生徒の学習効率向上、教職員の業務効率化の手段として教育現場でのデジタル活用が進んでいます。中でもGoogleは教育機関での利用に特化した端末やツールを用意し、教育現場の支援に名乗りを上げています。Googleは教育機関に対し、どんな支援策を用意するのか。Googleが提供する独自の教育プログラム「Google for Education」の構成要素を中心に解説します。
小学校や中学校のデジタル化が加速しています。生徒1人ずつにタブレットを貸与して授業をサポートできるようにするほか、小学校でプログラミング教育が必修になるなど、デジタル人材の育成を見据えた取り組みが急ピッチで進みつつあります。
一方、教師側のデジタル化も見逃せません。教師の残業過多や休日出勤などの働き方が社会問題化する中、ITを活用した業務効率化に乗り出す自治体、学校が一気に目立ち始めました。
こうした教育現場の課題解消に乗り出す企業も少なくありません。教育機関の利用を想定したサービスを提供したり、タブレット向けの学習コンテンツを配信したりする企業が増えつつあります。
IT大手のGoogleもそんな一社です。同社は学校などの教育機関向けの独自プログラム「Google for Education」を打ち出し、教育機関のデジタル化に乗り出しています。教職員間の情報共有はもとより、教師と生徒との安全なメールのやり取り、さらには課題の作成や採点などの管理をサポートするためのツールなどを用意、提供しています。
「Google for Education」を構成する代表的な端末が「Chromebook」です。これは、Googleが開発した独自OS「Google Chrome OS」を搭載するノートPC。ビジネス用途では一般的な「Windows」を搭載するノートPCより低価格で導入できるのが強みです。Googleのアカウントや管理コンソールを使えば、数千台、数万台規模の端末を容易に一元管理できるのも教育現場にとって便利な仕様です。すでに多くの学校で、教職員用はもちろん、生徒の学習用端末として「Chromebook」が導入されつつあります。
「Chromebook」とともに「Google Workspace for Education」を導入する学校も目立ちます。これは、メールやカレンダー、ドキュメント、スプレッドシートなどの各種ツールをセットにしたオフィスサービス。生徒による資料作成や生徒同士のコラボレーションを支援するほか、生徒と教師による円滑な連絡や報告もサポートします。企業向けとなる「Google Workspace」を教育機関向けにカスタマイズしたもので、無料で利用可能な「Education Fundamentals」のほか、機能と価格の異なる「Education Standard」「Teaching and Learning Upgrade」「Education Plus」を用意します。
教師による課題の作成や配布、採点業務をサポートする「Google Classroom」も「Google for Education」を構成するツールの1つです。Googleドライブに生徒専用のフォルダを作成し、フォルダ経由で提出物をやり取りしたり、生徒はスマートフォン向けアプリ「Google Classroom」を使って撮影した写真を制作物に添付して提出したりといった多様な使い方が可能です。
こうした端末やツールを活用し、新たな学習環境を構築する学校はすでに数多く登場していています。Googleのサイトでは、Google for Educationを採用する学校名と具体的な活用事例をまとめて紹介しています。導入サービスや地域別などで該当する学校を絞り込むことも可能です。
一方、Googleは教職員のスキル向上支援にも乗り出します。端末やツールの基礎知識や授業での具体的な活用方法を深め、活用の幅を広げてもらうのが狙いです。
「Google for Education認定教育者資格」もこうした支援策の1つです。Googleが教師に向けて発行する認定資格で、Google for Educationを使いこなすスキルがあることを証明します。資格を取得した教師には、Googleからの証明証および認定バッジが付与されます。名刺やメールの証明欄に資格取得者であることを記すことも可能です。
「Google for Education認定教育者資格」には2種類あります。
「認定資格者レベル1」は、授業で Googleのツールを使いこなすスキルがあることを証明します。「認定資格者レベル2」は、Google for Educationのコアサービス以外の知識のほか、テクノロジー導入の高度なスキルを有していることを証明します。
どちらの資格もオンラインで試験を受けられます。試験時間はともに180分で、「認定資格者レベル1」の受験料は10ドル、「認定資格者レベル2」の受験料は25ドルです。資格はともに3年間有効です。
なお、これらの資格とは別に、Google for Educationサービスの活用方法を教師に教える立場となる「認定トレーナー」の資格もあります。リーダーとして他の教師や生徒のサービス活用を主導する立場であることが証明されます。
Googleは世界中の教育格差解消に向けて資金援助したり、Google社員によるITスキルを活かしたボランティア活動に取り組んだりしています。Google for Educationが今後、どう進化し、教育現場のDXに寄与するのか。Googleの今後の取り組みと、他企業が教育現場向けにどんな支援策を打ち出すのかに注目しましょう。
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