DX推進体制構築は起業より困難
既存事業でDXを推進するのは起業するより難しい――。筆者は経験上、こう考えます。一番の理由は、「環境の違いによる人の意識」にあります。
ゼロから起業するとき、関係者の意識は未来を向いています。そのため、体制を構築するのはそれほど難しいことではありません。
一方、既存事業をDXで推進する場合、既存ビジネスの成功体験を捨て、新たな意識で体制を構築しなければなりません。当然、難易度は高まります。
DX推進体制を構築する6つの極意
DX推進体制の構築は、構築後に起こり得るトラブルなどを想定し、慎重すぎるくらいに進めることが大切です。では具体的に気を付ける点はどこか。筆者の経験をもとに「6つの極意」として紹介します。
極意1:推進リーダーは経営者が一番信頼する人を任命する
DX推進体制を主導するリーダーは、経営者の右腕とも言える存在です。一番信頼する人を任命し、二人三脚で推進すべきです。
会社の変革を実施する場合、周囲からさまざまな声が聞こえてきます。それらの声に翻弄されないよう、推進リーダーは心から信頼できる人を任命します。能力だけで任命すべきではありません。猜疑心を持たず、運命を共にできると本心から思える人を任命します。
極意2:経営者を後ろ盾にして、社内の抵抗勢力に対処する
推進リーダーは、ビジネスの新たな枠組みをつくるのが役割です。そのため、既存ビジネスに関わる人たちの抵抗を正面から受け止めることになります。そこでときには、経営者を後ろ盾にして取り組むことも必要です。
筆者もDXの推進リーダーを務めていたとき、さまざまな抵抗に遭い、苦労を強いられました。しかし経営者の後ろ盾により、窮地を脱せられました。経営者の後ろ盾を得るには、経営者に対し、定期的に報告・相談し、信頼を積み重ねていくことが何より大切です。
極意3:メンバーは全社員を対象に、立候補で集める
推進リーダーが決まったら、次はメンバーの選定です。メンバーは全社員を対象に、立候補で選ぶのが望ましいでしょう。全社員から選ばれたメンバーは、使命感を持って取り組んでくれるからです。
筆者もDXを推進する際、グループの各方面からメンバーを任命してもらったことがあります。しかしプロジェクトが暗礁に乗り上げると、任命されたメンバーは自己保身に走る人が徐々に増えていきます。
これに対し、立候補した人は当初の使命感を忘れず、暗礁に乗り上げたときでも共に苦難に立ち向かってくれました。
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