寄稿・連載

    2021.10.12

    【DX時代を生き抜く文章術 第8回】ロジックとは流れがスムーズなこと

    新規事業を成功させるためには、周囲を巻き込み賛同を得られる企画書や資料のクオリティこそが重要。「意味が分からない」「理解しにくい」という文章を並べるだけでは事業推進すらままなりません。では簡潔で要領を得た文章で「伝える」ためにはどんな工夫が必要か。本連載ではビジネスの基本である「文章」で伝えるためのポイントを紹介します。なお、本連載は「即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術」(CCCメディアハウス)の内容をもとに編集しております。

     「論理的」とは「わかる」ということです。

     その文章は、最初から最後まできちんとつながっているか。

     「わかる」文章を書くためには、「過不足のない」文章を心がけることです。つまり、「なるべくシンプルに言えないか」を考えるのです。

     料理が苦手な人ほど、レシピを見ずにいきなり「アレンジ」してしまいがちです。ベーシックなカレーすらできないのに「カレーにコーヒーの粉を入れるとうまいって聞いたから入れてみよう」みたいなことばかりやってしまう。これではおいしいカレーができないのと同じで、伝わる文章は書けません。

     論理的な文章を書く訓練で最もいいのは、他人に読んでもらうことです。

     会話から文章を起こしていくのも、流れがスムーズな点でわかりやすい文章を生み出す簡単な方法です。

     外資系コンサルタントの世界では、論理的な話の組み立てを「雲・雨・傘」理論と呼んでいるそうです。「雲が垂れ込めてきた」という事実に対して、「雨が降りそうだ」という解釈があり、それに対して「傘を用意しよう」という行動が論理的に導き出されるというものです。

     「雲・雨・傘」の理論は因果関係を表しています。「○○だから□□であり、□□だから△△である」という筋道を立てた情報の伝え方です。

     「雲・雨・傘」の基本的な構造は、「前提」「推論」「結論」です。

     前提とは、一般的な法則や具体的な事実を指します。

     推論とは、前提から結論に導くための理由付けです。前提と結論をつなぐ役割があり、ここがロジックの肝になります。

     結論は、その人の最も主張したいことであり、読み手にアクションを起こさせる要素です。

     次の例はあまりにも有名です。
     前提 = 人間はみな死ぬ。
     推論 = ソクラテスは人間である。
     結論 = ソクラテスは死ぬ。


     この例では、前提である「人間はみな死ぬ」は普遍的なルールです。推論では「ソクラテスは人間である」という個別の例を当てはめて結論につなげています。これは「演繹的推論」と呼ばれ、「三段論法」ともいわれます。ロジックの中で、最も基本となる考え方です。前提が正しく推論も正しければ、正しい結論が導き出されます。

     一方で、「○○の原因(結果)には□□や■■などがあり、□□の原因(結果)には△△と▲▲がある」といった、漏れと重複がないように情報を伝える方法があります。いくつかの個別事象を積み上げ、そこから結論として一般法則、無理なく言えそうな結論を導くものです。

     次のような例があてはまります。
     前提1 = 私が初めて見たハクチョウは白かった。
     前提2 = きのう見たハクチョウの群は白かった。
     結論 = 今、目の前にいる白い鳥はハクチョウである。


     この場合、ファクトとデータが多いほど結論の正確性が高まります。私が見てきたハクチョウが1羽よりも10羽、さらには100羽の方が正確性は高くなります。つまり、結論は100%確実ではないということです。

     通常は、ある程度の確率でその結論が正しければ、それを使うことに問題はありません。ただ、少数の事実から一般化すると結論を誤ってしまう場合があることを頭の片隅に置いておくべきでしょう。Aさん・21歳独身女性、Bさん・28歳独身女性、Cさん・24歳独身女性が、「この商品を買いたい」と言っている場合、「20代独身女性はこの商品を買いたい」との結論を導き出してもいいでしょう。とはいえ、「女性全体」「(男女問わず)20代」がこの商品を買いたいと考えているとも言えます。

     ハクチョウの例と20代独身女性の例は、先に説明した演繹的推論に対して、「帰納的推論」と呼びます。2つを組み合わせると、情報を論理的かつ効率よく伝えることができます。

     一方、漏れや重複がないかをチェックする「MECE(ミーシー)」という手法があります。M=Mutually(互いに)、E=Exclusive(重複せずに)、C=Collectively(全体的に)、E=Exhaustive(漏れがないように)の略で、「モレなく、ダブりなく」考える概念です。

     「ダブリはないがモレあり」だとすべてを検証できずに、今まで気づかなかった新しい発想や答えを逃してしまう原因になります。

     「モレはないがダブリあり」では効率を阻害し、時間内に最善の答えにたどり着けませんし、能力や時間の配分も非合理になってしまいます。

     「モレあり、ダブリあり」は問題外ですが、思いつくままにアイデアを出していく場合は、よく「モレあり、ダブリあり」の状態になります。

     文章を書く際も、今まで発想が及ばなかった、漏れている部分を網羅的に考えることはとても重要です。重複したところばかりを考えていても発想は広がりません。「モレなく、ダブりなく」、全体的な視野が大切になります。
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    本連載は、CCCメディアハウス刊行の「即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術」の内容を一部編集したものです。
    CCCメディアハウス「即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術」(白鳥和生著)
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    筆者プロフィール
    白鳥和生
    株式会社日本経済新聞社 編集 総合編集センター 調査グループ次長。
    明治学院大学国際学部卒業後、1990年に日本経済新聞社に入社。編集局記者として小売り、卸・物流、外食、食品メーカー、流通政策の取材を担当した。「日経MJ」デスクを経て、2014年調査部次長、2021年から現職。著書(いずれも共著)に「ようこそ小売業の世界へ」(商業界)「2050年 超高齢社会のコミュニティ構想」(岩波書店)「流通と小売経営」(創成社)などがある。日本大学大学院総合社会情報研究科でCSRも研究し、2020年に博士(総合社会文化)の学位を取得。消費生活アドバイザー資格を持つほか、國學院大学経済学部非常勤講師(現代ビジネス、マーケティング)、日本フードサービス学会理事なども務める。
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