セミナー前半は、浜田氏が(株)キタムラの現状を紹介しました。(株)キタムラと言えば全国展開する「カメラのキタムラ」が有名だが、その数は現在、637店舗に及びます。その一方で、写真スタジオやアップル製品の修理を受け付けるサービスなども展開し、カメラ販売や店舗運営で培ったノウハウを軸に事業を多角化させています。
創業から88年。カメラ市場の成長とともに事業を拡大してきた同社ですが、デジタルカメラやスマートフォンといったデジタル化の波に直面し、そのたびに事業も見直してきました。
オムニチャネル戦略も、そんな見直し策の1つです。同社は1999年、インターネット事業に乗り出したのを皮切りに、翌2000年にはプリントサービスを開始。2004年にはECの促進を目的とする専門子会社を設立するなどの積極策に打って出ます。しかし、当初はさまざまな課題を抱えていたと浜田氏は振り返ります。「今ではありえないが、店舗で取り扱うカメラの販売価格と、ネットの販売価格が異なることがあった。顧客からの問い合わせやクレームも少なくなかった。先駆けて打ち出したネット事業だが、必ずしも順調ではなかった」(浜田氏)と言います。
さらに同氏は続けます。「店舗担当者とEC担当者が手柄を取り合う状況も好ましくなかった。当社では 中古カメラを買い取って販売するリユース事業を展開している。ある店舗で買い取ったカメラが、ECサイトや別店舗で売れるケースは少なくない。このときの利益は買い取り店舗に大半を配分すべきか、販売したECサイトや別店舗に配分すべきかなどの問題も顕在化した。些細なことだが、リアルとネットを融合するための体制や制度も不十分だった」(浜田氏) と、オムニチャネル戦略の足かせとなる課題が山積していたと続けます。