「誰か」が動き出すのを待つだけではDXは成功しない
経営者が決意しなければDXは絶対にうまくいかない――。
これは筆者がクライアントによく話すことです。この言葉をどう受け止めるかで、その後の会社の動きは変わります。
「まずは動ける範囲で動きます」と言葉を素直に受け入れた企業は、社内の雰囲気も変わり始めます。経営者自ら行動し出した企業や、経営者を動かすために行動し出した企業は確実に前進します。
一方、「そうですね」「協議します」と態度を保留する企業は、デジタル化は後退します。とりわけ若い社員の不安が増大するでしょう。
多くの企業はDXを必要だと認識していても、行動に踏み出せずにいるのです。経営者の中には、「行動したい。まずは担当者と話す」と答える人が少なくありません。担当役員や部門長の中には、「社長を説得するのが難しい」と考える人もいます。必ずしもやる気がないわけではないのです。
ではなぜ行動を伴わないのか。そこには「自分が言い出して先導役になりたくない」という心理が見え隠れします。皆、誰かが動き出すのを待っているのです。これはもちろん望ましくありません。「誰か」を待つのではなく、「自分」が手を挙げ、主体的に行動ずることがDX推進には必要です。
経営者が放つ「No!」には理由がある
DXを成功させるには経営者の決意が必要です。ただし、周囲が経営者の決意を引き出す方法もあります。周囲がDXの必要性を訴え続けることも成功させる上では大切です。
経営者の中には社員の提案に対し、「No」と言い切る人が少なくありません。こうした経営者にDXの必要性を訴求しても「No」と言われてしまう。そう思ってなかなか言い出せないケースも多いのではないでしょうか。
では、経営者を説得する方法はないのでしょうか。筆者は必ずしもそう思いません。経営者がDXに「No」を突きつけるのは、DXを正しく理解せず、恐れているからです。そんな経営者の決意を引き出すには、経営者が何を考え、何を判断基準にしているのかを理解することです。さらには未来の可能性を根気強く説得していくことが大切です。経営者の立場になって対応すれば、必ず道は開けます。
「How」と「What」を使い分けながら説得する
経営者の説得には、経営絵やの意思決定スタイルやタイプを理解することが必要です。経営者の意思決定スタイルは一般的に、「マネジメント型」と「リーダーシップ型」に分かれます。秩序を重んじてリスクを嫌うマネジメント型と、変革意識が強く、自らのリスクで意思決定するリーダーシップ型です。
マネジメント型の経営者には、「What」(何をすればよいか)を提案するのが効果的です。特にサラリーマン型の経営者は、出世していざトップに立つと、何をしていいのか分からない人がいます。未経験の分野には不安を感じてしまいます。そこで「What」を多く提供し、承認してもらう形をつくることが大切です。
リーダーシップ型の経営者には、「How」(実現のための具体的な手法)を提供するのが効果的です。特に創業経営者の場合、やりたいことは明確でもどうやればいいのか分からないケースが少なくありません。そのため経営者は、自身の意思を理解し、具体的な解決策を提示する人を求めています。経営者がやりたいことを形にする「How」を提供することが大切です。
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