寄稿・連載

    2021.08.31

    【DXスタートアップ革命 第4回】働きたい障がい者と企業をマッチング、データ分析で働き方のあるべき姿の立証も進める

    DXで事業を創出、もしくは事業を拡大した企業はどんな点に気を付け、成功へと突き進んだのか。第4回は、障がい者向けの雇用支援事業を展開するヴァルトジャパン。業界の課題にどう切り込み、DXをどう進めていったのか。同社の取り組みを紹介します。なお、本連載は日本経済新聞出版「DXスタートアップ革命」の内容をもとに編集しております。

     障がい者の就労支援といえば国が主体で新陳代謝が起こりにくい。90%が福祉職員という事業所では十分な営業活動が行えず、受注量が圧倒的に不足している実態もある。こうした社会課題に向き合うのがヴァルトジャパンです。民間のビジネスとしてインフラがほぼ未整備の状況で、働く意欲のある障がい者の活躍機会創出を支援するプラットフォーム事業を展開します。

     同社が提供するプラットフォームでは、就労継続支援事業所のスキルデータを基に、企業と障がい者を合理的にマッチングします。マッチングにより事業所の受注量を増やせるようにするだけではなく、障がい者の「個性や特徴」に基づいて就労機会を得られるよう配慮します。同社が民間企業から受注した仕事を全国の事業所に分配したり、最終品質管理を担ったりすることで、効率的かつ品質を担保した仕事の流通基盤を構築しています。プラットフォームの登録事業所数は2021年4月時点で1000超、ワーカー数は1万2000人超、受発注案件数は1500を超えます。

     同社の代表取締役 小野貴也氏は「当社はソーシャルインパクトを与えていくスタートアップ。深刻な課題に向き合い、解決することに挑戦している」と、プラットフォームを提供する真意を語ります。さらに同氏は、仕事が流通して終わりではなく、同時に1人ひとりの働き方改革も必要だと指摘します。そこで同社は障がい者らのスキル、実績、ポテンシャル、リソース稼働状況、障がい特性などをデータ化して収集・分析し、マッチングの精度を高める取り組みにも注力します。さらに産業医大学と協力し、障がい者の仕事上のパフォーマンスデータやヘルスケアデータを収集・分析し、働き方のあるべき姿を立証することにも取り組みます。目線を合わせたDXが必要――。小野氏は障がい者の視点で課題を俯瞰し、その解決策にデジタルの積極的な利活用を検討します。

     日本の福祉サービスは「世界的にトップクラス」と小野氏は指摘します。SDGsの取り組みのように、経済と社会課題の解決の両輪を回していくことが世界的なスタンダードとなる今、申告な社会課題を解決することに長ける日本人は、ソーシャルインパクトの領域でリーダーを張れると小野氏は断言します。さらに同氏は、新規事業を考える人に向け、ぜひこの社会課題解決型に挑戦してほしいと呼びかけます。
    Information
    企業/団体名 ヴァルトジャパン株式会社
    所在地 東京都千代田区
    事業内容 障がい者特化型BPO事業、障がい者雇用支援事業、延岡産品EC「のべちょる」の開発・運用事業など
    取り組む課題 障がい者の雇用機会を増やしたい、働く障がい者の活躍機会を創出したい
    解決策 障がい者と企業をマッチングするプラットフォームを提供する、データ分析に基づくサービス開発を進める
    本連載は、日本経済新聞出版刊行の「DXスタートアップ革命」の内容を一部編集したものです。
    日本経済新聞出版「DXスタートアップ革命」(守屋実監修)
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    筆者プロフィール
    守屋実
    1992年、ミスミ入社、新規事業開発に従事。2002年、新規事業の専門会社エムアウトをミスミ創業者の田口弘氏と創業、複数事業の立ち上げと売却を実施。2010年、株式会社守屋実事務所を設立。新規事業創出の専門家として活動。ラクスル、ケアプロの立ち上げに参画、副社長を歴任後、ジーンクエスト(ユーグレナグループ)、プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会、サウンドファン、ブティックス、SEEDATA(博報堂グループ)、AuB、みらい創造機構、ミーミル(Uzabase グループ)、JCC、テックフィード、キャディ、セルムなど数々の企業の役員、理事などを歴任。JR東日本スタートアップのアドバイザー、JAXA上席プロデューサー、博報堂フェロー、内閣府の有識者委員などを務める。2018年にブティックス、ラクスルを2カ月連続で上場に導く。著書に『新しい一歩を踏み出そう! 』(ダイヤモンド社)。近著は『起業は意志が10 割』(講談社)。
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