DX実践セミナー

    2021.10.27

    地方創生や地元企業のDXを後押しする自治体、市民を巻き込むDX施策が推進のカギに/DX実践塾第7回開催

    DXマガジン総編集長の鈴木康弘が塾長として対談企画をお届けする「DX実践塾」。その第7回が、2021年10月14日に開催しました。ここでは第7回DX実践塾の内容を紹介します。

    自治体DXが地元企業のDXを後押し

     第7回のテーマは「自治体DX」。ゲストに、日本デジタルトランスフォーメーション推進協会代表理事や名古屋大学 客員教授、総務省 地域情報化支援アドバイザーなどの肩書きを持つ森戸裕一氏を招き、自治体DXの現状や地方固有の課題などについて話しました。

     森戸氏は冒頭、自治体の現状について「行政と民間がいよいよ融合し出した。自治体が民間企業と積極的に手を組むことで地方創生や自治体のDXは促進する」と、”官民連携”を前提にDXに取り組む動きが顕著になっていることを述べました。さらに「官や民、大企業や中小企業、東京や地方などの隔たりも取り除かれつつある。特定の枠に納まらない視野で連携することがDX推進には不可欠である」と指摘しました。
    写真:日本デジタルトランスフォーメーション推進協会代表...

    写真:日本デジタルトランスフォーメーション推進協会代表理事 森戸裕一氏

     とはいえ、中には「自治体の取り組みに中小企業はなかなか関われない」「東京の企業が地方の取り組みに参加する必要性がない」など、否定的に考えてしまう経営者は少なくありません。これに対し森戸氏は、「自分たちは関係ないと思うべきではない。むしろ積極的に自社の強みを活かす姿勢を示すべきだ。こうした発想こそ重要。まさに自社の発想を“トランスフォーメーション”しなければならない」と、企業規模や地域性にとらわれることなく自治体DXに関与すべきとの見解を示しました。

     実際に自治体がDXに取り組む動きは「増えている」(森戸氏)と言います。「地方の場合、大きな組織といえば自治体や地方銀行となる。これらがDXに向けて動き出すことで、地域の中小企業なども動く。デジタル庁の創設などにより、自治体もDXに本腰を入れ始めた。地方の企業はこうした波に乗り、自社のDXを進めるべきである」(森戸氏)と言います。地元の自治体の動きを注視し、自社が乗り遅れないよう準備する必要性を指摘します。中にはITを利活用しない中小企業もいます。しかし、「例えば自治体がFAXを止めれば企業もFAXを止める。このように、周囲の取り組みに合わせる企業は多い。自治体のDXが加速することで、ITを利活用しない企業の割合も徐々に減ってくる」と、地方の中小企業もIT導入によるDX化が少しずつ起きていると指摘しました。

    住民や地元企業を含めた全員が変わらければDXは成し得ない

     では、自治体はDXをどう推進しているのか。森戸氏によると、「多くの自治体がDXを情報システム部門に任せている。しかし、これではDX推進は失敗する。情報システム部門は基幹システムを運用するほか、自治体全体のコンプライアンスを管理したり、セキュリティ環境を整備したりするのが主な役割。これに対し、DX推進は“アクセル”を踏み続けなければ成功しない。コンプライアンスやセキュリティといった“ブレーキ”をかける役割の情報システム部門がアクセスを踏み続けることはできない」と指摘。情報システム部門とは別部署がDX推進を担当すべきと述べました。さらに、「自治体の場合、ブランディングやマーケティングをDXで変革するケースが目立つ。しかしITとDXが混在し、情報システム部門がブランディングなどの施策を主導するケースが多い。約1700ある自治体の半数が、こうした体制で取り組むため、効果的なブランディングやマーケティングを実施できずにいる」と、現状を指摘しました。

     これに対し鈴木は、「民間企業の場合、トップである経営者の強い思いや姿勢がDX成功には欠かせない。特に自ら創業した経営者は、失敗を嫌がるサラリーマン社長より強い覚悟で断行する。自治体の場合、トップは選挙で選ばれ、任期がある。こうしたトップではDXを推進しにくいのではないか」と疑問を呈します。
    写真:DXマガジン 総編集長 鈴木康弘

    写真:DXマガジン 総編集長 鈴木康弘

     森戸氏は「長が行政出身か民間出身かで進み具合は異なる」と述べます。その理由として「民間出身の長は自治体の事情を十分理解していない。つまり「知らない強み」があり、いい意味で周囲を気にせず突っ走れる。DX推進にはこうした勢いも求められる」(森戸氏)と続けます。

     森戸氏はさらに、自治体DXが成功するポイントとして「みんなで取り組む」ことを挙げます。これは自治体の特定部署だけ頑張るのではなく、市民や地元企業も含めて変わらないと進まないと言います。「地域に住む全員が変わらなければDXは成功しない。自治体と市民という関係も、売り手や買い手という関係も存在しない。一人一人の行動変容がDXを推進させる」と、成功するための心構えを述べました。もちろん、そのためには基盤も重要で、DXにはデジタルをベースにする基盤構築も必要だと言います。「社会の環境を変えるといった取り組みにデジタルは不可欠。思いだけでは成し得ない。こうした取り組みを具現化するためにもITやデジタルを利活用する基盤や体制にも目をむけるべきだ」(森戸氏)と指摘します。なお、中国や韓国ではこうした基盤整備のための実証実験が盛んで、森戸氏は日本も市民や企業を巻き込んだ実証実験を進めるべきとの見解を述べました。

     自治体が情報発信する広報体制もDXには必要だと森戸氏は続けます。「自治体として地元住民に取り組みを説明するだけではなく、東京などの大都市や海外に対してもDXの取り組みをアピールすることが大切である。多くの人に知ってもらい、注目されることがDX推進を後押しする。地元以外の企業との共創も考えられるようになる。これからの自治体は、市民だけではなく世界に向けて情報発信する体制を構築すべきだ」と強調しました。

     例えば森戸氏が住む福岡県福岡市の場合、デジタルの積極的な利活用を外部に発信していると言います。「福岡市長は元アナウンサーということもあり、説明が分かりやすい。メディアを活用して福岡市の取り組みを効果的に発信している。こうした“広報DX”は自治体に限らず、広報専任のいない中小企業もブランディングなどにメディアを効果的に利用すべきである」と指摘しました。
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