当日のセミナーの様子を動画で公開しています。ぜひご覧ください。
カメラやセンサーを駆使する実店舗「Amazon Flesh」
アマゾンといえば「amazon.com」や「Amazon Web Services(AWS)」を連想する人が少なくないでしょう。しかしその一方で、同社が注力するのが新たな顧客体験の創出です。ECユーザーの満足度向上はもとより、消費者の生活が便利になる新戦略や新サービスを次々に打ち出しています。日本国内ではあまり馴染みのないものの、米国では同社のチャレンジをより身近に感じられるようになっています。
では同社は米国でどんな新たなチャレンジをしているのか。セミナーでは横田氏が実際にアマゾン運営の実店舗などを視察した様子を中心に、アマゾンの取り組みを解説しました。
横田氏は2021年末に渡米し、アマゾンを始めとするさまざまなサービスや店舗を視察しました。その中でもとりわけ特徴的なサービスが「Amazon Flesh」です。もともとAmazon.comの生鮮食品を配送するサービス名でしたが、現在は食品を扱う実店舗でも使われています。なお同社は、実店舗を構えるスーパーマーケット「Amazon Go Grocery」も展開していましたが、現在は「Amazon Flesh」に名称を統一しています。

写真:クラスメソッド 代表取締役社長 横田聡氏(写真右)と、日本オムニチャネル協会 理事 逸見光次郎氏
「Amazon Flesh」では、利用者の入店や買い物、決済などの至るところで新たな顧客体験を感じられます。代表的なサービスが、レジでの支払いが不要な「Dash Cart」です。これは、商品を買い物カゴ(ショッピングカート)に入れるだけで支払いを済ませられるスマートカート。カートにはカメラやセンサーを内蔵し、カゴに入れた商品を自動で認識できるようにしています。一度カゴに入れた商品を取り出して元に戻す場合も自動認識します。
利用者はカートに取り付けたモニタからどの商品をカゴに入れたのか、総額はいくらなのかを確認できます。なおDash Cartを利用するには、Amazonのスマートフォンアプリを使った認証作業が必要です。認証することで「amazon.com」に登録するクレジットカードなどで支払いできるようになります。
Amazon Fleshでは店舗利用者の入店を管理するゲートも用意します。利用者は店舗に入店する際、スマートフォンをゲートにかざしてから入店します。なお、スマートフォンを使って入店できない人向けに、手のひらをかざして指紋認証したりクレジットカードを差し込んだりして個人を識別する専用端末もゲートに用意します。横田氏によると、同社が店舗向けに開発したシステムは外販され、ホテル内のショッピングモールやスタジアム内の売店で使われていると言います。
そのほかAmazon Fleshでは、店舗天井の至る箇所にカメラやセンサーを、商品の陳列棚や商品を吊るすフックに重量センサーを取り付け、商品陳列数を把握できるようにします。店内の様子を見た横田氏は、「Dash Cartのカメラやセンサー、さらには天井のAIカメラ、陳列棚の重量センサーを組み合わせて商品を管理する。視察して感心したのは、小さな商品でも高い精度で管理できるようにする点だ。各商品にRFIDなどのタグを付与せずとも、フックや陳列棚単位で商品重量(商品数)を把握している」と指摘します。さらに横田氏は、「視察した店舗に限ると、天井には約1000台のカメラを設置していた。アマゾンはこうした機器も大量購入することで安価に仕入れているはず。どのくらいの店舗規模ならスケールメリットを得られるかといった実験も兼ねているのではないか」と考察します。
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