からロジスティクスへ(戦術から戦略へ)

     ロジスティクスは、もともとは軍事用語で、「兵站」を意味します。兵站とは、戦場における後方支援として、軍需物資や食糧などの補給を行う重要な任務でした。戦時において、兵站が勝敗を決めるとも言われており、第2次世界対戦で日本が敗れた原因のひとつが兵站でした。
     ビジネスにおいても、兵站(ロジスティクス)は、製造から販売さらには、回収までの企業活動を統合して、需要と供給から在庫の最適化を図るとともに、顧客満足の向上や、さらには、安全対策や、環境問題などの社会的課題への対応を目指すと戦略的経営管理とされています。
     物流を戦術的な現場オペレーションとして捉えた場合は、効率化や生産性向上を目指した動きとなり、物流をロジスティクス(戦略)として捉えた場合は、企業全体のおける物流の最適化を意味することになります。よって、物流をコストセンターからプロフィットセンターとして考える場合は、ロジスティクスとして戦略的な経営管理となります。
     ロジスティクスを語る時にサプライチェーンにいても触れる必要がありますが、サプライチェーンはロジスティクスの上位概念であり、ロジスティクスが1つの企業全体における最適化に対して、サプライチェーンは、ベンダー含め、複数の企業間を跨いだ供給連鎖を構築する統合機能となります。

    マーケティングとロジスティクス(需要創造と需要遂行)

     ロジスティクスが製造から消費者に届けられるまでの戦略であり、お客様に選ばれるためのサービスだと考えると、モノの価値を伝え需要創造するマーケティングとロジスティクスは、企業活動において、車の両輪のように前に進むために極めて重要であると思いませんか?
     また、現在はデジタル化が進む中で、消費者は魅力的な商品、競争力のある価格、創造的な広告だけでなく、商品の受け渡しにおける「利便性」や「時間」においてもより高度なサービスを求めています。
     前編でウォールマートのBOPISなどは、商品の受け取りの「多様性」により、お客様に選ばれていることをお伝えしました。ウォールマートもエブリデーロープライスを実現するため、規模の経済を生かした仕入れだけでなく、購買データなどから重要を予測し、無駄な在庫の削減や、移動の極消化など戦略としてのロジスティクスに力を入れています。
     ウォールマートは物流拠点を先に決めて、そこからデリバリーが可能なエリアに店舗を出店します。まさに「兵站」です。商品の供給ラインを確保することを優先とする考え方です。セブンイレブンもドミナント戦略と言われる、エリア内に集中的に出店するのは、占有率を上げて効率的な供給ラインを構築する目的があります。
     日本人は、良いモノを作れば売れる・・・と言った発想になりがちですが、良いモノを作っても、お客様にちゃんと届けることができなければ、商売は成立しません。日本は、国土も限られており、交通インフラがと整っている日本では、時間通りにモノが届いて当たり前な環境にいるので、物流を軽視する傾向にあるのではと思います。「送料無料」などは、その考え方の弊害ではと思います。

     お客様に選ばれ、喜ばれるには、お客様の需要を創造し、伝えるマーケティング活動だけでなく、物流の活動である、お客様が欲しい時に、欲しい場所に届けることも、とても大切だとご理解いただけましたでしょうか?
     今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。次回は「デジタル with 物流」をテーマに物流におけるデジタル化の流れをお伝えいたします。
    株式会社リンクス 代表取締役
    小橋 重信
    アパレル会社での在職中に上場から倒産までを経験。そこでは、在庫が滞留することの怖さを経験。その後の物流会社で多くの荷主の物流をサポートし、「物流から荷主企業を元気にする」ことを目標に在庫管理の大切さを伝える活動を行う。3年間のIT企業での経験から、ITの知見もあり、「ファッション×IT×物流」トータルでのコンサルティング活動を行う。
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