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DXセミナー

2022.10.25

社会課題解決を前提としたサービス創出が重要に、共通のビジョンを描いて共助・共創を推進せよ

DXマガジンは2022年10月20日、DX実践セミナーを開催しました。今回のテーマは「東南アジアに学ぶ 社会課題解決型DX~アフターデジタルのアフターを探る~」。ゲストとして登壇したビービット 執行役員 CCO 兼 東アジア営業責任者の藤井保文氏が、インドネシアのアプリや小売事情について解説しました。

当日のセミナーの様子を動画で公開しています。ぜひご覧ください。

インドネシアの国民的アプリが社会課題解決に寄与

 ゲストとして登壇した藤井保文氏は、デジタル化する世界の動きやビジネスをまとめた書籍「アフターデジタル」を2019年3月に出版。さらに2020年7月にはUXの重要性を訴求した「アフターデジタル2」を、2021年9月にはアフターデジタルの実践書と位置づく「UXグロースモデル」を立て続けに出版しています。

 今回のセミナーでは、アフターデジタルシリーズの次回作の一部を発売に先立って紹介。1章と2章で掲載予定の「東南アジアから見る社会課題起点の変革」というテーマで講演しました。インドネシア事情を引き合いに、具体的にどんな動きが見られるのか。社会課題にどう向き合っているのかを解説しました。

 藤井氏は、社会課題解決の手段としてアプリの活用事例を紹介します。具体的には「GOJEK(ゴジェック)」と呼ぶスーパーアプリが、インドネシア特有の社会課題解決に貢献していると指摘します。「GOJEK」は、中国の「Alipay」や「WeChat」、日本の「PayPay」のような決済機能を備え、日常生活を支援するさまざまなサービスを包含するインドネシアの国民的アプリ。配車や食事のデリバリーはもとより、荷物の運送、掃除やマッサージ師の手配などもアプリ経由で依頼できます。
写真:ビービット 執行役員 CCO 兼 東アジア営業責...

写真:ビービット 執行役員 CCO 兼 東アジア営業責任者の藤井保文氏(写真左)と、社会課題についてディスカッションしたDXマガジン総編集長の鈴木康弘

 GOJEKの特筆すべき点として藤井氏は、「決済機能を軸にサービス拡充を進める類似アプリと違い、移動を軸にサービスを拡充してきた点が特徴だ。GOJEKを端的に言えば、ドライバー集団にいろいろ頼めるサービスと言える。約200万人のドライバー集団を抱え、ドライバーを使った各種サービスを展開するのが強みである」とGOJEKを分析します。例えばタクシーの配車や食事のデリバリー、掃除やマッサージ師の手配はすべてドライバー集団を経由して依頼することになります。

 ではなぜ、GOJEKがインドネシアの社会課題解決に貢献するのか。インドネシア特有の社会問題が背景にあると藤井氏は続けます。「インドネシアでは渋滞が社会問題化している。ラッシュアワー時の自動車の時速は6km/hとも言われるくらいノロノロだ。歩いて30分かかる場所に、自動車でも30分かかると言われる。そこで移動手段として定着しているのがバイクである。GOJEKでは自動車のほか、バイクを使ったサービスを中心に展開する。移動も早いし、デリバリーも早い。GOJEKは渋滞という社会課題を解決することを前提に開発された経緯がある」(藤井氏)と述べます。インドネシアの課題に根付くのが、他のスーパーアプリと異なる点だと指摘します。「日本でも昨今は多くの企業が社会課題の解決策を模索するようになった。デジタル化の加速により、その傾向はより顕著になりつつある。アプリを開発、提供する企業は、利用者の不便を解消する機能強化だけに目を向けるべきではない。これからは、社会を取り巻く課題をどう解消するかといった視点が極めて重要になる。社会課題を解消する役割を備えるアプリこそ、これからはユーザーに支持されるに違いない」(藤井氏)と強調します。

 約200万人いるドライバー向けのサービスを提供することで、ドライバーの支援に乗り出しているのもGOJEKの特徴です。例えば、14時や15時くらいに飲食店を利用すると割引を受けられるサービス。お昼時はデリバリーで忙しいドライバー向けに提供します。ドライバーにとっては空き時間に割引価格で飲食でき、飲食店はアイドルタイムの来店を見込めるようになります。これまでの実績や評価をもとに現金をキャッシュバックするサービスもあります。ドライバーは評価を高めることで安定的な収入を確保でき、GOJEK側はドライバーの品質向上による利用者満足度を高められるといった利点があります。「ドライバーの移動ルートや事故実績などといったデータも評価に活用する。評価の高いドライバーには低金利のローンや保険を案内するといったことにも利用する。ドライバー向けの金融サービスや福利厚生を充実させることで、GOJEKの品質向上はもとより、大勢のドライバーの生活を支援するといった効果まで見込むことが可能だ」(藤井氏)と言います。なお、インドネシアでは年収40万円以上400万円未満の中間収入層が大幅に拡大しており、新たな雇用創出先としてバイクのドライバーが増えた経緯があります。増え続ける中間収入層の雇用の受け皿としての役割もGOJEKにはあると言います。

ECの仕組みを活用して小売業界の複雑なサプライチェーンを解消

 セミナーでは、インドネシアの小売業界に根付く課題解決例も紹介しました。インドネシアでは家族経営や個人事業主による店舗が多数あり、その大半が商品を仕入れるのに複数の売り手を経由していると言います。そのため、複数の売り手分のマージンが仕入れ価格に上乗せされる状況でした。不明瞭なサプライチェーンが小売業界によって課題となっていました。

 そこでECの仕組みをリアルの店舗に持ち込むことで課題解決を図ったと言います。具体的には、在庫管理や購入管理などの機能を備えるアプリケーション層と東南アジアのユニコーン企業によるプラットフォーム層を横串しで分離。特定の売り手や工場などで構成する従来のサプライチェーンを形成せず、必要な機能だけを利用できるようにし、物流網を単純化、効率化しました。「ECの場合、モノを買う側と売る側が1対1で取引する。何重ものマージンが仕入れ価格に上乗せされることはない。こうした仕組みをリアルの小規模経営の小売店に導入することで商品の仕入れ業務をスリム化できる。サプライチェーンの効率化により、家族経営といった個性や魅力を損なわない店舗経営も見込める。引いては店舗を利用する顧客の体験価値も向上できる」(藤井氏)と、デジタル化による利点を強調します。デジタルを駆使してサプライチェーンを見直すことで、伝統的な店舗の魅力を損なわない“小売DX”も可能になると指摘しました。

 藤井氏は、社会課題解決には「共助」や「共創」の理解を深めるべきだと続けます。「社会課題を軸に企業同士が協調できる領域を見定めるべきだ。解決可能なアセットを理解し、それを『オープン』な形で具現化することが大切だ。企業同士のこうした取り組みにより、社会や人々に提供できる価値を最大化できる。さらには協調により、コスト効率の高い仕組みを作れるはずだ」(藤井氏)と、企業と企業が連携する「共助」や「共創」を前向きに検討すべきと訴えます。さらに、「そのためには企業の垣根を超え、共通のビジョンを見据えることが大切だ。このとき、『このテクノロジを使う』や『よい自社製品・サービスを生み出す』といったビジョンではなく、よりよい生活シーンを描くことが重要だ。例えば、標準化した仕組みを活用したサービスを展開すれば、類似サービスごとに使い方や操作方法が異なるといった利用者の不便さを解消できる。消費者が使いやすければサービスも広く浸透するという姿勢で共創し、社会の課題に向き合ってほしい」(藤井氏)とまとめました。
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