ラキールが公式YouTubeチャンネルで実施する経営者との対談企画「My Voyage(マイボヤージュ)」。企業の経営者をゲストに招き、ビジネスという航海をどう舵取りしているのか、その経営手法を聞く対談企画です。今回のゲストは、デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長の鈴木康弘氏。「どうなる?日本のDX。IT現場のリアルと未来」というテーマで、ラキール 代表取締役社長の久保努氏とDXやIT業界の現状について対談しました。本稿では、ラキールが取り組むDX支援の形、次代に向けた目標などを中心に紹介します。
久保:例えば、情報システム部門に話を聞くと、長く使い続けて複雑化したシステムが課題になっているケースが少なくありません。メンテナンスにコストと時間がかかるほか、導入に携わった人材が退職するなどし、システムに精通する人が社内にいなくなり、ベンダー任せになってしまうという問題が目立ちます。
その結果、システムがブラックボックス化してしまい、新規事業を支えるITシステムを構築できない、業務改革を進められない、データを収集・分析する環境を用意できないなどと、新たな取り組みを進められずにいる企業が多いと感じます。新しいことに取り組む余力がない状況に陥っているわけですね。
久保:ベンダー企業がITを使ってどんな価値を提供できるか。多くのベンダー企業が模索し続けているテーマだと思います。当社の場合、収益向上や事業創出などを目指すユーザー企業に対し、「スピード」と「柔軟性」が必要であると訴求し続けています。例えばスクラッチ開発ではスピードが損なわれます。パッケージソフト導入ではカスタマイズが前提となってしまい、柔軟性が損なわれています。
そこで当社は、「スピード」と「柔軟性」を両立するシステムとして、「サステナブルソフトウェア」という価値を提供しています。
これまでのシステムは、膨大な時間とコストを投じて開発したとしても、完成と同時に陳腐化が始まります。さらに使い続けることで複雑化し、メンテナンスしきれない状況になるとまた新システムをゼロから開発、という負のサイクルが繰り返されるのが一般的でした。ユーザー企業は効率の悪いIT投資を続けてきたわけです。
この状況に対し当社は、「マイクロサービス」と呼ぶ技術を使って技術的資産として蓄積して、アプリケーションを開発します。この技術により、常にシステムを最新に保ち、リプレイスが不要であるため、「サステナブルソフトウェア」と呼ばれています。これまでシステムに投資してきたコストを無駄にせず、IT投資効率の最大化を実現します。
久保:「LaKeel DX」は必要な部品の組み合わせによって目標となるシステムを開発できるのが最大の特長です。マイクロサービス技術を使い、システムの機能を「部品化」し、蓄積された部品はクラウド上で最新の状態に管理し、いつでも「再利用」できるようにしています。部品の追加や入れ替えが容易で、システムの柔軟性を担保することができます。部品が多く集まれば集まるほど、新規で部品を開発する必要はなくなり、一からシステムを開発するような専門知識がなくてもシステムを構築することができます。一般的にはノーコード・ローコード開発と呼ばれる手法です。このような変化により、今後は、部品と部品を組み合わす技術がより求められるようになると考えます。組み合わせる技術は現在、ノウハウが必要ですが、いずれ成熟すれば業務部門の担当者でも容易にシステムを開発できるようになると期待しています。
鈴木:「LaKeel DX」の機能を部品化する発想、非常にユニークで、これからのシステム像となり得るのではと感じます。気になったのが、部品同士を組み合わせた際、システムとしてパフォーマンスに影響は出ないのでしょうか。
久保:鈴木社長は元エンジニアだけあって、非常にするどい指摘ですね。ご指摘の通り、部品の組み合わせによってはパフォーマンスに影響が生じます。そこで「LaKeel DX」では、独自の仕組みを備えることでパフォーマンス低下を解消できるようにしています。部品同士はAPIで連携しますが、一般的にAPIは1つのリクエストに対して1つのレスポンスを返します。しかし、複数のAPIが必要な場合、複数のリクエストが発生するため、高い負荷がかかります。
そこで「LaKeel DX」では、複数のリクエストを1つのAPIで受け取り、その中で複数のサービスをロジックフローとして集約し、処理できるようにしています。このフロー定義済のAPIがリクエストされれば、そのAPIに紐づく複数のレスポンスを一度で受け取ることができるわけです。当社はこの仕組みを「LaKeel Synergy Logic」と呼び、特許も取得しています。そのほか、リクエスト集中による負荷を解消する仕組みなども実装しています。
鈴木:久保社長はラキールとして、どんなビジョンや目標を掲げていらっしゃいますか。今後取り組みたいことなどあれば教えてください。
久保:「LaKeel DX」では多くの機能が部品として集約されています。こうしたソフトウェアの部品を流通させられればと考えています。さらにはソフトウェア部品産業を形成できればとも考えます。多くの企業が「LaKeel DX」を使って機能を部品化すればするほど、企業間で部品をやり取りする機会が増えます。そんな経済圏を構築できればうれしいですね。当社ではこの経済圏を「LaKeel DXエコノミー」と呼んでいます。
鈴木:「LaKeel DXエコノミー」、非常に面白いですね。構想の実現に向け、どんなスケジュールを考えていますか。
久保:具体的なスケジュールはまだイメージしていませんが、「LaKeel DX」のユーザー企業数は現在約300社で、1000社になれば部品の流通が加速しだすのではと考えます。もっとも、ユーザー企業同士のやり取りをただ待つのではなく、当社としては部品の組み合わせノウハウなどをユーザー企業にきちんと提供することも必要です。こうした教育を積極的に実施し、「LaKeel DX」を徹底的に使い倒す企業を1社でも増やしたい。そのための支援にも注力したいと考えます。
鈴木:「スピード」と「柔軟性」の両立は、多くの企業が願っているに違いありません。それを叶える「サステナブルソフトウェア」という考え方と、御社の「LaKeel DX」。これからのDX時代に欠かせない要素として、ますます注目されていくのではないでしょうか。そう感じました。本日は大変勉強になりました。どうもありがとうございました。
久保:こちらこそ本日はどうもありがとうございました。