第1部の講演には、カインズ代表取締役社長の高家正行氏が登壇。「カインズ変革の取り組み」と題し、自社で進めるデジタル戦略を解説しました。高家氏は冒頭、今後の事業について「新型コロナウイルス感染症がまん延する中、当社は2020年度の売上が4854億円と、対前年比10%の成長を遂げた。しかし、大型店舗を展開する当社にとって、今後5年、10年と同様のビジネスが成り立つとは考えていない」と指摘しました。
そこでカインズではコロナまん延前の2019年に、中期経営計画でデジタルの活用を想定したビジョンを打ち出しています。「『Project Kindness』と名付けた中期経営計画を打ち出した。DXではないが、会社全体を変革させる『CX(コーポレート・トランスフォーメーション)』という取り組みを柱にする。成長下だからこそ、新たな戦略によって事業を加速させたいと考えた」と言います。具体的には、新たな顧客体験を創造するSBU戦略、エモーショナルな体験を創造するデジタル戦略、店舗の在り方を見直す空間戦略を推進します。
中でもデジタル戦略は、店舗空間とデジタル空間の融合や顧客ごとに合った提案などを目的とし、これらを成し得るための体制構築も進めます。「ITやデジタルに積極的に投資する。中期経営計画では3年で100億から150億円を投入することを宣言し、現在計画通りに進めている。2年前にはほぼいなかったデジタル人材も100人体制にした」(高家氏)と実績を強調します。店舗で働く従業員とデジタル人材の働き方が異なることを考慮し、勤務形態やオフィスも見直すなどして、デジタル人材が働きやすい環境整備にも目を向けます。
今後はデジタル化の波を店舗運営に積極的に生かすことを視野に入れます。「デジタルを活用したサービスやマーケティング施策を取り入れた新業態の店舗を立ち上げた。デジタルをより効果的に活用することに主眼を置いた」(高家氏)と言います。デジタルによる変革を、いかに店舗にフィードバックするかを模索したいとまとめました。