野村総合研究所(NRI)は2021年11月19日、「生活者1万人アンケート調査」を実施した結果を発表しました。調査は2021年8月、全国15歳~79歳の男女計1万人を対象に行われました。同調査はNRIが1997年以降、3年に1回、実施しているもので、今回が9回目です。今回は、主にコロナ禍で、日本の生活者がどう変化したかが見られました。結果の推移により、「景気・収入の先行きについては悪化の見通しが強い一方で、生活満足度は高水準を維持している」、「デジタルレジャーが伸長し、ショッピングもインターネットで完結している」などの動向が明らかにされました。
「生活者1万人アンケート調査」は、訪問留置法で、回答者の生活像や生活価値観、消費実態をたずねるものです。今回の調査の主な結果として、以下の5点が挙げられています。
・景気・収入の先行きについては悪化の見通しが強い一方で、生活満足度は高水準
・テレワークの浸透などにより就業価値観が多様化
・デジタルレジャーが伸長し、ショッピングもインターネットで完結
・「プレミアム消費」スタイルが増加
・中高年層におけるスマートフォン保有が伸長し、情報検索もネット情報中心に それぞれの調査結果についての詳細は、以下の通りです。 ■景気・収入の先行きについては悪化の見通しが強いが、生活満足度は高水準を維持
調査では、今年から来年にかけての「景気の見通し」について聞きました。景気が「悪くなる」と考える人が2012年には40%いました。その後2015年に22%、2018年には19%へと減少していました。しかし、2021年では46%まで増加しました(図1)。これは、生活者1万人アンケート調査の開始以来、最も高い値でした。コロナ禍による景気後退の懸念が大きいことが示されました。 調査では同様に、今年から来年にかけての「家庭の収入の見通し」についても聞きました。家庭の収入が「悪くなる」と考える人は、2015年に30%、2018年に24%まで減少していました。しかし2021年では33%に増加し、収入面での見通しも悪化しています。
・テレワークの浸透などにより就業価値観が多様化
・デジタルレジャーが伸長し、ショッピングもインターネットで完結
・「プレミアム消費」スタイルが増加
・中高年層におけるスマートフォン保有が伸長し、情報検索もネット情報中心に それぞれの調査結果についての詳細は、以下の通りです。 ■景気・収入の先行きについては悪化の見通しが強いが、生活満足度は高水準を維持
調査では、今年から来年にかけての「景気の見通し」について聞きました。景気が「悪くなる」と考える人が2012年には40%いました。その後2015年に22%、2018年には19%へと減少していました。しかし、2021年では46%まで増加しました(図1)。これは、生活者1万人アンケート調査の開始以来、最も高い値でした。コロナ禍による景気後退の懸念が大きいことが示されました。 調査では同様に、今年から来年にかけての「家庭の収入の見通し」についても聞きました。家庭の収入が「悪くなる」と考える人は、2015年に30%、2018年に24%まで減少していました。しかし2021年では33%に増加し、収入面での見通しも悪化しています。
via www.nri.com
一方、生活者の生活満足度(「満足している」と「まあ満足している」の合計)は、2021年調査で78%と、調査開始以来最も高い値を示しました。コロナ禍による自粛生活が続いていますが、自粛により時間的な余裕が生まれたことや、生活面でのデジタル化が浸透したと同社では分析しています。そして、生活者はウィズ・コロナの新しい生活様式に充実感を見出していることがうかがえると推察しています(図3)。
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■テレワークの浸透などにより就業価値観が多様化
「就業価値観」は、過去20年で変化してきています。会社の発展や出世のために尽くすことよりも、ワークライフバランスへの意識が高まっています。近年では、副業への意向も高まってきています(図4)。
「就業価値観」は、過去20年で変化してきています。会社の発展や出世のために尽くすことよりも、ワークライフバランスへの意識が高まっています。近年では、副業への意向も高まってきています(図4)。
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また、コロナ禍において浸透した「テレワーク」ですが、調査の結果、実際にテレワーク業務を実施できた人は、就労者全体では22%でした。管理職・事務職・専門職で高く、正社員や従業員規模の大きい会社ほど高い傾向にありました。
なお、テレワーク業務の実施者と非実施者で、就業価値観を比較した調査結果も出ています。テレワーク実施者は、「会社への貢献意識や、余剰時間を活用した資格取得、副業への意向が高く、就業への満足度も高いことが特徴」とのことです。
■デジタルレジャーが伸長し、ショッピングもインターネットで完結
休日や、自由な時間などによくする余暇活動の割合にも変化が表れています。これまで拡大してきた「外食・グルメ・食べ歩き」や「映画・演劇・美術鑑賞」、「カラオケ」などの「街レジャー」は減少しています(図7)。代わりに、動画配信サービスの利用拡大を背景に「ビデオ、DVD鑑賞」などのデジタルレジャーが伸長しています。
休日や、自由な時間などによくする余暇活動の割合にも変化が表れています。これまで拡大してきた「外食・グルメ・食べ歩き」や「映画・演劇・美術鑑賞」、「カラオケ」などの「街レジャー」は減少しています(図7)。代わりに、動画配信サービスの利用拡大を背景に「ビデオ、DVD鑑賞」などのデジタルレジャーが伸長しています。
via www.nri.com
調査ではまた、インターネットで購入する場合に、「実物を店舗で確認するか」、「ネットだけで買うか」という購入チャネルの推移も見ています。ネットショッピングの利用割合や利用頻度が伸びる中で、「実際の店舗に行かずに、インターネットだけで商品を買うことがある」割合(「どちらかといえば」を含む)は、2012年の28%から、2021年には49%へと伸長しています。同社では、コロナ禍の自粛生活の中で、人々がインターネットで購買を完結させる動きが広まっているとしています。
■制限ある生活の中でも楽しみを見出す志向から「プレミアム消費」スタイルが増加
NRIでは、以下の4つの消費スタイルを設定しています。 ・「利便性消費」(=購入する際に安さよりも利便性を重視)
・「プレミアム消費」(=自分が気に入った付加価値には対価を払う)
・「安さ納得消費」(=製品にこだわりはなく、安ければよい)
・「徹底探索消費」(=多くの情報を収集し、お気に入りを安く買う) 回答者のこれらの消費スタイルの構成比変化を見ると、安さよりも利便性を重視する「利便性消費」スタイルの割合が、2015年の44%から2021年には41%に減少しています。また、自分が気に入った付加価値には対価を払う「プレミアム消費」スタイルが、2015年の22%から2021年には24%に増加しています(図9)。
NRIでは、以下の4つの消費スタイルを設定しています。 ・「利便性消費」(=購入する際に安さよりも利便性を重視)
・「プレミアム消費」(=自分が気に入った付加価値には対価を払う)
・「安さ納得消費」(=製品にこだわりはなく、安ければよい)
・「徹底探索消費」(=多くの情報を収集し、お気に入りを安く買う) 回答者のこれらの消費スタイルの構成比変化を見ると、安さよりも利便性を重視する「利便性消費」スタイルの割合が、2015年の44%から2021年には41%に減少しています。また、自分が気に入った付加価値には対価を払う「プレミアム消費」スタイルが、2015年の22%から2021年には24%に増加しています(図9)。
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雇用条件の改善や共働き世帯の増加などにより、世帯年収が維持されています(図10)。コロナ禍による自粛生活が続いたことや、時間的な余裕が生まれたことから、生活者は制限ある生活の中でも楽しみを見出す(=こだわり志向)ようになったと同社は分析しています。
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■中高年層におけるスマートフォン保有が伸長し、情報検索もネット情報中心に
スマートフォンの個人保有率は、生活者全体では2012年の23%から2015年の52%、2018年71%、そして2021年には84%まで伸びました。2021年では、男女とも50代以上の中高年層でスマートフォン保有が進み、最も少ない70代でも、男性57%、女性54%と、半数以上が保有しています。 商品やサービスを購入する際に利用する、消費の「情報源」としてもネットの影響が強まっています。「テレビのコマーシャル」「ラジオ、新聞、雑誌の広告」などが2012年以降減少を続け、「ネット上の売れ筋情報」「評価サイトやブログ」といったネット情報の参照割合が伸びています。また、2015年以降、参照割合が高かった「店舗の陳列商品・表示情報」や「販売員などの意見」は減少傾向に転じています。これは、コロナ禍により外出・他者との接触を避けるようになったことが原因だと結論付けられています。
スマートフォンの個人保有率は、生活者全体では2012年の23%から2015年の52%、2018年71%、そして2021年には84%まで伸びました。2021年では、男女とも50代以上の中高年層でスマートフォン保有が進み、最も少ない70代でも、男性57%、女性54%と、半数以上が保有しています。 商品やサービスを購入する際に利用する、消費の「情報源」としてもネットの影響が強まっています。「テレビのコマーシャル」「ラジオ、新聞、雑誌の広告」などが2012年以降減少を続け、「ネット上の売れ筋情報」「評価サイトやブログ」といったネット情報の参照割合が伸びています。また、2015年以降、参照割合が高かった「店舗の陳列商品・表示情報」や「販売員などの意見」は減少傾向に転じています。これは、コロナ禍により外出・他者との接触を避けるようになったことが原因だと結論付けられています。
なお調査の概要は、次の表のとおりです。
調査名 | 「生活者1万人アンケート調査」(9回目) |
実施時期 | 2021年8月
(※過去調査の実施年:1997年、2000年、2003年、2006年、2009年、2012年、2015年、2018年)
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調査方法 | 訪問留置法 |
サンプル抽出方法 | 層化二段無作為抽出法 |
調査対象 | 全国の満15~79歳の男女個人
(※2009年までは満15~69歳の男女個人)
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有効回答数 | 10,164人
(※過去調査における有効回答数:1997年10,052人、2000年10,021人、2003年10,060人、2006年10,071人、2009年10,252人、2012年10,348人、2015年10,316人、2018年10,065人)
※時系列比較の際は、同じ年齢層(満15~69歳)で比較をするため、満70~79歳の回答を除いている。
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主な調査項目 | ◇生活価値観…日常生活における考え方、組織・機関、職業に対する信頼意識
◇コミュニケーション…親子関係、夫婦関係、地域関係に対する意識
◇居住…居住年数、持ち家の形態、今後の住まいに対する意向
◇就労スタイル…就労状況、就労意識
◇消費価値観…消費に対する意識、今後積極的にお金を使いたい分野
◇消費実態…世帯・個人で保有している商品、消費に関する情報源
◇余暇・レジャー…趣味、インターネットの利用状況
◇生活全般、生活設計…景気・収入などの見通し、直面している不安や悩み
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