目標達成に向け、同時にいくつも走らせることが多いプロジェクト。DX推進の機運が高まる中、プロジェクトの進捗やリスクを管理する体制の重要性が増しつつあります。しかし足元を見ると、「そもそもプロジェクトのノウハウやスキルに精通する人材がいない」「プロジェクトごとに進め方やルールが違う」「プロジェクトの状況を把握できない」などの声は少なくありません。プロジェクトの成功率を引き上げるため、企業はプロジェクトの手綱をどう握ればよいのか……。
こうしたプロジェクトの管理体制構築や課題解決を支援するのがPMIです。PMIはプロジェクトマネジメントをリードする機関で、「チャプター」と呼ぶ支部を世界に300拠点以上構え、コミュニティを通じて国や業界特有のプロジェクトの課題解決を図ります。さらに、PMIが策定するプロジェクトマネジメント・プロフェッショナル(PMP)®の資格は、世界中の組織で活用され、プロジェクトの専門家がプロジェクトやチームをリードする能力を持っていることを証明するものです。プロジェクトマネジメントに関する資格のデファクトスタンダードとして多くの業界から認知され、PMP資格取得者数は国内で4万1000人、PMPを含む資格取得者数は世界で延べ139万人を数えます。
そんなPMIが、プロジェクトを推進する企業や団体向けに注意すべき動向をまとめたレポートを公開しました。それが2022年2月28日に発表した
「グローバル・メガトレンド2022」です。レポートでは、プロジェクトマネジメントに影響を与えるトレンドとして6つの事象を提起します。
・デジタル・ディスラプション
・気候変動危機
・人口動態の変化(高齢化)
・経済の変化(サプライチェーンの脆弱性など)
・労働力不足
・市民運動と平等運動(DE&I)
中でも注目が「デジタル・ディスラプション」です。一般的には「破壊的なイノベーション」を指しますが、ここでは新型コロナウイルス感染症のまん延を機に、企業のデジタル化が一気に進んだことも内包します。リモートワークの促進により、多くの企業がコミュニケーションやコラボレーションを支援する各種ITツールを導入しました。最新のテクノロジーを活用したツールを使い始めるケースも目立ちます。レポートではこうした働き方の変化こそ注意すべきだと警鐘を鳴らします。
なぜデジタル・ディスラプションがプロジェクトマネジメントに影響するのか。PMI Japan, Leadの杉山氏は、「新たなITツールの導入は業務効率や生産性の向上に大きく寄与する。一方で、データ漏洩やプライバシーの喪失といったリスクを負う可能性を見逃してはならない。コロナによる環境変化は、ITツールの導入を“待ったなし”で加速させた。ただ、安全性を十分検証せず導入に踏み切ったケースは少なくない。IT導入プロジェクトでは、ITツールを迅速に導入することに主眼を置きがちだが、データの保管場所や第三者による漏洩リスクなどのセキュリティ対策も並行して徹底しなければならない。これからのプロジェクトマネジメントにおいては、例えばセキュリティ1つを見ても、構成するメンバーの担当領域ごとにセキュリティを階層化し、各領域でマネジメントを構築しなければならない」と指摘します。