5G(第5世代移動通信)サービスで利用されているミリ波帯(28GHz帯)や、6Gに向けて技術開発が進められているさらに高い周波数帯の電波は、直進性が強いのが特徴です。そのため、遮蔽(しゃへい)物によって基地局のアンテナが見通せない場所での通信エリア化が課題となっています。そこで、その解決に電波の「反射」の活用が期待されています。
メタサーフェス反射板(RIS反射板)は、電波を特定の方向へ反射(制御)することのできる反射板です。「メタサーフェス」とは、波長に対して小さい構造体を周期配置して誘電率・透磁率を制御する人工媒質(メタマテリアル)の一種です。構造体の周期配置を2次元とした、人工の表面(サーフェス)です。
また「RIS」(Reconfigurable Intelligent Surface)とは、反射板表面に電気的に位相を切り替える素子を配列し、反射方向を適応的に変えることができるメタサーフェスデバイスです。ガラス・電子製品・セラミックスなどの総合メーカーであるAGCがRIS反射板を開発しています。
今回、NTTが研究開発を行ってきた「ユーザーの移動に合わせて動的に反射方向を制御する反射制御技術」を、AGC開発のミリ波帯のRIS反射板に適用しました。それにより、5G以降の世代で利用が予定されている高周波数帯において、ユーザーの移動に合わせた効率的なエリア構築が可能になったとのことです。
同実証実験では、以下の結果が確認されました。
・窓を介して室内に浸透してきた基地局からの電波について、RIS反射板が適切に電波の反射方向を制御すること
・それにより、移動する受信機での受信電力を広範囲に改善できること
また、同実証実験で両社はそれぞれ、以下の役割を担いました。
・NTTにおいて研究開発した反射制御技術を適用したRIS反射板を使用
・NTTドコモが屋内エリア設計と基地局運用を行い、RIS反射板の屋内での有用性を確認
なお、同実験において用いたRIS反射板は、開発元であるAGCの実験協力のもと運用しました。
今回の取り組みは、5Gおよび5G evolution(5G高度化)、さらに6Gに向けた高周波数帯エリア構築技術の有力な1候補として検討が進められています。NTTとドコモは引き続き、高周波数帯における効率的かつ柔軟なエリア構築手法の確立を目指し、研究開発に取り組んでいきます。