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セミナー

フィルムカメラからデジタルカメラへの大転換をオムニチャネルで乗り切る、キタムラが断行した事業再編の極意とは?

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日本オムニチャネル協会は2022年1月18日、DXマガジンと共催セミナーを開催しました。今回のテーマは「キタムラが考えるオムニチャネル戦略とは」。同協会のアドバイザーで、株式会社キタムラの代表取締役社長である浜田宏幸氏が、同社のオムニチャネル戦略やデジタルを活用する必要性について講演しました。

ネットとリアル融合をリセットし、ゼロから再編

 セミナー前半は、浜田氏が(株)キタムラの現状を紹介しました。(株)キタムラと言えば全国展開する「カメラのキタムラ」が有名だが、その数は現在、637店舗に及びます。その一方で、写真スタジオやアップル製品の修理を受け付けるサービスなども展開し、カメラ販売や店舗運営で培ったノウハウを軸に事業を多角化させています。
創業から88年。カメラ市場の成長とともに事業を拡大してきた同社ですが、デジタルカメラやスマートフォンといったデジタル化の波に直面し、そのたびに事業も見直してきました。
オムニチャネル戦略も、そんな見直し策の1つです。同社は1999年、インターネット事業に乗り出したのを皮切りに、翌2000年にはプリントサービスを開始。2004年にはECの促進を目的とする専門子会社を設立するなどの積極策に打って出ます。しかし、当初はさまざまな課題を抱えていたと浜田氏は振り返ります。「今ではありえないが、店舗で取り扱うカメラの販売価格と、ネットの販売価格が異なることがあった。顧客からの問い合わせやクレームも少なくなかった。先駆けて打ち出したネット事業だが、必ずしも順調ではなかった」(浜田氏)と言います。
写真:一般社団法人日本オムニチャネル協会 アドバイザー...

写真:一般社団法人日本オムニチャネル協会 アドバイザー 株式会社キタムラ・ホールディングス 常務執行役員 株式会社キタムラ 代表取締役社長 浜田宏幸氏

 さらに同氏は続けます。「店舗担当者とEC担当者が手柄を取り合う状況も好ましくなかった。当社では 中古カメラを買い取って販売するリユース事業を展開している。ある店舗で買い取ったカメラが、ECサイトや別店舗で売れるケースは少なくない。このときの利益は買い取り店舗に大半を配分すべきか、販売したECサイトや別店舗に配分すべきかなどの問題も顕在化した。些細なことだが、リアルとネットを融合するための体制や制度も不十分だった」(浜田氏) と、オムニチャネル戦略の足かせとなる課題が山積していたと続けます。
 そこで同社は大胆な策に打って出ます。これまで積み上げてきたオムニチャネル戦略を一度リセット。2012年にEC専門子会社を(株)キタムラに吸収統合し、EC事業部を新たに発足します。「EC事業が店舗主体の(株)キタムラの事業と融合できなかったのは否めない。カメラのキタムラの価値を引き上げられるEC事業の確立を目指した」(浜田氏)と、事業再編の狙いを説明します。
再編を機に、これまで別々のサイトで運営していたネットプリント、ネット中古、ネットショップなどの事業をモール化。ECサイトやシステムの一本化に乗り出します。さらにはEC事業として何を目指すのか。その指標も明確に打ち出します。「EC事業で何より重視すべきは、ECが関与する売上の最大化。EC事業部としての売上や利益よりも重視すべきと判断した。EC関与売上が全社売上の半分を超えることを目指した。EC事業部は宅配の売上で黒字化していればいいという指標を設けた」(浜田氏)と言います。
一方、リアルとECを組み合わせた事業展開は、ネットが苦手な顧客の不安を募らせかねません。そこで、「ネットを見ても、どのカメラを買えばいいのか分からない」「カメラを簡単に購入できたとしても使い方は聞かないと分からない」といった声に答える体制づくりも進めます。「全国に店舗を構えるのが当社の強みだ。豊富な専門知識を持つ店員も店舗にいる。そこで一例だが、ネットで注文した商品を最寄りの店舗で受け取れるようにし、使い方を店員に相談しやすくした」(浜田氏) と言います。さらに、「店舗はネットと比べて品揃えが限られる。そこで、品揃えが十分なネットを店舗でも活用し、店員が最適な商品を豊富な品揃えの中から提案できるようにした。EC、店舗それぞれの弱点を、もう一方と組み合すことで強みに変えた」(浜田氏)とメリットを強調します。
店舗担当者とEC担当者が手柄を取り合う状況の改善にも乗り出します。これまで不明瞭だった買い取り店舗と販売店舗の利益分配ルールを設定。双方が納得するルールのもと、リユース事業を加速させられるようにしました。「最初から双方が納得する分配比率を提示できたわけではない。意見を聞きながら何度も比率を見直し、お互いに納得できる比率に落ち着くまで何年も費やした」(浜田氏)と、試行錯誤しながら体制づくりも進めました。
さらにはAIを活用したカメラの買い取り査定も開始。店舗に設置するタブレットでカメラを撮影すると、AIが機種と査定額を提示できるようにしました。「カメラの査定は、専門知識や経験が求められる。そのため、全店舗でカメラを買い取りできないのが課題だった。AI導入により全店での買い取りを可能にした」(浜田氏)と言います。こうした体制強化を図った結果、リユース事業は拡大。1996年は2億円だった売上高が、2021年には100億円を超える規模にまで成長します。
現在は次の一手として、ネットとリアルを融合した写真のビジネスモデルを模索します。2019年には、(株)キタムラグループ6社と、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)(CCC)の(株)CCCフォトライフラボグループ5社の持株会社として(株)キタムラ・ホールディングスを発足。この発足について浜田氏は、「インターネット事業に強みを持つCCCフォトライフラボグループと連携し、写真文化を育むインフラ構築や関連サービスの提供を目指す。当社は『写真で人生を豊かにする』というビジョンを掲げている。幸せの瞬間を刻む『写真』を使ってどんな新しいビジネスモデルを描けるか。消費者のフォトライフを追求したい」と意気込みます。

ネットの楽しみや顧客との良好な関係継続こそ重要

 セミナーの後半では、日本オムニチャネル協会 会長の鈴木康弘氏と浜田氏が対談。「デジタルを活用したお客様の幸せの拡大」というテーマで意見を交わしました。
鈴木氏は冒頭、浜田氏が話した「フォトライフ」について言及。「デジタル化を機に、カメラのシャッターを気軽に切れるようになった。スマートフォンを使ってすぐ撮影できるのも便利。面白い写真をSNSで共有できる環境も写真の利用を爆破的に増やした。フォトライフは多くの可能性を秘める」と指摘します。
写真:一般社団法人日本オムニチャネル協会 会長 DXマ...

写真:一般社団法人日本オムニチャネル協会 会長 DXマガジン 総編集長 株式会社デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長 鈴木康弘氏

 これに対し浜田氏は、動画がこれからのフォトライフの一翼を担うと指摘します。「カメラの利用目的が変わりつつある。これまでは写真撮影の一択だったが、最近は動画を撮影するニーズが増えた。消費者がカメラを使って何をしたいのか。こうした動向を探ることが新たなサービス創出につながる」と、動画を楽しむ消費者向けのビジネスも見据えます。こうした動きに呼応するように、同社では社員向けの動画コンテストも実施します。応募作品の中から入賞作品を選び、社内で共有して動画への関心を高められるようにします。「動画をどう撮影すればいいのか、動画に文字をどう挿入するか、どう編集するかなどの撮影テクニックを従業員自身が体験して学ぶことで、来店者にアドバイスできるようになる。コンテストを通じてスマートフォンやカメラの新たな楽しみ方を探りたい」と、浜田氏は考えます。
一方、ネットと店舗を融合するオムニチャネルについて浜田氏は、「利用者がネットと店舗を選択利用できる環境を用意するのは重要だ。ただし気を付けるべきは、便利さを追求するだけでは利用者は満足しないということ。そこにプラスして楽しさもなければいけない。店舗では衝動買いなどの楽しさを味わえる。ネットでも同様の楽しみを提案できるようにすべきだ」と指摘します。
さらに浜田氏は、キタムラの根底にあるのは、創業から変わらない「顧客起点」だと続けます。「顧客との関係はモノを売って終わりではない。買ったときから付き合いがスタートすると考える。商売は二の次で、何より優先すべきは親切や信用だ」と強調します。こうした企業風土を醸成するには、従業員が明るく朗らかで、のびのびと仕事ができる環境も大事だと言います。「明るさや朗らかさといった従業員の思いは顧客に必ず伝わる。オムニチャネル化に舵を切った今でも、その思いが事業の根底にある」との思いを打ち明けます。
最後に鈴木氏は、DXを進めるために必要な考え方や、経営者としての役割を浜田氏に聞きました。この質問に対し浜田氏は、「経営者の役割の1つは、DX推進担当者の背中を押すこと。さらには、DXを進めることで自社がどう変わるのかを明示することも役割だ。DXは手段であって目的ではない。デジタル化が目的になってしまう事例を聞くが、経営者はDXで何を改善するのか、どんな課題を解決するのか、何を良くするのかといった目標を従業員に伝えるべきだ。誰が喜ぶのかをシンプルな言葉で伝えるのも大事な役割だ」と答えます。
その上で経営者は、DX推進担当者の業務に口を出さずに「好きにやれ」と促すだけでいいと浜田氏は述べます。「経営者は実現したい目標やビジョンをDX推進担当者に分かりやすく説明すればいい。あとは資金を用意し、どう進めるべきかの具体策を自分たちで考えさせるべきだ。ただし、期間を区切り、のんびりと取り組ませないようにすることを忘れてはならない」と指摘します。
鈴木氏もこの考えに同意します。「多くの経営者が『好きにやれ』と言えない。取り組み内容に口を挟んだり、高額なコンサル料を支払って外部に相談したりするケースが後を絶たない。大事なのは、自分で考えること。どんな取り組みが効果的か、有効か、従業員や消費者が喜ぶのかを考える想像力がDXには不可欠だ」(鈴木氏)と続けます。
さらに鈴木氏は浜田氏の講演内容を受け、「(株)キタムラのオムニチャネル戦略や顧客起点の考え方は、業界を問わずDXのヒントになりうるものだ。カメラ業界のフィルムからデジタルへといった大転換は、すべての業界で起こりうると認識しなければならない。そのとき自社は、大転換期をどう乗り切るか。その答えを、DXを推進することで見つけてほしい」とまとめました。
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