大分県別府市にあるAPUは、2000年に開学しました。発表時点までに159の国・地域から国際学生を受け入れてきています。APUの国際入試では、出願に興味を持つ高校生や学部生が、世界100カ国以上に散らばっています。その高校生らへの適切なアプローチが、出願につながる大変重要な要素となります。
APUでは、2018年から国際入試のDX化を段階的に進めてきました。発表時点までにすでに出願・入学手続き書類の9割において、オンライン化を可能にしています。今回発表の「Slate」の本格運用は、国際学生の学部入試および大学院入試が対象です。大学院ではすでに、2020年9月より先行的に運用を始めていました。
Slateは、 Technolutions社が開発した入学者と学生の管理のための包括的なプラットフォームです。発表時点で、北米、欧州などで1,400校以上の導入実績があり、アジアの大学では8校目、国内の教育機関では初めてとのことです。
今回のSlateを含めたDX化により、出願に興味を持つ高校生(志願者)が、問い合わせや入試関連イベントへの参加から出願、面接、合格発表、入学手続きまでを同一のプラットフォームで完結できる仕組みが整いました。加えて、情報を管理するAPU側にとっても、志願者との接触の増加や、出願促進の定例化などによる適切なアプローチが可能になります。
APUの国際入試DX化の流れは以下のようになっています。
1. オンラインでの面接実施
2. 公的な電子署名を導入(電子契約サービスの「Adobe Sign」を活用)
3. 支払い実務簡素化とクレジットカード支払いの導入(米ウエスタンユニオン社と連携)
4. 機械学習(AI)によるエッセイの分析(福岡にある量子コンピュータ関連企業のグルーヴノーツと連携)
5. 自宅受験で、クリティカルシンキング、基礎的な数的思考や言語の素養を図る「オンラインアセスメント(試験)」の実施(英Pearson社と連携)
6. 出願書類、入学手続き書類提出の9割をオンライン化 など
志願者は居住地を問わず、インターネットに接続していれば以下のような作業が可能です。
・オンラインイベントへの登録
・入試に関する質問
・出願
・結果通知の受け取り
・手続金の支払い
・渡航査証(ビザ)申請
また、面接、テスト、エッセイをオンライン上で実施することで、高い精度で志願者の質の見極めを行うDX化が可能になったとのことです。
これまでの課題とSlateの導入効果として大きく2点が挙げられています。
まず1つは、個人情報の登録が手動だったため、タイムラグが生じ、情報も分断していました。Slateの導入により、以下のように解決されました。
・問い合わせ、イベント登録時点で自動登録される。
・その後のフォローアップ、情報発信にタイムラグがない。
・それぞれ情報が紐づいていなかったが、1人の志願者にすべての情報が紐づく仕組みができた。
2つ目の課題として、以前は各国・地域担当者依存のマーケティングだったことが挙げられています。それについては、以下のように解決されました。
・マーケティングの自動化が進んだ。
・イベント登録、質問などで集まった興味層をSlateで一元管理。
・その情報をもとに、各国・地域の担当者が、フォローアップが必要な個人へアプローチ、または興味層への自動メール配信。
・情報配信の漏れがなくなり、業務負担の約20%軽減(発表時点)にもつながっている。
従来型では、情報の分断や、自筆署名書類の発送などの煩雑さが課題だったといいます。
今後は、志願者の情報が同システムの下で一元管理されます。そして、志願者へより適した情報を届けることができるようになります。それにより、志願者のエンゲージメントを飛躍的に高めることが期待されます。すでに同年度の利用開始から、一部の出願期間において、出願数が前年比1.5倍となったと発表されています(2022年度春出願1期:国際入試)。