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DXセミナー

2022.10.31

メーカーと小売の共創は“顧客起点”がカギ、KPIの共通化でCX向上を目指す

日本オムニチャネル協会は2022年10月6日、DX実践セミナーを開催しました。今回のテーマは「小売との共創と共闘が、メーカーのDX・CXの未来を創る」。サントリーやライオン、日本IBMの担当者をゲストに迎え、共創や共闘のあるべき姿、小売とメーカーの目指すべき関係性などを議論しました。

当日のセミナーの様子を動画で公開しています。ぜひご覧ください。

企業主体ではなく顧客主体に基づくKPIを用意せよ

 セミナー前半は、サントリー 広域営業本部 第2支社長 兼 リテールAI推進チーム シニアリーダー、セールスプラス CRDAの中村直人氏が登壇。「サントリー酒類事業における小売の共創・DXの取り組み」というテーマで講演しました。サントリーが顧客とどう向き合うのか、そのために必要なマーケティング施策とは。自社の取り組みを例示しつつ、メーカーと顧客の関係を中心に解説しました。

 中村氏は冒頭、現在のマーケティング施策を次のように考察します。「これまで主流だったマスマーケティングはもはや通用しない。消費者の生活スタイルは変わり、価値観や嗜好性の多様化も進む。不特定の消費者を対象としたテレビCMさえ流れば商品が売れる時代は終わった。メーカーはいよいよ1to1マーケティングに舵を切らなければ生き残れない」(中村氏)と断言します。これまでの「企業主体」から「顧客主体」に切り替え、顧客一人ひとりの購買体験を高める施策に注力すべきと主張します。

 とりわけ酒類を扱う同社は、切り替えの必要性を目の当たりに感じるといいます。「ある調査によると、週4日以上ビールを飲酒する割合は団塊世代で4割強。一方、27歳以下の若い世代では6%にとどまる。世代だけ見ても、細分化したマーケティング施策が求められているのが分かる」(中村氏)と分析します。各世代へのアプローチも「団塊世代はアナログ、若い世代はデジタルといった具合に異なる。誰に何をどのような手段でアプローチするのかを、多様化する中でも模索し続けなければならない」(中村氏)と指摘します。そこで同社では、売上拡大に向けて「延べ客数」や「来店頻度」といった指標をKPIにし、目標を達成するためのマーケティング施策を展開していると言います。

 このとき重要なのが、「小売・流通事業者との連携である」(中村氏)と強調します。「顧客による『認知』『来店』『購入』『リピート』『ファン化』といったカスタマージャーニーを描く際、小売・流通事業者と連携すれば、メーカーがこれまでアプローチできなかった『来店』『購入』『リピート』の店舗向け施策も検討できるようになる」と、連携によるメリットを挙げます。これまでメーカーは、テレビや新聞、SNSなどを用いる「認知」、イベントやSNSを使って購入後の顧客にアプローチする「ファン化」しか顧客との接点はありませんでした。「センサーやカメラ、スマートフォンの位置情報などのデータを駆使すれば、これまでメーカーにとってブラックボックスだった小売・流通事業者側の施策を可視化できる」(中村氏)と言います。例えば、スマートフォン向けアプリや店舗に設置するサイネージ、ショッピングカートにタブレット端末を取り付けたレジカートなどを使ってメーカー独自のコンテンツを配信すれば、顧客が購入するタイミングに後押しできると言います。「さまざまなデータを活用し、『認知』『来店』『購入』などといった各接点で実施する1つひとつの施策を可視化することが、メーカーによるマーケティング確度を高めるためには重要である」(中村氏)と述べます。

 同社では店舗向けに配信するサイネージ用コンテンツの効果・検証も実施しています。テレビCM用の動画と、来店者向けに必要な情報を訴求するオリジナル動画を用意。A/Bテストを実施し、動画を配信したときの販売金額を比較しています。「サイネージにテレビCMを流した場合、全店との売上変化の差分は+1~2%だった。これに対し、オリジナル動画の場合、+3~9%売上が高かった。サイネージのみの効果とは言い切れないものの、サイネージ非放映店と比較した場合でもサイネージ放映店は売上伸長率が高かった」(中村氏)と言います。この結果からも「テレビCM用のコンテンツをただ配信すればいいわけではないのは明白だ。来店者に寄り添うコンテンツ制作の重要性が増している」(中村氏)と指摘します。

 今後は製品・サービスごとの単年度売上という指標から、LTVによる売上という指標が重要であると中村氏は指摘します。そのためには、「CXやUXといった体験を高めるデザイン設計の役割が重要になる。製品・サービスごとに分割した組織体系ではなく、CXやUXという軸で組織化することも必要になるだろう。メーカーはこれまでの考え方や姿勢にとらわれず、顧客起点の変革に取り組むべきだ」(中村氏)とまとめました。

小売・メーカーの歩み寄りで共創の可能性を広げる

 セミナー後半はパネルディスカッションを実施。「顧客期待を超えていくメーカーとリテールの共創・共闘とは?」というテーマで登壇者が議論を交わしました。中村直人氏のほか、ライオン ビジネス開発センター エクスペリエンスデザイン部長の大村和顕氏、日本アイ・ビー・エム IBMコンサルティング事業本部 製造・流通・統括サービス事業部 小売サービス事業 アソシエイト・パートナーの藤野敏広氏が登壇。クロス・アンブレラ 代表 兼 Habitat 取締役 亀卦川篤氏がモデレータを務め、「共創」「協闘」の理想形を議論しました。
写真:写真左から、サントリー 広域営業本部 第2支社長...

写真:写真左から、サントリー 広域営業本部 第2支社長 兼 リテールAI推進チーム シニアリーダー、セールスプラス CRDAの中村直人氏、ライオン ビジネス開発センター エクスペリエンスデザイン部長の大村和顕氏、日本アイ・ビー・エム IBMコンサルティング事業本部 製造・流通・統括サービス事業部 小売サービス事業 アソシエイト・パートナーの藤野敏広氏、クロス・アンブレラ 代表 兼 Habitat 取締役 亀卦川篤氏

 中村氏は、「今後はメーカーと小売による『共創』が加速する。小売は店舗で取得したデータをメーカーに提供したがらないと言われるが、顧客起点のKPIにシフトすれば、小売はメーカーにデータを提供せざるを得なくなる。共創しなければKPIの目標を達成できないからだ。これまでは『1円でも高く買ってもらいたいメーカー』と『1円でも安く買いたい小売』は敵対関係になりやすかった。しかし例えば、小売事業者がサントリーの商品を買ってもらうにはどうすればいいかを考えるようになれば、小売はメーカーをパートナーとして共創を模索するに違いない」(中村氏)と指摘します。小売、メーカー双方のKPIマネジメントを変えられれば、共創が当然という時代が訪れると考察します。

 大村氏も中村氏の意見に同意します。「メーカー、小売双方に強みがあるし、保有するデータの内容や質も異なる。こうした両者が協力することで新たな価値を生み出せる。顧客こそ、共創による価値創出を一番求めているに違いない。データ連携を前提に協業キャンペーンを打ち出してもいいし、共同でメディアやコンテンツを作って発信するのもいい。共創により施策の可能性は大いに広がる。まずは、メーカーと小売双方の歩み寄りが必要ではないか」(大村氏)と指摘します。

 藤野氏は中村氏が主張する「小売とメーカーのKPI共通化」の必要性を指摘します。「小売とメーカーが敵対関係になるのは、1円でも高く売りたいメーカーの営業担当者と、1円でも安く買いたい小売のバイヤー(商品部)の関係に限られるのではないか。商品売買において利害が発生する状況でKPIの共通化は難しい。しかし、小売の販促部門や営業企画部門が商品売買に絡むようになれば、KPI共通化を模索できるはずだ。どんなキャンペーンやプロモーションを展開すれば商品の売上を伸ばせるか、顧客の満足度を得られるかといった視点で小売りが商品を取り扱うようになるからだ。商品がどう流通しているのかといった在庫管理もバイヤー(商品部)の業務と考えれば、敵対関係ではなく共創による新たな関係性を築けるに違いない」(藤野氏)と指摘しました。
日本オムニチャネル協会
https://www.omniassociation.com/
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