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インタビュー

2021.04.01

【特別対談:青野慶久×鈴木康弘】“変わる”という強い思いなしにDX成功はあり得ない

従業員一人ひとりが多様な働き方を実践するサイボウズ。日本の働き方改革をリードする同社では、次代のDX人材をどう定義し、育成しようと考えているのか。デジタル化を推進する上での自社の“失敗談”も含め、代表取締役社長の青野慶久氏に話を聞きました。(聞き手:DXマガジン総編集長 鈴木康弘)

多様な働き方がデジタル化を加速させる契機に

鈴木:「DX」という言葉が世間を賑わせています。青野さんは「DX」をどのように捉えていますか?

青野:個人的には好きな言葉です。デジタルにシフトしようという考えは気に入っています。ただし、これまでも同様のトレンドは何度かありましたが、DXは以前のようにシステム化云々の話ではない。組織の風土ごとデジタル化していく、それがDXです。DX推進に必要な取り組みを社外に丸投げ、なんて話を聞きますが、それはそもそもDXではありません。現場の取り組み一つひとつを見直し、デジタルにシフトさせる。この取り組みは自分たちが主導しなければ成し得ません。

鈴木:私もコンサルティングという仕事柄、DXは単なるシステム導入ではなく「業務改革」、さらには「人の意識改革」が大事だとよく話しています。青野さんの言う通り、DXは企業風土を変えることが不可欠です。その意味で言うとサイボウズは働き方改革を体現し、まさに従業員の意識改革を進めていますよね。なぜこうした改革にいち早く取り組み出したのでしょうか?

青野:サイボウズは今でこそグローバルを含めると従業員数が1000人を超えましたが、ベンチャーだった当初は従業員の離職率が高かった。そこで従業員が辞めない組織づくりを目指し、従業員の“わがまま”を聞くようになったのがそもそものきっかけです。「午前中は働きたくない」と言われたら「いいよ」、「出勤したくない」と言われたら「いいよ」って。働き方が徐々に多様化していきました。ただし、各自がバラバラに働くようになると自ずとチームワークの必要性を感じ、情報共有が進んでいったんですね。もちろんそれまでもグループウエアを使って情報共有していましたが、働き方が多様化することで業務のデジタル化が一気に加速しました。見えない仕事がなくなり、業務効率が一段レベルアップした感じですね。

 新型コロナウイルス感染症の影響で、働き方や業務の進め方が大きく変わった会社は多いと思います。しかし当社の場合、すでにオンラインで情報共有して業務を行っていたので、コロナ禍でもあまり慌てることなく全社在宅勤務に切り替えられました。 いろいろな人がいろいろな働き方をしても、デジタル化することで仕事を継続して進められる。これって「DX」かもしれませんね。

鈴木:私が代表を務めるデジタルシフトウェーブでは、コロナを機に完全に在宅勤務に切り替えました。さらにその後、コアタイムをなくしたスーパーフレックス制度を導入しました。その結果、私が「働きすぎないで」って従業員にお願いするくらい、みんな働くようになりました。働き方の変化を感じますね。

 こうした働き方はデジタル化によって支えられていると思います。ただその一方で気付いたのがアナログの大切さ。サイボウズではアナログの取り組みをどう捉えていますか?

青野:雑談が減ったのが気になりますね。以前なら会議の前後に他愛のない情報交換をするという機会があったのですが、自分の知識の幅や人脈を広げる絶好の機会がなくなってしまいました。そこで現在、雑談を推奨しています。グループウエアに仕事と関係ない話題を書き込んでもいいことにしました。打ち合わせなどの目的外でウェブ会議システムを使うのも認めました。アナログのときにあった雑談をデジタルでどう再現するか。当社が目下取り組んでいる課題ですね。

業務を設計し、ITを使いこなすスキルが重要に

鈴木:私はセミナーやイベントで講演を頼まれることが多く、2020年は1年間で60回登壇しました。最初のころは「DXとは?」「DXのメリット」といった基本的な内容の講演依頼が多かったが、最近は「DX成功のためには組織をどう変えればいいか」などの具体的なテーマに変わりつつあります。サイボウズも顧客からDXをうまく進められないなど、いろいろな相談を受けていると思います。DXをうまく進められない会社の課題はどこにあるとお考えですか?

青野:例えばグループウエアというツールだけを導入しても、変化することは容易ではないと思います。それを使う組織が変わらなければDXは進みません。こうした課題を解消しなければという思いで、当社は2017年から「サイボウズチームワーク総研」というブランドを立ち上げ、企業の組織改革の支援に取り組んでいます。そこで強く感じるのは、“変わりたくないという意識”が根強いことです。

 変化を恐れない企業風土さえ醸成されれば少しずつでも変わっていくはずですが、今あるものを残そうとする考えがありますね。変化に対する摩擦係数が大きく、抵抗感を持たれてしまうと非常に厳しい。こうした状況を打開するには、やはり経営者のマインドを変えることが一番大切だと思います。

鈴木:確かに経営者の姿勢や発言は大事ですね。私もコンサルティングを通じて企業のDXを支援するとき、まずは経営者の意識改革を提言することが多い。例えば、極度にアナログな社長なら「まずはタブレットを常に持ってくれませんか?」って言うことから始めます。まずは形から。経営者がタブレットを携行することで、周囲の役員が危機感を持つ。それだけでも変化が起きますね。

青野:それは面白い(笑)。周囲も「自分もあれくらいやらなきゃ」って思うようになりますね。やはりマインドチェンジは経営者がすることに大きな意味があるんでしょうね。

 一方、従業員のモチベーションも大切です。日々現場にいる従業員が「業務をよくするぞ」という気持ちを持つのも大切です。「なんで変えないといけないの?」という考えから脱却しないとですね。しかし 以前に比べれば、こうした現場改革も進めやすいはず。システム導入のハードルが以前より下がっているからです。これまではサーバーを購入し、メモリやストレージの容量を見積もり、バックアップ環境を構築し…などとシステム導入には手間、時間、コストがかかった。しかし今なら、必要な機能を備えるクラウドを申し込むだけです。実際、コロナ禍で多くの企業がクラウド型のWeb会議システムを申し込んだように、ITを駆使して業務を容易に見直せるようになっているんです。従業員の意識次第で現場のデジタル化は進められると思います。

鈴木:「クラウド」というテクノロジのインパクトは大きいですね。私もサイボウズのグループウエアを使ったことがあるが、「ワークフローがこんなに簡単に作れるんだ」と衝撃を受けたのを今も覚えています。私がSEとして働いていたころは、同じ仕組みを一生懸命作り込んでいた。「×(掛ける)クラウド」だけで劇的に便利になりましたよね。

青野:提供形態がパッケージだったころの顧客は、ある程度IT化を進めている企業が中心でした。インストールしたりバージョンアップしたりバックアップしたりといったことができる企業ですね。しかしクラウド化に舵を切った途端、顧客層が変わった。申し込みさえすればいい、ということで、ITにそこまで詳しくない中小企業にも、導入していただけるようになりました。以前のようにITの知識は大して重要ではないのです。こうしたツールを活用するのに求められるのは業務の知識。必要なスキルや知識も変わってきていると感じますね。

鈴木:IT導入のハードルが下がったことで、ITを駆使して業務をどう設計できるかといったスキル、ノウハウが求められるようになったんでしょうね。

青野:「DX人材」ってまさにこうしたスキルなどを備えた人なのかなと感じます。

鈴木:今後は業務を支援するさまざまなクラウドサービスを複数利用することになる。これらをどう連携するか、どう組み合わせるかといった視点も必要だと思います。もちろん1社のクラウドサービスに集約すれば合理的だが、それでは今後の進化は見込めません。便利な機能や革新的なテクノロジを使ったさまざまなクラウドサービスの中から、どれを選定するのか、あるいは乗り換えるのかといった使いこなし術も求められるでしょうね。

青野:そうですね。新しいクラウドサービスが続々と登場しています。基幹業務向けのクラウドサービスを次々乗り換える必要はありませんが、新規事業で派生した新たな業務などは、新たなクラウドサービスも含め、どれが本当にふさわしいのかを見抜く能力が求められるでしょう。これもDX人材に必要な能力と言えますね。

鈴木:ついにデジタル化が進むんだなって最近思います。青野さんも私と同じく、以前からデジタル化した世界の到来を思い描いていたのではないでしょうか。やっと来たなって感じませんか?

青野:思います! 世界がいよいよデジタル化に向かうんだと実感していますね。
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