製造業における技術者の不足は、深刻な課題となっています。また生産性の向上や、業務の効率化などを目的とした製造現場のDXも求められています。製造現場のDXを進めるためには、工場内の生産設備などのあらゆるデータを収集・連携し、それらを可視化・分析して改善していくことが必要です。
しかし、多くの中小企業の製造現場においては、人が生産設備や制御装置などを24時間365日体制で監視しています。そして、手作業でデータの記録や収集を行っているのが現状だといいます。
また、デジタル化によるデータの自動収集や可視化を進めたくても、既存の設備がネットワークに接続されていなかったり、データの出力が困難な構造になっていたりする場合もあります。さらに、稼働中の生産設備を使ってシステムの検証や導入効果の検証を行うことは、生産ラインへの影響があり難しいといった課題もあります。
iRooBOとソフトバンクは、こうした課題を解決するため、5GやIoTを活用して生産設備などのデータ収集・連携ができる実証環境をATC(アジア太平洋トレードセンター)内に構築しました。そして今回、製造業や製造業向けのソリューションを開発する企業向けに公開しました。
今回の取り組みでは、ATC内にある以下の施設が活用されます。
・iRooBOが運営する製造現場の自動化支援施設「IATC」
・iRooBOが運営する研究開発支援施設「IATC-Lab」
・ソフトバンクやiRooBOなどが共同で運営する、5Gを活用した製品・サービスの開発支援拠点「5G X LAB OSAKA」
5G X LAB OSAKAは、大阪市とソフトバンク、大阪産業局、iRooBOが官民連携して開設した、5Gの技術検証や体験ができる施設です。
今回、IATCとIATC-Labにあるデモンストレーション用の生産設備や制御装置、協働ロボットにIoTセンサーなどを設置しました。そして、ソフトバンクの5Gと閉域網サービス「SmartVPN」を使ってクラウド(Microsoft Azure)に接続しました。それにより、セキュアにデータを収集・連携可能なシステムが構築されました。
IATCおよびIATC-Labは、5G対応ルーターなどが設置されている5G X LAB OSAKAと、専用線で接続しています。
企業は今回の実証環境を利用することにより、実際の製造現場の生産設備と同様の環境で、以下のような検証が可能になります。
・ソリューションの動作確認
・データの蓄積や可視化状況などの導入効果
また、SmartVPNでクラウドと閉域接続しているデバイス(PCやスマートフォンなど)であれば、どこからでもデータを確認できます。遠隔地からの運用を想定した検証も行えます。さらに、5G X LAB OSAKAの検証環境やビジネスサポートを活用することで、製造業向けの新たなソリューションの開発・検証の迅速化も期待できます。
この実証環境を活用した実証実験の第一弾として、ブリッジ・ソリューションとスリーアップ・テクノロジーが「IoTシステムを活用した工場見える化ソリューションの導入可能性検証と課題抽出」の実証実験を、2021年11月29日~2022年2月28日に実施する予定です。なお、この実証実験は、大阪産業局が大阪市からの交付金事業として実施する、IoT・ロボットビジネス実証実験支援プログラム「AIDORエクスペリメンテーション」として行います。
今後、iRooBOとソフトバンクは、データ収集・連携が可能なデモンストレーション用の設備や装置の種類を増やし、製造業のさまざまなユースケースに対応した実証実験ができる環境を整備していく予定です。また、ソフトバンクはこの実証環境を活用して、製造業向けのサービスの開発・検証を行っていきます。