寄稿・連載

    2021.10.18

    【DX時代を生き抜く文章術 第9回】ファクトとオピニオンを分ける

    新規事業を成功させるためには、周囲を巻き込み賛同を得られる企画書や資料のクオリティこそが重要。「意味が分からない」「理解しにくい」という文章を並べるだけでは事業推進すらままなりません。では簡潔で要領を得た文章で「伝える」ためにはどんな工夫が必要か。本連載ではビジネスの基本である「文章」で伝えるためのポイントを紹介します。なお、本連載は「即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術」(CCCメディアハウス)の内容をもとに編集しております。

     「データ=ファクト」だと鵜呑みにするのは危険です。データの中にはファクト(事実)ではなくオピニオン(意見)を収集している場合が往々にしてあるからです。

     例えば、法人営業(BtoBマーケティング)において、見込み顧客リストが100件あったとします。100件存在するのは事実ですが、とりあえずすべてをリストアップした100件か、すでに取引があったり、顧客になり得なかったりする会社を除いた上での100件かによって、意味合いは変わります。言葉を定義できていない中で数えられた数字は、正確にはファクトと言えないものになってしまうのです。

     まずは、オピニオンとファクトをきちんと区別すること。そして、オピニオンの部分をいかにファクトで裏付けしていけるかどうか。これが、データを正しく理解し活用していく上で非常に重要だといえます。

     そもそも何のためにデータ(数字)を使うのかを考えることも重要です。

     何をやるにしても、データそのものがメインになることはそれほどありません。データはあくまで裏付けだからです。

     今、「データが必要だといわれているからデータを使っている」人は多いはずです。本書でも数字が重要と言っているので、データさえ入れればよいと考えている人もいるでしょう。ですが現状は、データを分析する人の多くがデータの海に溺れている。いわば目的もなく泳いでいる状況に陥っています。

     データをただ集め、ただ眺めただけでイノベーションが起こせるなら苦労しません。何よりも先に、達成すべきビジネス上の目的があって、その目的に沿ってデータは取捨選択されるべきです。

     言葉は時にウソをつきますが、数字はウソをつきません。

     データは数値の大きさをそのまま示す「絶対値」で管理されていることが多いようです。例えば、月別の売上高。今月は600万円の売り上げがあった、前月に比べると50万円多かった、などとなっていますが、季節要因などを加味しないとミスリードする可能性があります。前年同月比ではどうだったのか、あるいは5年前と比べたらどうだったのか。少し手を加えれば、データの価値はより高まります。

     特にコロナ禍を経験した2020年の売り上げは特殊要因が大きい。そういう場合は前年比で比較をしてもあまり意味がなく、前々年比で分析して多いのか少ないのかを検討すべきでしょう。

     よく「急成長している」といった表現が使われます。しかし、どの程度の成長なのかわかりません。単に20%成長といわれても、1億円企業の20%成長なのか、1兆円企業の20%成長なかでは、数字の持つ意味がまるで違います。さらにいえば、1年で20%成長なのか、10年かかっての20%成長なのか。期間も重要な判断基準になります。

     言葉ではなく数字で理解し、数字も絶対値や率をバランス良く把握するクセをつけたいものです。そうすれば情報リテラシーは飛躍的に高まります。

     「数字」「ファクト」「ロジック」は、年齢や性別、国籍の違いを超えて、誰もが納得しやすい論拠です。

     社内外に向けて報告書を書く際も、前回紹介した「雲・雨・傘」は問題の概要を把握し、整理するのに役立ちます。思考を進める際には、問い(論点)と答え(結論)が対応しているかを、すぐに確認することもできます。ですから、プレゼンなど人に説明する際にも「雲 → 雨 → 傘」の順に話の流れをもっていくと、理解してもらいやすくなるはずです。

     お互いの意見を尊重するためには、自分の意見を相手にわかってもらうロジックとアウトプット力が必要です。見たことや学んだことを自分なりに解釈し、付加価値を付けて表現する力がアウトプット力です。

     目の前に起こっている事実、過去にあった事実を的確にとらえ、その上で論理的にメッセージを展開する。

     ビジネスにおいて正しい意思決定を促すには、このファクトとロジックの合致は欠かせません。

     同じことが分析にもいえます。結果につながる分析は、ファクトとロジックが合致しており、〝腹落ち感〟を生みます。逆に、ファクトとロジックが合致していない分析は、どれだけ時間をかけようとも、結果につなげることは難しい。

     ファクトだけを個別に理解しても、それらの間のつながり(ロジック)がなければ、重大な抜け漏れや見逃しが発生し、誤った結論を導いてしまいかねません。
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    本連載は、CCCメディアハウス刊行の「即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術」の内容を一部編集したものです。
    CCCメディアハウス「即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術」(白鳥和生著)
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    筆者プロフィール
    白鳥和生
    株式会社日本経済新聞社 編集 総合編集センター 調査グループ次長。
    明治学院大学国際学部卒業後、1990年に日本経済新聞社に入社。編集局記者として小売り、卸・物流、外食、食品メーカー、流通政策の取材を担当した。「日経MJ」デスクを経て、2014年調査部次長、2021年から現職。著書(いずれも共著)に「ようこそ小売業の世界へ」(商業界)「2050年 超高齢社会のコミュニティ構想」(岩波書店)「流通と小売経営」(創成社)などがある。日本大学大学院総合社会情報研究科でCSRも研究し、2020年に博士(総合社会文化)の学位を取得。消費生活アドバイザー資格を持つほか、國學院大学経済学部非常勤講師(現代ビジネス、マーケティング)、日本フードサービス学会理事なども務める。
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