寄稿・連載

    2021.10.19

    【DXスタートアップ革命 第9回】ベンチャー企業と個人投資家を結び、国内リスクマネーの供給量増加を目指す

    DXで事業を創出、もしくは事業を拡大した企業はどんな点に気を付け、成功へと突き進んだのか。第9回は、ベンチャー企業や個人投資家向けのクラウドファンディングサービスを提供する日本クラウドキャピタル。業界の課題にどう切り込み、DXをどう進めていったのか。同社の取り組みを紹介します。なお、本連載は日本経済新聞出版「DXスタートアップ革命」の内容をもとに編集しております。

     「ベンチャー企業は資金調達が難しい。プロの投資家は製品・サービスがマーケットに適合するかどうかといったPMF(プロダクトマーケットフィット)で判断するため、実績がないと相手にしない」。こう話すのは日本クラウドキャピタル 代表取締役 CEOの柴原祐喜氏です。こうした課題を解消するために同社はITを活用し、ベンチャー企業と個人投資家を結び付け、未上場企業の“民主化”を目指しています。

     同社はそのための手段として、株式投資型クラウドファンディングサービス「FUNDINNO(ファンディーノ)」を運営しています。これは、IPO(新規公開株)やバイアウト(株式の買い取り)を目指すベンチャー企業に、個人投資家が1口10万円前後という少額で投資できるサービスです。2017年4月のローンチし、2021年9月末時点で累計成約額は50億円を上回ります。「個人投資家はベンチャー企業に投資したくても、未上場株式を買う機会がなかった。こうした投資家に新たな選択肢を付与できる」と、同社 代表取締役 CEOの大浦学氏はサービスの強みを訴求します。

     FUNDINNOを活用することで、ベンチャー企業と個人投資家双方にメリットがあるといいます。ベンチャー企業は「投資家を探すのは時間がかかりがちだが、資金を短期間で調達できる」「自社製品・サービスのファンを獲得できる」といったメリットを、個人投資家は「ベンチャー企業に出会えても必要な情報を得られないケースは多いが、情報が開示されていて安心」「応援したい企業に少額から直接投資できる」といったメリットを見込めます。

     「国内におけるリスクマネーの供給量が少ないという構造を変えたかった」(柴原氏)という思いも、サービスを提供した背景にはあります。日本にもVC(ベンチャーキャピタル)やエンジェル投資家はいるものの、国内のベンチャー企業への出資規模は海外より小さいのが現状です。そこで豊富な資金がある個人家計へのアプローチが必要だと考えたといいます。

     同社は今後、リスクマネーの循環を促していく考えです。現在はイグジットしたときに利益が出る仕組みだが、株主コミュニティ制度を使って持ち株を売買するサービスの展開を視野に入れます。柴原氏と大浦氏は、「投資家が安心して投資できるマーケットの拡大を目指す。FUNDINNOを基点に、新たな投資の形を模索していきたい」と意気込みます。
    Information
    企業/団体名 株式会社日本クラウドキャピタル
    所在地 東京都品川区
    事業内容 第一種少額電子募集取扱業務、FUNDINNO(ファンディーノ)の運営業務
    取り組む課題 投資情報不足に悩む個人投資家に投資機会を与え、資金調達に悩むベンチャー企業の課題を解消したい
    解決策 未上場のベンチャー企業に少額投資できるサービス「FUNDINNO」を提供し、国内のリスクマネー供給量を増やす
    本連載は、日本経済新聞出版刊行の「DXスタートアップ革命」の内容を一部編集したものです。
    日本経済新聞出版「DXスタートアップ革命」(守屋実監修)
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    筆者プロフィール
    守屋実
    1992年、ミスミ入社、新規事業開発に従事。2002年、新規事業の専門会社エムアウトをミスミ創業者の田口弘氏と創業、複数事業の立ち上げと売却を実施。2010年、株式会社守屋実事務所を設立。新規事業創出の専門家として活動。ラクスル、ケアプロの立ち上げに参画、副社長を歴任後、ジーンクエスト(ユーグレナグループ)、プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会、サウンドファン、ブティックス、SEEDATA(博報堂グループ)、AuB、みらい創造機構、ミーミル(Uzabase グループ)、JCC、テックフィード、キャディ、セルムなど数々の企業の役員、理事などを歴任。JR東日本スタートアップのアドバイザー、JAXA上席プロデューサー、博報堂フェロー、内閣府の有識者委員などを務める。2018年にブティックス、ラクスルを2カ月連続で上場に導く。著書に『新しい一歩を踏み出そう! 』(ダイヤモンド社)。近著は『起業は意志が10 割』(講談社)。
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