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第5回 編集力に必要なのは、スペシャリストでも、ゼネラリストでもありません!

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鈴木社長が提唱する「専門特化のT型人材から領域を超えるTT型人材へ」は編集チーム力においても最重要!(大久保)

 これからの編集力は、アナログメディアの人とデジタル領域の人がチームを組んでチーム力を高めることが重要で、お互い自分たちのやっていることを一旦自己否定し、お互いの領域を理解することが、編集チーム力には必要だと、前回お話をしました。このデジタルシフトマガジンの主催者である鈴木社長の、「自分の専門領域の仕事さえやっていればいい、という時代は終わった」という提唱は、この編集力でもズバリ当てはまります。

 従来、例えば紙の雑誌であれば、編集者が企画・進行を担当し、ビジュアルはカメラマンが撮り、原稿はライターが書き、デザイナーが誌面のレイアウトを決める…といった形で専門領域ごとにスペシャリストが自分の仕事だけをやる編集チームで仕事をしてきました。それは一般的にあらゆる企業、あらゆる組織でも部署内の仕事でも当てはまります。これまでの労働集約型の組織社会においては、1人1人が自分の領域、それぞれの事業部内の担当の仕事を極め、その専門知識や作業に特化した「T型」人間・組織が求められてきました。

 しかし、コロナ感染でリモートワーク社会に変わり、デジタルシフトの進行が一気に加速して、労働分散型の世の中にどんどん変わっていく中で、今までのビジネス分野だけでは立ち行かなくなり、時代に合わせて新しい分野に参入するケースが増えていて、これまで以上に複数の専門領域を持つ「TT型」が活躍するようになってきます。最近話題のアイリスオーヤマという企業もそんなTT型の組織で、時代の変化に強い企業と認知されています。変化対応型の編集チーム力が機能しているのです。企業も組織も個人もSNSでメディア的に発信できる時代にそうしたTT型の領域を超えてフットワーク軽く活躍できる人材が不可欠です。特にプランの初期の段階ではコスト(人、お金、時間)がかけられなく、時代に合わせたスピード感を持って対応しなくてはいけない立ち上げ期では必要です。それはメディア領域も然りです。YouTuberも駆け出しのスタート時期は企画、演出、演者、撮影、編集すべて1人で全てをこなす TTTT…のT多重型ができないことには始まりません。ある程度、企画が軌道にのり、予算が確保できてからも、いわゆる専門分野特化型人間ではなく、デジタル活用など全体の流れや他の分野も考えながら自分のスペシャリティを発揮できる人間が求められるようになっています。(大久保)

スペシャリストでありジェネラリストである 「スペジェネリスト」になろう(大久保)

 チーム力というのは、専門や部署の領域を超えられる人間を集めないと生まれてこないのです。「写真しか撮れません」「雑誌デザインしかできません」「原稿しか書けません」ではなく、どんな領域にでも突っ込んでいける人材が、現在の編集力やチーム力には必要です。たとえどんなにいい写真を撮れても、デジタル修正したりデジタル配信用のデータに転換したり動画まで提供できないカメラマンは活躍の場が少なくなるというわけです。またライター自らが演者となり、体験しながら原稿を書いて自らSNS配信していく…編集者は雑誌を編集するだけでなく、自らSNSを使ってプロモーションしていく…などなどです。人気オンラインサロンを運営している有名敏腕編集者箕輪さんが典型例です。複数の領域を持つTT型になるため第一歩は、自分がこれまで守ってきた専門領域の枠をある意味否定することから始まります。枠を取り払い、TとTを組み合わせてTTになる…そんな風に拡張性のある編集チーム力が必要なのです。単なるスペシャリストでもダメで、単なるジェネラリストでもダメで、スペシャリストとジェネラリストを掛け合わせた「スペジェネリスト」であり、でもスペシャリストの軸を持っている、そういう人材…これが鈴木社長の提唱する TT型人材で、デジタル社会において、まさに編集力、チーム力を上げるには必要不可欠なのです!

 「自分はこの分野を極めているから大丈夫」という慢心は禁物です。せっかくデジタルシフトでいろんな分野への参入障壁が低くなっているのですから、隣の領域にチャレンジしてみましょう。ライターが写真を撮ってみたり、カメラマンが動画を撮って編集までしてみたり、紙メディアの編集者がSEOについて学んでみたり、そうした挑戦し続けるマインドが求められています。(大久保)
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ビジョンを共有し対立を恐れず、シームレスに境界を越えていこう(北野)

 今後、デジタル化が進めば進むほど、さまざまな分野の間にあった境界がなくなっていくでしょう。それにより、人材はいい意味で淘汰されていきます。では、どんな人材が生き残れるのか。やはりそれは、「自己否定しながら前に進もうとする」「滑らかに境界を越えながら補い合える」人が残ると思います。滑らかに境界を越えていくために必要なのが、すでに申し上げてきた「ミッション、ビジョンの共有」です。

 今、「コロナ禍」ともいわれるこんな状況だからこそ、本当に指示されて濃いファンがつくメディアを作るには、エンジニアや営業との連携は当然ですが、編集チーム力が一番大事になります。今の状況下で、これは本当に読者に提供できるコンテンツなのか、表現なのかということを、一人だけで決めずに、チームの意見を聞きながら、どこかでズバッと意思決定をする必要があります。その時に、共有するビジョンや編集チーム力がないと、各々がそれぞれの立場、経験からの意見をいい出します。「いいじゃんこれで…」というような適当な意思決定になってしまいます。

 そうではなく、みんな同じ方向を向いた上で、1つ1つのコンテンツに対して真摯に向き合い、このコンテンツを出すべきか否か、タイミングはどうすべきか否か、表現方法、言葉尻まで考えなくてはなりません。当然、その時は意見の対立もあるでしょうが、共有するビジョンを持ったチームなら、対立などはその一瞬だけなので恐れる必要はありません。「ケンカするほど仲がいい」というのは、チームにも言えることで、ケンカするぐらいまでやはりお互いの主張をぶつけ合って、そこから逃げない。その対立を乗り越えるというのも大事でしょう。

 そのうえで作り上げたコンテンツに対して当然いろいろな意見もあるし、時には批判されることもあるでしょう。しかし、それでいいのです。世の中には色んな意見があって当然なのですから。デジタルの世の中に対して自分たちが編集チーム力を駆使して、メディアとしての「解」がどこにあるのか、チームの中でいろいろな意見、賛否両論を吸い上げて、落とし込みながら臨機応変に対応していくことが大事なのだと思います。

 メディアには批判は付きものです。それを覚悟の上で、しっかり真摯に対応しながら、あくまでも「自分たちはどういうメディアで進むのか」というコンセプトに立ち戻りながら、チームとしての意思決定をしていきたいですね!(北野)
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大久保清彦(Kiyohiko Okubo)

雑誌LEON、OCEANSなどを企画創刊し創刊副編集長、創刊編集長を経て、セブン&アイ出版常務執行役員の後、独立。 現在は家族の幸せやSDGsなどをコンセプトに掲げるMADUROなどの雑誌とオンラインを率いるRRデジタルメディア代表取締役としてご活動中。 SNSやデジタルメディアを活用し、「地域、企業、組織の編集力」を高め、「伝える力」をつけるためのソリューションを追求中。
北野 博俊(Hirotoshi Kitano)

建築構造設計から教育系人材、不動産ベンチャーを経て株式会社ベーシックにてマーケティング部立ち上げを経験。現在、株式会社RRデジタルメディア執行役員、また、傘下の株式会社fluxusにて執行役員、株式会社sotokoto onlineにて取締役及びオンラインディレクター、グループ全体のデジタルシフト、新規事業推進を担当。

◆twitter: https://twitter.com/hirotoshikitano

◆note: https://note.com/kitano_h
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