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インタビュー

2021.02.05

【デジタルシフト時代のSDGsな経営者たち】連載第1回 コールセンターをAI化した次はリモート時代の在宅コールセンターを!

リモートワーク化も進み、これからは社会も企業もデジタル対応していかないと、デジタル格差はどんどん広がっていきます。デジタルシフトこそ、持続的可能性…つまりSDGsな企業や社会を作る上で大切な要素。では、どうやってデジタルにシフトしていけばいいのか…そこで、今連載では元セブン&アイホールディングスのCIOで、セブン&アイのリアル店舗とネット販売を融合するオムニチャネル戦略の指揮を執った鈴木康弘氏が実際にデジタルシフトに成功した経営者とその方法を紹介。第1回目の今回はスカパー・カスタマーリレーションズのコールセンターをデジタルシフト化した代表取締役社長の新巻康彦氏にその方法を語っていただきました。

オペレーター×AI活用でお客さまの満足度を上げる

鈴木 今日は、私がお手伝いさせていただいた、御社のコールセンターのデジタルシフト化「スマートコンタクトセンタープロジェクト」について振り返りましょう。
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新巻 スカパー・カスタマーリレーションズ(以下、SPCC)は、衛星放送サービス「スカパー!」のカスタマーセンターを運営している会社です。2017年にコールセンター業務のデジタルシフトを進めることにしました。「スマートコンタクトセンタープロジェクト」と銘打ったのですが、そのプロジェクトの総合プロデューサーという形でサポートしていただいたのが鈴木さんでした。
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鈴木 今回のプロジェクトで、カスタマー業務のデジタルシフトが成功したのは、それ以前からSPCCさんが積極的に業務をデジタル化できていたからだと思います。このプロジェクトが始まる前から、全国各地に分散しているコールセンター同士がコミュニケーションできるように、web会議を導入したり、オペレーターのシフト表などを工夫して、業務のスマート化を積み重ねてこられて、その延長線上に「スマートコンタクトセンター」の実現があったのではないでしょうか。

新巻 以前も、お客さまとの会話音声をテキスト化して、それを分析してサービス改善に役立てる、といったことはやっていました。ただ、そのテキスト化はバッチ処理だったので、翌日にならないとデータになりませんでした。今回のプロジェクトでは、AIを2つの分野で活用しています。1つはお客さまとのやり取りの音声をリアルタイムでテキスト化しつつ、回答候補を出すこと。スカパー!はチャンネルの数が200近くと膨大です。当然、お客さまは個々のチャンネルについて詳しく聞きたくて、コールセンターに電話をしてきます。さすがにオペレーターが全てのチャンネルにまで精通することは不可能です。そこで、その会話をテキスト化して、AIが会話内に出てきたチャンネルや番組、出演者の名前に反応して、回答候補として関連するナレッジ(詳しい内容)をオペレーターのパソコン画面に表示します。画面上のAIからの回答をオペレーターが見ながら、お客さまへの返答ができるスマートシステムを作りました。当然ながらお客さまからの質問の返答はとてもスムーズになりました。もうひとつのAI活用は、コール量の予測です。弊社には1日1万件、月間30万件もの電話がありますが、お客さまの会話データをすべてAIが分析します。要件ごとの会話の内容を分析したり、時間別のコール数や時間別1件当たりのコール時間もAIで予測できます。その予測を30分単位でできるようになったことで、それに合わせて適材適所にオペレーターを配置できるように。そうすることでお客さまの満足度も上がり、無駄なくマンパワーを活用できるようになったわけです。

「コールセンター」から新しい未来を作り出せる!

鈴木 おもしろいのが、「スマートコンタクトセンター」のシステムを他企業にも使っていただこうと営業されていることです。

新巻 SPCCがら作り上げた「スマートコンタクトセンター」は、その土台となる運用システムとセットで必要になってきます。他業界や他社もコールセンターの運用には悩んでいらっしゃるようで、SPCCのこの取り組みにはかなり興味を持っていただております。弊社の仕組みを他社でも使っていただくべく、去年から本格的に営業を始めました。SPCCはこれまでずっとスカパー!のコールセンター専業でやってきたので、他業界や他社に営業するのは新しい取り組みです。セミナーや媒体の取材を通じて、PRすることから営業を始めています。おかげさまでかなり反響もありまして、2019年だけで100社以上から弊社のコールセンター見学の申し込みがあり、その中から、もっと教えてほしい、ぜひ取り組みたい!というお話も多数いただいています。

鈴木 多くの企業にとって、コールセンター事業は基本的には収益を生む事業ではなく、コスト(時間、人、経費)ばかりが出て行く「コストセンター」な位置付けですよね! SPCCさんの優れたコールセンターの仕組みを外部にも売り出して、オペレーションも手伝ったりサポートシステムまで加えれば、売り上げが見込めますね!まさにオープンイノベーションしていけば、「コストセンター」から「プロフィットセンター」に生まれ変わりますね!

新巻  「コストセンター」と例えられるように、多くの会社にとってコールセンターの位置付けは、収益性のないバックヤードのサポート業務。つまりビジネスでなく、作業の分類。しかし、SPCCのコールセンターの仕組みに問い合わせてくる企業は、どこもお客さまとコミュニケーション力を上げて、お客さまとの信頼関係を上げて、更なる新しい情報を分析して、新規事業に結び付けたいと意識が高いので、私たちも勉強になります。

鈴木 「スマートコンタクトセンター」はシステムの投資も必要ですし、いろいろなコストがかかってきますが、お客さまからの問い合わせ内容を分析してデータ化すれば、新しい発見があり新しいサービスが生まれる…そんな新しい価値を付加して、そこから利益を見出すような事業に発展できたら面白いですね。今回のSPCCさんの取り組みが素晴らしいのは、1つは業務サポートから入っている点。2つめはシステムを直接コントロールしている点。最後に単なるシステム投資だけに終わらせず、それを新規事業に変えようとしている点です。

リモートによる「在宅コールセンター」の可能性

鈴木 新型コロナウィルスの影響で、働き方が大きく変化しました。コールセンターでは、皆さんが声を出しているわけですから、働いている方の感染が心配です。そういう意味で、「在宅コールセンター」といったものも、現実的に考える時期にきてますよね!

新巻 そうですね。これはコールセンターに限った話ではないのですが、もともとの背景に人材がなかなか採用しにくいという問題がありました。特に優秀な人はできるだけ長く勤めていただきたいのですが、家庭の事情で辞められる人も多くいらっしゃいます。これまでのこうした環境の中で、在宅ワークという選択肢はとても重要です。コロナウィルス感染が拡大する前から、実は去年からずっと検討をしてきてまして、準備が整いつつあるところです。

鈴木 新人研修などは在宅ワークが導入しやすそうですから、そのあたりから始めていく感じでしょうか。働き方が変わることで、働く方の、そして会社の可能性が大きく広がりそうですね。

コールセンター業務に秘められた「価値」

鈴木 カスタマーにとってコールセンターは一番近しい存在です。その割には、多くの会社で端っこ的な存在に置かれていて、新人の研修の部署、もしくは一線を退いた人たちがいく部署みたいになっているケースを見かけます。でも、コールセンターこそ、カスタマーの声を直に聞けるので、新規マーケティングの起点であると思うんです。

新巻 弊社の場合は「スカパー!」グループの中でも重要な位置に置いていただいていて、だからこそ多大なシステムの投資も実現できました。今後は、もっと世の中の企業の中でコールセンター全体の地位が上がるように貢献していきたいです。

鈴木 コンタクトセンターにはお客さまの声が集中しますから、そこで得られたナレッジを番組作りやサービスに反映させるなど、そんなところまで用途が広がる可能性があります。

新巻 お客さまにしっかり対応しながら、そのお客さまの情報をしっかりグループ会社に共有。さらにカスタマーの声を元に「こういう新サービスや番組をやるべき」という提案をしていきたいと思います。お客さまからいただいた声を、サービスなりコミュニケーションにどれだけ早く反映できるかも重要です。私自身もスカパー!をずっと会社の立ち上げ、いろんなサービスの立ち上げなどに携わってきましたが、SPCCに来てコールセンターで実際にカスタマーの声を受けることで、今までいかにお客さまのことを理解してなかった!と痛感しました。それをしっかり受け止めていきます。

新巻 お客様にしっかり対応しながら、クライアント、あるいは社内にその情報をどれだけしっかり伝え、さらに「こういうことをやるべき」という提案できるか。お客様からいただいた声を、サービスなりそのコミュニケーションにどれだけ早く反映できるかというところにも貢献していきたい。僕自身もスカパー!本体でずっと立ち上げからやってきて、サービスの立ち上げなどに携わってきましたが、こちらに来てコールを実際に受けることで、今までいかにお客様のこと分かってなかったかというのを本当に痛感しているところです。やはりフロントでないと分からないことがあるのです。それをできるだけしっかり受け止めたいですね。
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