調査では、「戦略人事」(戦略的人的資源管理)について、以下のように定義しています。
・経営資源の1つである「ヒト」の価値を最大化するために、経営戦略と連動した人事戦略を策定・実行すること
調査の概要は、以下の通りです。

図1:「戦略人事」の調査概要
以下のような項目について調査が実施されました。
●戦略人事の実現度
●戦略人事の主要要素の実現状況
●HRBP・事業部人事の設置率
●HRBPの認知度
●HRBP・事業部人事と戦略人事の実現度
●人事データ活用状況と戦略人事主要要素の実現度
●人事データ活用の実態
以下に、調査結果の概要を説明します。
●戦略人事の実現度
日系企業の経営層・人事部管理職947人に、自社において「戦略人事が実現できているか」をたずねたところ、以下のような回答結果となりました。
・「肯定」的な回答:29.7%
・「否定」的な回答:41.6%

図2:戦略人事の実現度(全体)/パーソル総合研究所調べ
なお「肯定」的な回答の割合は、企業規模が大きい(5,000人~)ほど、多い傾向が見られたとのことです。
●戦略人事の主要要素の実現状況
経営層・人事部管理職を対象に、「戦略人事の主要な要素」の実現度をたずねました。実現度の高いものは以下の項目となりました。
・「経営戦略に紐づいた人事」(「人事部員が事業戦略を理解」「人事部のトップが経営会議に常時参加」など)
・経営層/事業部との「社内連携」
一方、実現度が低いものは、以下のようになりました。
・「次世代人材の発掘/育成」
・「事業部の人的資源の調整/配分」への深い関与
・「人事ポリシーの明確な打ち出し」
・「従業員の前向きなキャリア形成のための施策実行」
また、「データドリブン人事」については、重要度・実現度ともに低くなっていました。

図3:戦略人事の実現状況/パーソル総合研究所調べ
●HRBP・事業部人事の設置率
戦略人事の実現・推進に向けて、以下2つの役割が注目されています。
・「HRBP」(HRビジネスパートナー):戦略人事実現のため、事業部の経営目標を人事観点から支援する役割・組織
・「事業部人事」:各事業部の人事業務を担う組織(ただし今回の調査では、HRBPを含まない定義としている)
今回、「HRBP」「事業部人事」それぞれの設置率が調査されました。全体では、以下のような結果となりました。
・HRBPの設置率:11.3%
・事業部人事の設置率:27.5%
企業規模が大きいほど、ともに設置率が高いという結果が出ました。また、業種別では、「製造業、インフラ業」「情報通信業」において、HRBPの設置率が高いことが分かりました。

図4:HRBP・事業部人事の設置率(企業規模・業種別)/パーソル総合研究所調べ
●HRBPの認知度
人事部管理職に対し、「HRBPについてどの程度知っているか」をたずねました。HRBPを「他者に説明できる」「知っている」と回答した割合は38.3%でした。

図5:HRBPの認知度/パーソル総合研究所調べ
●HRBP・事業部人事と戦略人事の実現度
次に「戦略人事の実現度」と「HRBP/事業部人事の設置率や機能」についての関連性を調べました。「戦略人事の実現度」を低・中・高の3群に分けて分析しました。その結果、以下のような結果になりました。
・戦略人事実現度が高い企業ほど、HRBPの設置率が高い
・戦略人事実現度が高い企業ほど、HRBP/事業部人事が組織・人事構想を担っている傾向が強い
●人事データ活用状況と戦略人事主要要素の実現度
また、「人事データの一元管理の実施度」を低・中・高の3群に分け、それぞれ「戦略人事の主要な要素の実現度」を見ました。その結果、人事データを一元管理できている企業ほど、戦略人事の各要素が実現できている傾向が見られました。特にその傾向が顕著に見られたのは、以下のような要素でした。
・「次世代人材の発掘・育成」
・「事業部の人的資源の調整・配分」
・「従業員への支援」
・「人事ポリシーの明確化」

図6:人事データの活用状況と戦略人事実現度との関係/パーソル総合研究所調べ
●人事データ活用の実態
しかし、人事データ活用の実態を見た結果では、「人事データが一元管理され、活用されている」といった企業は多くありませんでした。戦略人事の実現に必要な「従業員のキャリア志向」や「スキル・強み」といった人事データの活用実態については、全体の企業の4割に満たない結果となりました。

図7:人事データ活用の実態/パーソル総合研究所調べ