寄稿・連載

    2021.11.24

    【DX時代を生き抜く文章術 第12回】箇条書きのススメ

    新規事業を成功させるためには、周囲を巻き込み賛同を得られる企画書や資料のクオリティこそが重要。「意味が分からない」「理解しにくい」という文章を並べるだけでは事業推進すらままなりません。では簡潔で要領を得た文章で「伝える」ためにはどんな工夫が必要か。本連載ではビジネスの基本である「文章」で伝えるためのポイントを紹介します。なお、本連載は「即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術」(CCCメディアハウス)の内容をもとに編集しております。

     思うようにキーボードのタッチやペンが進まない人は、「何をどう伝えたいのか」を深く考えずに書き始めるケースが多いようです。大事なのは、書く前の「考える時間」です。この時間は、集めた材料(ネタ)をメモとして整理することに使います。整理は「原因(傾向)」と「結果(対策)」、「賛成(メリット)」と「反対(デメリット)」といった対立軸で行うのがおすすめです。

     メモは最初のステップとして、「何をどう伝えたいか」といった要旨を一言(一文)で考えます。新聞の見出しのような役割で、文章を書く目的が明確になります。次のステップが、最初のステップに関連する要素を箇条書きにすること。そして、3つ目のステップとして、本筋から大きく離れる事実は省き、同類の要素をまとめ、材料を仕分けしてみるのです。事前に材料となる要素を箇条書きし、さらに番号をふっておけば、何を優先して書けばよか、何を省けばよいかが見えてきます。

     相手に文章の内容を正確に伝えるためには、「5W1H」の要素を盛り込むのが基本です。 まず、何を伝えたいのか?(What)、それはどうすればいいのか?(How)、それはなぜなのか?(Why)──という流れにもっていきます。

     しかし、文章が続かない人は、「なぜ」(Why)が抜けている場合が多い。「なぜ、どうして」と自問しながらその答えを書き進めていくことで、伝えたい内容の理由や原因が肉づけされ、情報が詰まった文章になっていきます。

     5W1Hと言いましたが、私はあえて6W3Hで考えることをおすすめします。5W1HにWhom(誰に)、単なるHowに、How many とHow much を加えると、文章を構成する要素にバラエティが出て、納得感が増します。

     自分が分かっていることは、読み手も分かっていると思いがちです。読み手が疑問に思わないように先回りし、丁寧に説明する思いやりこそが、伝わる文章をつくります。

     前述のメモを見ながら、最も伝えたい結論から書いていきます。そして、「なぜ」(Why)を繰り返し自問していくと、状況に対する原因や理由といった情報の枝葉部分(詳細)を書き進められます。詳細はメモにして、それを見ながら読み手に分かりやすいストーリーを考え、その順番にメモを並び替える。この流れに沿って説明する気持ちで書いていきましょう。

     文章にはタイトルを付けることをお薦めします。それも、最後に考えるのではなく、書き始める前に考えておくと頭の整理になります。新聞記者も、記事を書き始める前に、あるいは取材をしている最中に、「見出し(タイトル)」を頭に思い描きます。

     例えば新聞の社説を想像してみてください。「国際協調でインフレ対策を」という見出しがあったとします。これが新聞社の主張であり、最初の段落にも見出しと同じ主張の文章をもってきます。例えば「新型コロナウイルス感染拡大対策で各国が大規模な財政出動をした結果、開発途上国を中心に財政が逼迫し始めた。インフレ懸念が高まるなか、金融面での国際協調をすべきだ」と主張します。そして、主張の根拠や前提として、現在起こっている事実や数字を並べ、説得力を持たせていくのです。

     見出し(タイトル)を軽視しがちなのがメールです。「全体会議の件」「打ち合わせの件」「お願い」といった紋切り型のタイトルが散見されます。「全体会議の配布資料の件」「新規出店オーナー様との打ち合わせの件」「代理出席のお願い」とした方が、開封されないままスルーされることは少なくなるはずです。

     提案書や企画書の場合も同様です。「顧客戦略に関するご提案」よりは「コールセンター業務の迅速化に関するご提案」、「チラシ削減とリーチ率向上のご提案」の方が、読み手は内容をイメージしやすいはずです。何を伝えたいのかを明確にすることで、メールをすぐに読んでもらえるのです。

     書く内容をメモ書きする際のポイントは、タイトルとともに、その根拠や前提となるキーワードを意識することです。キーワードとは、これまでお伝えしてきた「ファクト」と「データ」です。なぜキーワードを意識することが必要かというと、あなたがこれから書く文章の中で最も訴えたいことは何なのか、ということと密接に関係してくるからです。

     キーワードを眺めていると、見えてくるものがあります。個別のファクトから共通項を見つけたり、一般的な法則や主張が導き出せたりします。

     例えば、「小売業のA社はベトナムに進出した。物流業のB社もベトナムに進出した。サービス業のC社もベトナムに進出した。つまり、日本企業の多くがベトナムに進出しているのは、巨大な潜在市場を開拓するためである」といった感じです。

     ビジネス文章を書く上で大切なのは、事前に集めた大事な情報と、そこから導き出した主張や推論などを「モレなく、ダブリなく」 書くことです。間違った情報が載っていてはそもそも失格ですが、大事な情報を書きもらしている場合も不合格です。そこ紹介した「6W3H」も生きてくるわけです。
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    本連載は、CCCメディアハウス刊行の「即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術」の内容を一部編集したものです。
    CCCメディアハウス「即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術」(白鳥和生著)
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    筆者プロフィール
    白鳥和生
    株式会社日本経済新聞社 編集 総合編集センター 調査グループ次長。
    明治学院大学国際学部卒業後、1990年に日本経済新聞社に入社。編集局記者として小売り、卸・物流、外食、食品メーカー、流通政策の取材を担当した。「日経MJ」デスクを経て、2014年調査部次長、2021年から現職。著書(いずれも共著)に「ようこそ小売業の世界へ」(商業界)「2050年 超高齢社会のコミュニティ構想」(岩波書店)「流通と小売経営」(創成社)などがある。日本大学大学院総合社会情報研究科でCSRも研究し、2020年に博士(総合社会文化)の学位を取得。消費生活アドバイザー資格を持つほか、國學院大学経済学部非常勤講師(現代ビジネス、マーケティング)、日本フードサービス学会理事なども務める。
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