共催セミナーには、日本オムニチャネル協会 会長の鈴木康弘氏と、同協会専務理事の林雅也氏、同協会理事の逸見光次郎氏が登壇。まずは鈴木氏が企業のシステムの現状について説明しました。「『2025年の崖』という言葉をよく聞く。経済産業省が公表した『DXレポート』で触れている、既存システムを使い続けることによる問題を表したものだ。DXを進める上で、新たな事業や業務に対応できない旧システムは足かせになりかねない。今後を見据えたシステム像を描くべきだ」と、古いシステムを使い続ける企業に問題提起しました。
コストについても、「古いシステムを使い続ければ、システムに精通する人材が退職するなどして足りなくなる。ITベンダーなどに委託する運用コストも膨らむ。企業のIT予算は、維持・運用に8割・9割に費やしているという調査結果もある」と指摘。歴史のある会社ほど、老朽化・複雑化したシステムを使い続ける傾向があり、「複雑化したシステムを今から紐解き、新たな環境に見合うシステムへと移行すべきだ」(鈴木氏)と見解を述べました。
ではクラウドを導入すればいいのか。既存システムをクラウドに移行するだけでは問題解決にならないと、同氏は続けます。「既存システムをクラウドに移行する企業は少なくない。しかし、業務が変わらなければ意味がない。従来の業務を踏襲したままクラウド移行しても、システムを業務に合うようカスタマイズするケースが頻発するだろう。これではクラウドやSaaSのメリットを活かせない。既存システムをクラウドに移行するなら、同時にこれまでの業務を見直し、無駄を省いた効率的な業務フローを考えるべきだ」と、新たなシステムを検討するには、業務にメスを入れるべきだと強調します。
データについても言及します。「DXはデータ活用が不可欠。そのために必要なシステムや体制づくりにも目を向けなければならない。こうした取り組みを進めることで『デジタル企業』になる。これからは、小売業を含むすべての企業が、自らITやデータを使いこなす『デジタル企業』になるべきだ。でなければDX時代の市場競争に勝ち残れない」(鈴木氏)と指摘。ITに積極的に投資すべきとの考えを述べました。さらに、「デジタル企業になるために大事なのは人材の育成だ。ITやデータを使いこなす人材を社内で育成し、デジタル企業をけん引するリーダーを育てるべきだ。今からDX人材の育成に乗り出さなければ取り残されてしまうだろう」と、デジタルに精通する人材の必要性にも触れました。