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日本でも機運高まるインフルエンサーマーケティング、信頼される情報発信が効果を高めるカギに

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デジタルシフトウェーブは2024年5月8日、定例のDX経営セミナーを開催しました。今回のテーマは「『ヒト軸マーケティング』の未来~事業再分化によりインフルエンサーもAI化?~」。ネットで絶大な影響力を持つインフルエンサーを使ったマーケティング施策について、その効果や課題、さらにはAIがインフルエンサーに置き換わる可能性について議論しました。

SNSを中心に情報発信するインフルエンサー。その発言は個人としての感想にとどまらず、消費者の購買行動にさえ影響を与える力を持っています。そこで、自社製品やサービスを訴求する手段としてインフルエンサーを活用する企業も徐々に増えつつあります。

では、企業がインフルエンサーを使ったマーケティングを展開する上で起こりうる課題とは。インフルエンサーを使えばどれほどの効果を見込めるのか。さらには海外でのインフルエンサーの立ち位置とは…。

今回のセミナーでは、インフルエンサーを活用したマーケティングのあり方について解説しました。ゲストにC Channel 代表取締役社長の森川亮氏を招き、同社のインフルエンサーマーケティングの取り組みも紹介しました。インフルエンサーを利用するメリット、海外のインフルエンサーを活用した動き、インフルエンサーをAIに置き換える利点と課題に触れました。

海外で勢い増すインフルエンサーマーケティングの可能性に目を向けよ

ゲストとして登壇した森川氏は、前職でLINEの社長を務めたことで知られています。ちなみにさらにその前は、日本テレビで12年間、メディア関連の仕事に携わっていたといいます。当初はエンジニアとして、視聴率の分析システムや選挙予測システムなど、データ関連の業務に関わっていました。その後、ネイバーの日本進出やLINEの立ち上げに参画しています。

現在は9年前に設立したC Channelの代表として会社経営に乗り出しています。メディア事業を中心にアジア8ヵ国に事業展開した実績を持ち、今回のセミナーでは昨今注目のインフルエンサー事業について解説しました。

海外におけるメディア事業とは、具体的にメイクアップやヘアアレンジ、料理などを紹介する縦長の動画を展開しています。森川氏は縦長動画に注力した経緯について、「2010年から数年間は、縦長の動画がSNSで大流行した時期だった。これを機にアジアに進出した。当時はさらに、メディアの影響力が著しく低下している時期で、代わって個人が発信する情報の影響力が急速に膨らんでいた。そこでメディア事業も次第にインフルエンサーに焦点を当てるようになっていった」(森川氏)と、事業の経緯を振り返ります。C Channelは現在、「レモンスクエア」というプラットフォームを軸に事業を展開。日本に2万6000人、インドネシアに6万人ものインフルエンサーを抱え、ビジネスを強化しているといいます。

インフルエンサーが影響力を持つようになった背景にも言及します。「テレビからインターネットへの移行が進み、消費者のマインドセットが大きく変化した。さらに、これまではモノを所有することが幸せと考えられ、ブランドの価値が高かったが、現在は所有よりもモノを使ってどんな経験をするのかの重要性が増している」(森川氏)と考察。さらに、「SNSが普及したことで、周囲からの評価が重視される時代に突入した。その結果、大きな影響力を持つようになったのが、SNSを主戦場するインフルエンサーである。中でも先進国やSNSが普及する国では、『人消費』と呼ぶ現象が起こっている。個人の意見や専門家の推薦を参考に商品を購入する消費傾向だ。この動きがインフルエンサーの影響をさらに高めている」(森川氏)と指摘します。

なお、インフルエンサー市場は急速に成長し、中国では1000万人ものインフルエンサーが活躍しているといいます。日本でも約800万人のインフルエンサーが存在し、「日本でも今後、インフルエンサーは増加すると予想する。これにより、インフルエンサーマーケティングがテレビ広告市場を超える可能性も十分ある」(森川氏)と強調します。

そんな中、C Channelはインフルエンサーマーケティング領域の中でも、「中間地点に位置するミドルインフルエンサーにも注力する」(森川氏)といいます。ミドルインフルエンサーは一般の消費者に近い存在で、いわゆる口コミマーケティングにおいて重要な役割を果たしているといいます。「ミドルインフルエンサーの口コミは、必ずしも直接的な売り上げに直結するわけではない。しかし、商品やサービスの信頼や評価を高めるだけの影響力を十分持つ。商品購入時には他の消費者の意見や体験が重要視されることから、ミドルインフルエンサーの役割、さらに影響力は大きい。ブランドの信頼性を高める上で見逃せない存在となっている」(森川氏)と、ミドルインフルエンサーに目を向けるべきと訴えます。

一方、中国ではソーシャルコマース市場が急成長し、その市場規模は日本の10倍以上に達するといいます。中でも大きな注目を集めるのがライブコマースです。中国はもとより韓国や台湾、さらにはインドネシア、ベトナムでも急速に普及している市場でとなっています。もっとも、「日本に限ればライブコマースは遅れている。他国と比べると、ライブコマースは十分浸透しているとは言い難い状況だ。しかし、この市場を無視すべきではない。今後は若者を中心に普及する可能性は大いにある。今後のライブコマース市場の推移を見守るべきである」(森川氏)と強調しました。

さらに森川氏は、注目すべきサービスとして「共同購入サービス」にも目を向けるべきと訴えます。「日本はもちろん、世界各国で共同購入サービスを利用する動きが見られる。とりわけ動きがあるのがアプリだ。アプリを前提に共同購入するケースが目立つ。共同購入の場合、消費者同士が集まって商品を購入するため、価格が通常より安くなる特性がある。中国ではアリババなどの大企業が運営するサービスが市場を席捲しており、共同購入市場をけん引している。他国のこうした動きを踏まえると、日本のインフルエンサーマーケティングの可能性はさらに高まるのではと推察する」(森川氏)といいます。なお、中国ではインフルエンサーやライブコマースを展開する事業者がブランドを買収する動きも見られ、こうした構図の変化も日本を含む他国で起こる可能性があるといいます。

大きな期待が寄せられるインフルエンサーマーケティングですが、森川氏は課題についても言及します。「インフルエンサーが増えれば増えるほど、どのインフルエンサーを選ぶべきかという問題が浮かび上がる。たとえフォロワー数が多くても、そのフォロワーが商品のコンセプトなどに合致しているとは必ずしも言えない。具体的には、女性向け商品を紹介するインフルエンサーなのに男性フォロワーが多いというケースだ。フォロワーが多いかどうかではなく、商品との相性を見極めなければならない。さらに、インフルエンサーの紹介した商品の売上効果をどう分析するかも課題だ。リーチ数や視聴回数から購買につながったケースを把握するのは難しい。購買にいたったケースをどう可視化するかも大きな課題だ」(森川氏)と指摘します。そのほか、インフルエンサーマーケティングは規制が厳しく、もちろん炎上リスクも根強く残ります。そんな中で「インフルエンサーはファンをどう獲得するか、どう成長するかに取り組まなければならない」(森川氏)といいます。

ではインフルエンサーマーケティングを効果的に展開するには何が必要か。森川氏は同社の「レモンスクエア」のようなプラットフォームを活用することを提起します。「レモンスクエア」はインフルエンサーと企業をマッチングさせるサービスで、とりわけInstagramとTikTokで活躍するインフルエンサーとのマッチング機能に特化しているといいます。「インフルエンサーのカテゴリやフォロワーの属性、過去の投稿による影響などを可視化できる。これらを考慮した上で、最適なマッチングを実現できるのが強みだ。企業はSNS上で闇雲にインフルエンサーを探すのではなく、データに基づく最適なインフルエンサーとマッチングできる仕組みを活用するのが望ましい」(森川氏)と強調します。なお、「レモンスクエア」ではインフルエンサーが投稿した写真素材などを、企業の製品・サービスの訴求に役立てることも可能です。「実際にインフルエンサーが製品などを利用することで、広告のような嫌らしさを感じさせない効果を見込める。これによりコンバージョン率も高められる」(森川氏)といいます。

将来的にはインフルエンサーマーケティングでAIが重要な役割を果たすようになると、森川氏は続けます。「他の業界や業種でAIが使われ出しているように、インフルエンサーマーケティングでもいよいよAIが活用され始めると考える。ただし、AIに完全に舵を切るとは考えにくい。人が信頼する情報は、AIが生成したものだけになるとは考えられない。そこには人の経験や感覚など、人にしか伝わらない情報もある。AIが台頭したときこそ、人らしさが見直されるのではないか」(森川氏)と指摘します。なお、中国ではAIが生成したコンテンツを使ってライブコマースを実施するケースが見られるといいます。「もっともすべてAIでマーケティングを展開しても、消費者には不気味な印象を与えかねない。かえって信頼を低下させる可能性すらある。企業はソーシャルマーケティングを展開するなら、AIに頼り切りになるのではなく人とのバランスに配慮すべきだ。消費者から信頼される情報をどのように効率よく提供するか。この考えを常に持った活動に注力することが大事である」(森川氏)と強調しました。

セミナーでは森川氏の講演に続き、デジタルシフトウェーブ代表取締役社長の鈴木康弘氏と森川氏の対談も実施した
当日のセミナーの様子を動画で公開しています。ぜひご覧ください
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