DXが進むことで企業や社会はどう変わるのでしょうか。これまで、DXがもたらす未来の姿として、「ハイブリッド・ワーキングの開始」と「デジタル生産性の向上」といった2つの変化を取り上げてきました。
参考:ハイブリッド・ワーキングとデジタル生産性に関する記事はこちら
コミュニケーションのデジタル化が生産性向上に大きく寄与、魅力的な職場づくりも不可欠に
デジタルとアナログの適正なバランスが「ハイブリッド・ワーキング」の可能性を広げる
今回は、DX時代に求められる人物像を考えます。
企業の経営者と話をしていると、「社員から良いアイデアが出てこない」「こちらが指示するまで動かない」「革新的な人材を採用したい」などの声をよく聞きます。特に大手や老舗と呼ばれる企業の経営者に多いと感じます。
しかし、こうした企業に優秀な人材は本当にいないのでしょうか。新卒で優秀な人材を多数採用してるはずです。にもかかわらず、なぜ「社内に人材がいない」と嘆くのでしょうか。
企業で良い人材が育たなくなっていることが理由の1つと考えられます。時代の変化とともに、企業に求められる人材も変化します。つまり、これまでと「優秀」の定義が変わりつつあるのです。
これまで企業は、自社への帰属意識の高い社員を大量に育成してきました。社員も意識して周囲の空気を読み取り、同質化していったのです。当時は、こうした人を「優秀」であると考えてきました。
しかし、インターネットの普及に伴って情報量が増えた結果、「情報を集める」ことより「情報を活用する」ことに主眼が置かれるようになりました。この変化が、企業に求められる「優秀な人材」の定義を変えることになります。つまり、上司からの指示を確実に遂行する「同質化人材」ではなく、新たなアイデアを生み出す「能動的人材」が求められるようになっていったのです。
これからは、周囲から「変わっている」「協調性がない」などと思われる人材にスポットライトが当たるようになるでしょう。お互いの意見をぶつけ合い、新しいアイデアを生み出すことが、企業にとって「価値ある人材」だとみなされるようになります。
社員は「異質な人材」を目指すべきです。もっとも、「変わり者」や「協調性のない人」という意味ではありません。周囲に忖度しなかったり、自分の軸(主義・主張)を持っていたりという意味です。「自分の軸を持った自立した人」とも言えます。こうした人材が、これまでの常識を打ち破り、自社をDXによって新たなステージへ導いてくれるのです。