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インタビュー

ITの徹底活用で少人数でも効果を上げる営業網確立、コロナ禍のニーズ満たす健康経営施策へと昇華することで顧客獲得を加速

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清涼飲料販売大手のキリンビバレッジが新規事業に乗り出した。といってもスタッフや予算が限られた中での門出。いかに事業を拡大し、軌道に乗せたのか。そこには身の丈に合う“使いこなせるIT”を徹底活用する地道な取り組みが見られた。新規事業を拡大させる上での課題と解決法について、キリンビバレッジ 企画部 新規事業開発室 主任 善田英樹氏に聞きしました。

健康経営の新規事業が直面した課題とは?

 キリンビバレッジが乗り出した新規事業はBtoB向けの事業。具体的には、消費者の健康志向の高まりと企業の健康経営の取り組みの流れを受け、法人向けに健康経営の取り組みを支援するサービス「KIRIN naturals」を2017年にスタートしました。初期メンバーは数名。そのうちの1人が、自動販売機の設置などの法人営業に携わった後にマーケティング部に配属された善田英樹氏です。善田氏は当時を、「さまざまな事業・ビジネスモデルを検討したが、漠然と考えていたのは『既存事業とのシナジー』と『法人営業で経験したBtoBの可能性』。限られたスタッフでも効果的に事業を拡大する最善策を検討した」(善田氏)と振り返ります。
写真:キリンビバレッジ 企画部 新規事業開発室 主任 ...

写真:キリンビバレッジ 企画部 新規事業開発室 主任 善田英樹氏

 そんな中、考えたのが野菜と果実を補えるスムージーを企業に届けるサービス。従業員の健康推進施策を打ち出したい企業向けにスムージーを提供するサービスを展開し始めました。しかし、いざ法人営業部の協力のもと大手企業を中心に商談に臨むと企業の反応は必ずしも良くありませんでした。「自動販売機を主に営業する法人営業部は、総務部が窓口となるケースが少なくない。健康経営担当となる人事部ではない窓口に案内するケースが多かった。加えて、スムージーのデリバリーサービスは企業には福利厚生として受け取られるため、人事部と総務部のどちらが管轄なのか曖昧になりがちだった」(善田氏)と言います。当時のビジネスモデルでは全国展開できないことも、全国に拠点を構える大企業向けのサービスとしては不十分でした。多くの顧客が大企業であるグループの営業力を活かせない状況でした。
 もっとも、中小企業の反応は良かったといいます。「中小企業の場合、総務と人事を兼務するケースが多く、オフィス内の福利厚生の充実に積極的な姿勢を示す企業が多かった。健康経営に取り組む大企業向けに考えたサービスだったが、中小企業に受け入れられたのは想定外だった」(善田氏)と振り返ります。  その後は顧客のフィードバックを参考にサービスメニューを拡充。“健康経営色”をより鮮明に打ち出します。「スムージーを届けるだけではなく、従業員向け健康セミナーを新たなメニューとして追加した。商談時の声を集めた結果、『モノ』以外の健康支援策を望んでいることが分かった」(善田氏)と、セミナーをメニューに追加した狙いを述べます。福利厚生サービスとして受け取られていたサービスを、健康経営支援サービスと明確に分かる形へ進化させたことで、商談先が福利厚生を扱う総務部などから、健康推進部や経営企画部などに変わったといいます。「全社の事業戦略として従業員の健康を推進する企業は多い。こうした課題解決を主導する部署と商談できるようになったことで、サービスへの関心を示してくれ、導入の敷居が下がった」(善田氏)と言います。

使いこなせるIT導入でインサイドセールスを成功に導く

 サービスメニューを改善・強化するなどして徐々に顧客を獲得しだした「KIRIN naturals」。とはいえ、ビジネスを拡大させるためには新規顧客獲得が不可欠です。少ないスタッフがDMを郵送したり展示会でサービスを案内したりして見込み顧客の獲得に奔走するものの、営業力不足を解消するには至りません。そこで検討したのがITツールの導入です。「Webサイトから問い合わせしてくる受注確度の高いリードに営業するインサイドセールスに舵を切った。しかし、ノウハウはほぼ皆無。どんなITツールを調べればよいのかも分からないまま、情報収集に努めた」(善田氏)と経緯を振り返ります。  もっとも、スタッフは必ずしもITに精通していませんでした。しかし、だからこそ使いこなせるITツールにこだわったと善田氏は強調します。「過去に取引のあったITベンダーやシステム会社に頼めば、相応のITツールを用意するだろう。しかし、十分すぎる機能を備えたITツールはいらない。身の丈に合わないITツールを導入しても使いこなせない。大切なのは徹底的に使えるかどうか。自分のITリテラシーを勘案し、自分でもインサイドセールス環境を構築できるITツールを探すべきと判断した」(善田氏)と、導入のポイントを指摘します。新規顧客を獲得するためのWebページや問い合わせフォームを自身で作成することを想定し、評判や周囲の導入状況よりも操作性や視認性などを強く意識したと言います。  さらに同氏は、ITベンダーの支援体制もポイントの1つだと考えました。「ITベンダーの中には、システムを導入して終わりと考えるケースが少なくない。導入後のフォローが不十分で、結果として社内に浸透しないITツールも珍しくない。当社の意図をくみ取り、的確にアドバイスしてくれるサポート体制も欠かせない導入ポイントだった」(善田氏)と言います。これらを加味して検討した結果、導入したのがベーシックのオールインワン型BtoBマーケティングツール「ferret One」でした。ツール導入後の運用も含めた一貫したサポート体制を設けている点が導入の決め手となりました。  ferret OneはWebサイトの編集やフォーム設置などのCMS機能に加え、顧客へのメール配信や資料のダウンロード、顧客管理といった機能を備えるマーケティングツール。善田氏は導入当初、これらすべての機能を活用したわけではないが、「主にWebページの作成やメルマガ配信機能を使い、インサイドセールス向けの機能は徹底活用した」(善田氏)と言います。一方、サービスの導入事例ページの作成や顧客企業に納品するセミナーのアーカイブページ制作などは「ベーシックに依頼するなどして、外部のリソースを活用している。導入後もベーシックと頻繁にやり取りし、使い方が分からないといった初歩的なことまで何度も質問した。これによりツールの利活用度が高まり、いろいろなアイデアをツールで具現化できるようになった」(善田氏)といいます。  肝心の導入効果はどうか。問い合わせを受け付けられるようWebサイトのデザインや仕掛けを見直した結果、「2019年に獲得した新規顧客数は200件にのぼる。企業への訪問営業なしで獲得した顧客がその46%を占める」(善田氏)と十分な効果があったと言います。さらに、商談で顧客先を訪問した回数は「一度で済んだ商談が9割を占める」(善田氏)と強調します。グループの営業網を活用する目論見が外れたものの、ITリテラシーが不十分でも使いこなせるツールやサポート体制を活用したことで新たな顧客接点獲得に成功しました。

効果検証を強みに健康経営施策の定着図る

 順調に顧客を獲得して事業を成長してきた矢先、今度は新型コロナウイルス感染症の脅威が新たな壁として立ちふさがります。オフィスに出社せずに在宅勤務が増えれば、スムージーをオフィスに届けるサービスは成り立ちません。オフィスに出張して開催していたセミナーも在宅が増えれば成り立ちません。そこで踏み切ったのが従業員向け健康セミナーのオンライン化(ライブ配信化)。もちろん単なるオンライン化ではありません。「顧客の要望やニーズに応じてセミナーの構成を変えられるようにした。従来の対面型のセミナーでは、参加者に途中で飽きられてしまう。開始直後の5分で参加者をいかに引き込むか、パッケージ化したセミナー内容ではなく企業ごとの要望に応えセミカスタマイズし、参加者の満足度を高められるよう試行錯誤を繰り返した。さらに、セミナーを開催する度にどんな特徴の従業員が参加したのかなど、施策前後のフォローを含めて健康経営施策のマーケティング支援を実施した。これにより、一般的な健康経営施策との差異化を図った」(善田氏)と言います。新たにコンサルティングサービスをメニュー化し、企業の課題や目的に応じたセミナーを開催できるようにしました。  中でもユニークな取り組みが、従業員の健康意識を推察する30問のアンケート。アンケートを通じて、従業員のニーズや健康への価値観をデータから推察できるようにしています。「例えば、ダイエットへの意識が高い人とそうでない人では興味のある健康テーマは異なる。従業員のタイプを独自に分析してセグメントし、タイプに応じて最も効果的なセミナーを開催できるようにした」(善田氏)とメリットを強調します。
写真:今後は健康経営施策としてのメニュー拡充、グループ...

写真:今後は健康経営施策としてのメニュー拡充、グループ全体のシナジー創出を視野に入れる

 今後はグループの法人営業部との連携も視野に入れます。「コロナの影響で健康向けセミナーの重要性は増している。事業を開始したときと状況は違う。グループの既存顧客向けとは言えなかった『KIRIN naturals』のメニューは、既存顧客にも通じるに違いない。法人営業部とどう連携して既存顧客にサービスを提供できるかを模索したい」(善田氏)といいます。さらに同氏は、インサイドセールスのノウハウをグループで共有したいと意気込みます。「新規事業の経験が、グループのマーケティングを強化する一助になればうれしい。失敗を積み重ねてきた分、成功するための勘所を把握している。こうした知見を既存事業にフィードバックすることで、グループ全体の営業力強化に役立てたい」(善田氏)と、新たな構想も見据えます。

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