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インタビュー

プロジェクト成功のカギは、PMIが提唱する独自の“世界共通言語”

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プロジェクトの専門家などで構成する「PMI(Project Management Institute)」。1969年の協会発足以来、プロジェクトマネジメントの重要性を訴求し続け、現在の会員数はグローバルで約70万人の規模を誇ります。そんなPMIが、組織やプロジェクトの専門家、チェンジメーカーへ影響を与えるトレンドをまとめた「グローバル・メガトレンド2022」を発表しました。多くの企業がDXプロジェクトを進める中、どんな事象に目を向けるべきか。プロジェクト成功には何が必要か。レポートのポイントと企業が気を付けるべき点を、PMI Japan, Leadの杉山俊彦氏に聞きました。

プロジェクトマネジメントに影響を与える6つのトレンド

 目標達成に向け、同時にいくつも走らせることが多いプロジェクト。DX推進の機運が高まる中、プロジェクトの進捗やリスクを管理する体制の重要性が増しつつあります。しかし足元を見ると、「そもそもプロジェクトのノウハウやスキルに精通する人材がいない」「プロジェクトごとに進め方やルールが違う」「プロジェクトの状況を把握できない」などの声は少なくありません。プロジェクトの成功率を引き上げるため、企業はプロジェクトの手綱をどう握ればよいのか……。  こうしたプロジェクトの管理体制構築や課題解決を支援するのがPMIです。PMIはプロジェクトマネジメントをリードする機関で、「チャプター」と呼ぶ支部を世界に300拠点以上構え、コミュニティを通じて国や業界特有のプロジェクトの課題解決を図ります。さらに、PMIが策定するプロジェクトマネジメント・プロフェッショナル(PMP)®の資格は、世界中の組織で活用され、プロジェクトの専門家がプロジェクトやチームをリードする能力を持っていることを証明するものです。プロジェクトマネジメントに関する資格のデファクトスタンダードとして多くの業界から認知され、PMP資格取得者数は国内で4万1000人、PMPを含む資格取得者数は世界で延べ139万人を数えます。  そんなPMIが、プロジェクトを推進する企業や団体向けに注意すべき動向をまとめたレポートを公開しました。それが2022年2月28日に発表した「グローバル・メガトレンド2022」です。レポートでは、プロジェクトマネジメントに影響を与えるトレンドとして6つの事象を提起します。
・デジタル・ディスラプション
・気候変動危機
・人口動態の変化(高齢化)
・経済の変化(サプライチェーンの脆弱性など)
・労働力不足
・市民運動と平等運動(DE&I)  中でも注目が「デジタル・ディスラプション」です。一般的には「破壊的なイノベーション」を指しますが、ここでは新型コロナウイルス感染症のまん延を機に、企業のデジタル化が一気に進んだことも内包します。リモートワークの促進により、多くの企業がコミュニケーションやコラボレーションを支援する各種ITツールを導入しました。最新のテクノロジーを活用したツールを使い始めるケースも目立ちます。レポートではこうした働き方の変化こそ注意すべきだと警鐘を鳴らします。  なぜデジタル・ディスラプションがプロジェクトマネジメントに影響するのか。PMI Japan, Leadの杉山氏は、「新たなITツールの導入は業務効率や生産性の向上に大きく寄与する。一方で、データ漏洩やプライバシーの喪失といったリスクを負う可能性を見逃してはならない。コロナによる環境変化は、ITツールの導入を“待ったなし”で加速させた。ただ、安全性を十分検証せず導入に踏み切ったケースは少なくない。IT導入プロジェクトでは、ITツールを迅速に導入することに主眼を置きがちだが、データの保管場所や第三者による漏洩リスクなどのセキュリティ対策も並行して徹底しなければならない。これからのプロジェクトマネジメントにおいては、例えばセキュリティ1つを見ても、構成するメンバーの担当領域ごとにセキュリティを階層化し、各領域でマネジメントを構築しなければならない」と指摘します。
写真: PMI Japan, Lead 杉山俊彦氏

写真: PMI Japan, Lead 杉山俊彦氏

 事業を飛躍的に成長させる手段として、最新テクノロジーの動向にも注意すべきと杉山氏は続けます。「DXにより新規事業をプロジェクト化して進める企業が増えた。このとき、アイデアを具現化する手段として最新テクノロジーを理解しておくことが大切だ。」と強調します。  とりわけAIの動向を見守るべきと杉山氏は指摘します。「AIは消費者が意識しない至るところで使われ出している。多くの企業が意思決定やリスクマネジメント、データ分析などを強化する目的でAIに投資している。こうした流れはさらに加速するだろう」(杉山氏)と言います。なお「グローバル・メガトレンド2022」では、AIなどの技術を採用する割合がさらに高まる分析結果も掲載。IoTやブロックチェーン、仮想現実、音声認識などのテクノロジーを抑え、AIの採用がもっとも進むと分析しています。
図1:AIの採用率は2021年の21%から2026年に...

図1:AIの採用率は2021年の21%から2026年には49%まで上昇すると予測

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プロジェクト成功のカギは“世界共通言語”

 では企業が今後、プロジェクトの成功率を高めるためには何が必要か。その1つがプロジェクトマネジメントの体系化です。プロジェクトの開始から終了までの工程や、何をどう管理するのかを洗い出し、プロジェクトの内容や目的を問わず共通の管理手法を取り入れます。例えばプロジェクトの品質管理をどんなスケジュールで進めるのか、具体的に品質をどう評価するのか、品質低下をどう防ぐかなどを策定します。リスク管理なら想定されるリスクの洗い出し、リスク発生時の具体的な対応策、リスクの監視方法などを策定します。  こうして定めたプロジェクトマネジメント手法を、自社のすべてのプロジェクトの共通手法として適用します。これにより管理対象の抜け漏れを防げるほか、プロジェクトごとの品質やリスク、コストなどをコントロールしやすくなります。  もっとも、「企業や部署独自の管理手法を構築、導入することもできるが、ハードルが高い」と杉山氏は指摘します。プロジェクトには社内の各部署からスタッフを招集することが珍しくありません。業務提携する外部企業のメンバーがプロジェクトに参加する機会も増えています。さらには人材不足により、システム開発をオフショアするケースもあります。「自社の従業員以外のスタッフがプロジェクトに参画するケースは増えつつある。独自の管理手法を適用すると、こうしたスタッフはプロジェクトの目的や進め方を見誤りかねない。引いてはプロジェクトの成功率を引き下げてしまう」(杉山氏)と言います。  そこで有効なのが、PMIが構築する管理メソッドです。杉山氏は「プロジェクトマネジメントの考え方や取り組み内容、利用するツールや技法などは、PMPで取り扱う内容がデファクトスタンダードである。プロジェクトマネジメントに必要な知識を整理した『PMBOK』も国際標準として定着している。これらはいわば、プロジェクトマネジメントの『世界共通言語』だ。多くの企業がPMPやPMBOKに基づくプロジェクトマネジメントを実施している。プロジェクトマネジメントをゼロから独自に構築せず、PMPやPMBOKを活用するのが望ましい」と強調します。  PMIでは各国のチャプター主導で、国や業界に応じたさまざまな管理メソッドのノウハウ蓄積や研究も進んでいることが強みです。「PMIの管理メソッドの特徴は柔軟性。コミュニティはベースとなる管理メソッドを使い、各国の時勢や業界特有の課題を想定したメソッドを用意する。日本企業で言えば、食品や製造業などの業界の状況を踏まえたプロジェクトマネジメントを構築、導入できるようになる」(杉山氏)と言います。  一方、プロジェクトリーダーはもちろん、プロジェクトに参画するスタッフのデジタル対応も成功率アップには必要です。杉山氏は、「今後のプロジェクトの多くは、目標達成の手段としてデジタル化を進めるのが前提になる。ITを使ってどう効率化するか、テクノロジーを使ってどう課題を解決するかといった思考が常に求められる。一方で、デジタルスキルに精通するスタッフと、実際の現場のオペレーションを熟知したスタッフの両方をプロジェクトメンバーにアサインし、相互に理解して推進できるかの両方が必要。この視点を見落とせば、プロジェクトの成功率は圧倒的に低くなるだろう」と語気を強めます。  なお「グローバル・メガトレンド2022」では、大企業を中心に浸透しつつあるリスキリング(再教育)の重要性についても指摘しており、デジタル化を前提とするプロジェクト推進に必要なスキルとして、次の6つを提起しています。
・革新的思考
・法令および規制コンプライアンスに関する知識
・セキュリティとプライバシーに関する知識
・データ・サイエンスのスキル
・データ主導の決断を下す能力
・協働的なリーダーシップのスキル  最後に杉山氏は、PMPやPMBOKの内容やPMIの管理メソッドが今後、プロジェクト以外の通常業務でも一層求められるようになると指摘します。「働き方は多様化し、今後はプロジェクト単位で必要な人材を社内外から集める仕事の進め方が中心になるだろう。こうした働き方をPMIでは『プロジェクト・エコノミー』と呼ぶ。プロジェクト・エコノミーが加速すれば、プロジェクトごとに招集された多様な人同士が一緒に仕事をするのが常態となる。このとき大切なのがコミュニケーションであり、共通の考え方に他ならない。仕事の進め方を暗黙裡に理解する社内の同僚と一緒に仕事をするわけではないことを強く認識すべきだ」(杉山氏)と言います。  さまざまな経歴やスキルを持つ社内外の人と“期間限定”で共通の目標に向かって突き進むプロジェクト。そこでは、世界中の誰もが知っている考え方や基準を持ち込むことが何より必要です。プロジェクトの稼働頻度が高まる中、PMIが果たす役割はさらに重要になるでしょう。
Project Management Institute
https://www.pmi.org/

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