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インタビュー

2022.10.14

【デジタルで切り拓く企業の未来 vol.3】自動車売買のデジタル化でユーザーの満足度を向上

多くの企業がDXに舵を切るものの、ゴールへと順調に進むケースは必ずしも多くありません。どんな課題に直面し、どのように乗り越えようとしているのか。ここでは自動車業界に属する愛知日産、グッドスピード、ネントリーズ3社に、デジタル化に取り組む前の課題、具体的な解決策、今後のビジョンを聞きました。

HPの導線見直しで新車試乗予約数アップ、社員がITを徹底活用できる支援体制も整備

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新車や中古車の販売、修理、損害保険の代理業を展開する愛知日産自動車。ITやデジタルを活用する機運が高まる中、自社をどう変革し、顧客向けサービス向上を図るのか。愛知日産自動車 営業支援部 加藤佑太氏に話を聞きました。
写真:愛知日産自動車 営業支援部 加藤佑太氏

写真:愛知日産自動車 営業支援部 加藤佑太氏

――デジタル化に取り組む前の課題とは?

加藤:当社は愛知県内に販売店を展開し、新車などを提供しています。新車が発売開始されると多くの人に試乗予約していただいているものの、当社HPからの試乗予約数が伸び悩んでいました。HPの更新頻度が低く閲覧数が伸びず、HP経由での集客が十分にできていない状況でした。

 社内に目を向けると、営業担当者のITリテラシーが低いのも課題です。当社では2021年末、営業担当者のPCをすべてiPadに切り替えました。PCだと事務所に戻って見積を作らなければなりませんが、iPadならその場で作成し、お客さまに見せることができます。事務所に戻って見積を作成するタイムロスを減らせます。また、営業担当者がiPadに格納する動画を使い、例えば安全装備の説明など、実際の車では説明しにくい点を来店者に分かりやすく伝えられるのも利点です。ただし中には、iPad の基本操作すらままならない営業担当者もおり、導入効果を最大化できずにいます。iPadを含むITシステムの利用をどう促進させるかも長年の課題です。

――課題をデジタル化でどう解消した?

加藤:HPを改修し、新車の試乗予約への導線の見直しと、新車試乗予約の特設ページを作成しました。どのようなワードを掲載すれば、ユーザーの検索結果に特設ページを表示させられるか、HPのTOPページのどこにコンテンツを配置すれば予約数が増えるのかを試行錯誤しながら調整しました。その結果、HPのアクセス数は伸び、HPからの試乗予約数はかなり増えました。試乗予約数は人気車種であるかどうかに依存する側面があるものの、HP改修を機にHP経由の試乗予約数が増えたと認識しています。イベント情報の更新頻度を高めたのはもちろん、就活生向けに採用コンテンツを分かりやすい場所に配置し直すなど、掲載コンテンツの充実性を高め、当社HPがユーザーにとって付加価値のあるものにできるよう日々改修に取り組んでいます。

 営業担当者のITリテラシー向上に関しては、すべての販売店に「iPadリーダー」を1人配置しました。「iPadリーダー」にはデジタル機器になじみのある若年層を起用し、iPadの基本操作に関する研修を受けてもらい、簡単な操作の質問であればその場で答えられるように教育しました。販売店内で、iPadの操作や分からないことがあれば自店舗のリーダーにすぐ相談できる体制を設けました。

 具体的な効果はまだ把握しておりませんが、iPadに関する本部への問い合わせは減り、一定の効果はあったと考えます。当社の場合、比較的年輩の営業担当者のITリテラシーが低い傾向があります。こうしたスタッフのITリテラシーを向上させるには、まずは操作方法を教えるよりITツールを使うことでどんなメリットがあるのか、使わないと何が困るのかを腹落ちしてもらうのが重要と考えます。遠回りかもしれませんが、操作方法を一方的に教育するより、利点や効果を理解してもらうこと、その上で分からないことをそのままにさせないよう、店舗にiPadリーダーを配置するといった解決しやすい環境を作ることが、社員のITリテラシー底上げにつながるのではと思います。

――今後の予定、目指すべき姿は?

加藤:2つの取り組みを進行中です。1つは、販売店の活動記録の集約です。当社は2020年半ば、Salesforceベースで作られた営業支援ツール「セールスナビ」を導入しました。日々の活動状況を把握し、販売店に応じたキャンペーン施策などを打ち出せるようにする、販売店で活動記録を見てお客さま対応前に作戦を立てられるようにするのが狙いです。しかし、活動状況の記録方法は販売店ごとにばらばらで一元管理しにくい状況でした。そこで現在、活動記録を入力するフォーマットを整備し、何を入力するのかを全販売店で統一できるよう取り組んでいます。販売店の課題や状況を反映した施策を検討・展開する体制構築を目指します。

 もう1つは、告知物のデジタル化です。販売店では来店者向けにイベント情報を告知するチラシやポスターがショールームの壁にたくさん貼られており、全体的にゴチャついていて景観的に美しくない状況になっています。こうした現状を解消すべく、販売店へのデジタルサイネージ導入を検討しています。情報をデジタルサイネージに集約することで、壁からポスターや掲示物はなくなり、すっきりとした店舗になります。来店者もデジタルサイネージなら目を向けてくれるのではないかと期待します。先進的な技術を積極的に活用することで、来店者が「さすが“技術の日産”」と思ってくれたらうれしいですね。

ITを積極的に活用する企業風土がDXを加速、開発スピードを高める人材確保と組織化に主眼置く

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愛知県名古屋市に拠点を構え、自動車の販売や買い取り、整備、板金などの事業を展開するグッドスピード。自動車を軸にさまざまな事業を手掛ける同社はDXをどう捉え、デジタル化に取り組むのか。グッドスピード 取締役 管理本部長の松井靖幸氏に話を聞きました。
写真:グッドスピード 取締役 管理本部長 松井靖幸氏

写真:グッドスピード 取締役 管理本部長 松井靖幸氏

――デジタル化に取り組む前の課題とは?

松井:当社は2003年に設立した比較的若い会社です。従業員数は連結で700人(2022年6月末時点)余りですが、システム開発に従事する社内担当者は数人しかいません。AIやRPAといった自動化手法を積極的に活用したいと思うものの、開発プロジェクト自体がボトルネックになることが懸念されます。開発案件をコントロールする人材リソースをどう確保し、事業規模拡大に応じて開発スピードを速められるかが一番の課題と認識しています。

 もっとも、ITやデジタルは創業当初より積極的に活用しようという姿勢を一貫しています。Webやクラウドなどを使って業務を効率化できるなら活用すべきという考えが社内には根付いています。そのため、デジタル化できず非効率な業務が残っているという認識はあまりありません。ただし、自動車販売という特性上、公的機関に提出する一部書類については電子化できずに紙を使い続けています。それ以外の書類についてはペーパーレス化を積極的に進めています。

――課題をデジタル化でどう解消した?

松井:可能な範囲でITやデジタルを積極的に活用しています。自動車の契約時には紙の書類を使うのが一般的ですが、当社は顧客からの注文時の契約書を電子化するなど、同業他社よりいち早くペーパーレス化に取り組んでいます。業務支援ツールも個別開発することなく市販のものを利用します。最近なら当然クラウドを使うことになりますが、必要な機能の有無を基準にツールを選定するため、クラウドかオンプレミスかといったこだわりもありません。

 当社の場合、自動車販売のほか、整備や板金、レンタカーなど、さまざまな事業を展開していますが、事業規模は必ずしも大きくないと認識しています。ゆえに大型のシステム開発は必要ありません。大型のサーバーやデータベースを複数調達する必要もありません。こうした状況がデジタルを受け入れやすくし、柔軟なシステム構築、運用を可能にしているのではないかと分析します。

 一方、顧客向けのサービスに目を向けると、自動車販売をオンライン商談できる体制を構築しました。今後はオンライン商談が徐々に増えるという考えのもと、2020年2月ころに導入しました。しかし直後に新型コロナウイルス感染症がまん延し、くしくもオンライン商談システムが役立つ結果となったのです。ただし、自動車の購入を検討する顧客の多くが、今も自動車を実際に見た上で購入するかを判断しています。オンライン商談を利用する人はごくわずかにとどまりますが、商談のすそ野を広げるという意味では重要なシステムと位置付けます。

――今後の予定、目指すべき姿は?

松井:当社は現在、1年間に3~4店舗の割合で新規出店を加速させています。今後は事業規模もさらに拡大していくでしょう。こうして拡大する前に、業務効率を改善するITシステムなどを積極的に刷新、導入していければと考えます。事業規模拡大後にシステム導入を検討すれば、要件が複雑になるなど、迅速に開発できなくなる恐れがあります。こうした遅延を防ぐためにも、今のうちから効率化を前提にした業務改革や見直しを進められればと考えます。改革を主導できる人材を獲得するとともに、推進チームを組織化するなどして現場の期待に応えられる体制を早期構築することを目指します。

 これまでは自動車販売を支援するシステム開発を優先してきました。しかし今後は、顧客を囲い込む施策の重要性が増すと考えます。アフターサービスの強化を含め、現在はCRMの強化を進めている段階です。これまで後回しにしてきた顧客管理を今後は徹底していく予定です。自動車販売や買い取り、整備、板金などの事業別に顧客や取引履歴が分断されている状況を解消し、一元化した顧客情報をもとに会社として顧客向けの施策を打ち出していけるようにします。

中古トラック売買をオンライン化、デジタル化後進業界でも先駆けてデジタル推進体制を構築へ

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中古のトラックやダンプ、ミキサー車、重機などをオンラインで売買できるプラットフォーム「トラック王国」を運営するNentrys(ネントリーズ)。デジタル化しにくいと言われた中古トラック市場にどう切り込み、流通の活性化を促すのか。Nentrys ICTソリューション部の野村林太郎氏に話を聞きました。
写真:Nentrys ICTソリューション部 野村林太郎氏

写真:Nentrys ICTソリューション部 野村林太郎氏

――デジタル化に取り組む前の課題とは?

野村:中古トラック市場に限ると、例えばトラックの型番は同じでも、荷台のサイズは微妙に異なるということが珍しくありません。サイズがわずか数センチメートル違うだけで、購入条件から外れてしまうこともあります。そのため、実際に展示場に訪問して自分の目で確認してから購入するというのが一般的でした。走行距離は情報として可視化しやすいものの、腐食具合や損傷具合などを情報として扱いにくい点も中古トラック市場にオンラインが馴染まない理由の1つでした。

 トラックやダンプなどは建設や土木、物流などの業界で使われがちですが、中古車の購入を検討する人の場合、従業員を雇わず一人で事業を担う“一人親方”が多くいます。近年は高齢化が進んでいることも、オンラインが馴染みにくい理由の1つになっています。

――課題をデジタル化でどう解消した?

野村:オンライン売買のプラットフォーム「トラック王国」を2008年に立ち上げました。当時は、中古トラックを扱う専門サイトはなかったのではと認識しています。もっとも、当社も中古トラックなどをオンラインで販売するノウハウを持ち合わせていたわけではありません。顧客の声に徹底して耳を傾けるとともに、オンラインサイトを運営する事業者などからノウハウをヒアリングし、徐々にデジタル化を軌道に乗せていきました。写真を豊富に掲載したり、細かな情報まで網羅的に取り扱ったりすることで、これまで「ネットで購入」といった商流を形成できずにいた市場を変革させられたのではないかと自負しています。

 一方、社内に目を向けると業務の進め方が固定化し、非効率な業務が多々潜んでいます。こうした業務内容も少しずつ見直しています。必ずしもデジタル化ではありませんが、私のほか、中途入社した者が外部の風を社内に吹き込むことで、組織や業務を見直す契機になればと考えます。こうした変化が自社のデジタル化を後押しすると期待します。

――今後の予定、目指すべき姿は?

野村:当社は現在、営業支援ツールとしてセールフォースを利用しています。一方、顧客管理用のデータベースを別に保有しています。こうした散在する顧客情報を統合することに取り組む予定です。収益アップのための施策立案には会員情報の統合は欠かせないと考えます。顧客一人ひとりにユニーク情報を付与し、顧客に応じた施策を展開できるようにする体制づくりも視野に入れます。

 セールスフォースを使って出力するレポートの整理にも取り組みます。各部署がレポートを出力するものの、指標とする数字が部署ごとに異なっているのです。そこで1年かけて、指標となる数字の統一、レポートの定型化を進めました。現在は運用フェーズで、全社共通の数字に基づく施策を立案し、展開できるようにすることを目指します。

 「トラック王国」ではAIを使った画像処理の導入を検討します。サイトに中古トラックなどの写真を掲載する際、ナンバープレート や背景をぼかすといった画像処理を実施しなければなりません。この作業をAIで自動化することを模索します。新たな技術を積極的に導入し、運用のさらなる効率化を図れればと考えます。
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