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連載

心理ロイヤルティを構造化する6つの法則 その1【ファンをつくる「顧客ロイヤルティ」の極意 Vol.6】

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精神論に陥りやすいファンづくり活動。この取り組みを科学的な活動へと昇華させるには、心理ロイヤルティの見える化が不可欠です。では、心理ロイヤルティをどう分解し、構造化すべきか。心理ロイヤルティを構造化する上で必要な6つの法則を、2回にわたって解説します。なお、本連載はリックテレコム『ファンをつくる顧客体験の科学「顧客ロイヤルティ」丸わかり読本』の内容をもとに編集しております。

<法則1>心理ロイヤルティ(ロイヤルティスコア)は、複数のロイヤルティドライバーの満足から形成される:ドライバー満足度

心理ロイヤルティの定義は前回の連載で紹介した通り、「ブランドや商品に対して信頼や愛着をもって末永く関係行動し続けたいと思う気持ち」です。心理ロイヤルティを構造化するには、気持ちを左右する要素をまず明確にしなければなりません。

この要素の1つとなるのが満足体験です。ブランドや商品を手にしたときに満足したのかが心理ロイヤルティを形成するのです。つまり、どれだけ満足したのか、どれだけ不満足だったのかが心理ロイヤルティの度合いを決定します。

この度合いを調べる上で、私はお客様一人ひとりの満足度を測る単位を「ロイヤルティドライバー」と命名しました。例えば、「私はこの商品のデザインが大好きで、ずっと買い続けたい」と思う人の場合、ロイヤルティドライバーの1つである「商品デザイン」の満足度が高いと解釈できます。「店員の接客が気にいっているので、この店にずっと通いたい」と思う人の場合、ロイヤルティドライバーの1つである「店員の接客」の満足度が高いと解釈できます。このように、心理ロイヤルティにはさまざまなロイヤルティドライバーが関与します。満足度の高いロイヤルティドライバーが多ければ心理ロイヤルティが高くなる一方、満足度の低いロイヤルティドライバーが多ければ心理ロイヤルティは低くなります。

心理ロイヤルティの度合いを調べるには、ロイヤルティドライバーの満足度(ドライバー満足度)を集計し、さらにドライバーごとにスコア化することが必要です。

ちなみに、セミナーやプレゼンテーションで、ロイヤルティの重要性を強調する説明を聞くことがありますが、このとき「これからは顧客満足向上活動ではなく、ロイヤルティ向上活動です」という発言には注意が必要です。なぜなら、ロイヤルティは顧客満足とは異なるレイヤーに位置するからです。多くの顧客満足活動がロイヤルティを支えており、顧客満足活動が不要になるなんてことはあり得ません。ロイヤルティ向上活動とは、具体的には各ロイヤルティドライバーの満足度を向上させる活動だと自覚することが大切です。

次に満足度を測る単位となる「ロイヤルティドライバー」を分解します。ロイヤルティドライバーは、「基本価値ドライバー」と「体験価値ドライバー」に分類されます(図6-1)。

図6-1:ロイヤルティドライバー

「基本価値ドライバー」は、商品やサービスの核となる価値を指します。例えば小売業なら品揃えや商品機能、デザイン、店舗の立地などが該当します。SaaS事業ならソフトウエアの品質、機能性、カスタマイズ性などが該当します。

「体験価値ドライバー」は、お客様とのタッチポイントで提供される価値を指します。例えば小売業なら、店舗ディスプレイや接客、EC サイトの提供コンテンツ、検索機能などが該当します。SaaS 事業ならチャットを通じたテクニカルサポート、FAQ、ユーザーコミュニティなどが該当します。

心理ロイヤルティを紐解く上で重要なのは、後者の「体験価値ドライバー」です。本連載の第2回でマーケティングのパラダイムシフトについて触れたように、Marketing3.0 以降の焦点は顧客体験です。つまり、「体験価値ドライバー」を心理ロイヤルティ上での強みとすることが重要な戦略になります。商品中心の事業から顧客体験中心の事業への転換が求められている現在、「体験価値ドライバー」の強みを可視化することが大切です。

なお、「体験価値ドライバー」はさまざまなカテゴリに分類できます。一般的には、カスタマージャーニープロセスごとにカテゴリ分けすることで、理解しやすくなります。ただし、業種や企業ごとにドライバーを定義する必要があります。

<法則2>ロイヤルティドライバーの満足は、ドライバーごとに心理ロイヤルティへの影響度が異なる:ドライバー琴線感度

心理ロイヤルティを向上させるには、各ロイヤルティドライバーが高く満足している状態であることが必要です。しかし、ロイヤルティドライバーごとに心理ロイヤルティへの影響度合いは異なる点には注意すべきです。

例えば、アパレルの店舗で「店内のディスプレイ閲覧」と「試着」という2つのロイヤルティドライバーを比較したとします。どちらとも同じ高い満足を提供したとしても、心理ロイヤルティへの影響度合いが高いのは「試着」です。ディスプレイを見て素敵だと感じた体験よりも、試着時の接客で良い体験をした方が、ずっとこの先もこの店に通い続けたいと思う気持ちが高まるからです。<法則1>に基づけば、店内ディスプレイ閲覧と試着とも心理ロイヤルティを高める要因になりますが、試着の満足度を高める方が、心理ロイヤルティをより高められるというわけです。

この影響度合いはお客様ごとに異なります。影響度合いを定量化するには、ロイヤルティドライバーごとに度合いを算出し、影響度合いを「ドライバー琴線感度」としてスコア化します。

<法則1>と<法則2>から、心理ロイヤルティの度合いは、各ドライバーの満足度(ドライバー満足度)と、各ドライバーの高い満足度が心理ロイヤルティに与える影響度合い(ドライバー琴線感度)の掛け算で決まるという解釈になります(図6-2)。ロイヤルティドライバーは満足度と琴線感度を定量化することで、心理ロイヤルティ向上のための施策を検討できます。

図6-2:心理ロイヤルティとロイヤルティドライバーの関係

<法則3>ロイヤルティドライバーは、お客様ごとに体験しているドライバーと体験していないドライバーがある:ドライバー体験率

ロイヤルティドライバーの中には、すべてのお客様が体験しているものがあれば、限られたお客様しか体験していないものもあります。アパレルの小売業の場合、来店したお客様は「店内のディスプレイ閲覧」をすべての人が体験します。しかし、「試着」はすべてのお客様が体験するとは限りません。つまり、お客様によっては「試着」というロイヤルティドライバーが心理ロイヤルティと無関係な存在になるわけです。もしアンケートの満足度を調べるなら、試着をしていないお客様は「試着」というロイヤルティドライバー満足度を評価することはできません。

したがって、各ロイヤルティドライバーはお客様の「ドライバー体験率」を定量化する必要があります。体験率が低いロイヤルティドライバーは、量的視点で全体の心理ロイヤルティへの影響度合いが低くなります。

今回は、心理ロイヤルティを高めるときに目を向ける、3つの「法則」を紹介しました。次回は残りの3つの法則、構造化の三階層目の顧客体験に関する2つの法則と、顧客セグメントに関する法則について解説します。

著者プロフィール

渡部 弘毅 (わたなべ ひろき)
ISラボ 代表 〈www.is-lab.org
一般社団法人 地域マーケティング経営推進協議会 理事

日本ユニシス(現 BIPROGY)、日本IBM、日本テレネットを経て、2012年にISラボ設立。一貫してCRM分野の営業、商品企画、事業企画、戦略・業務改革コンサルティングに携わる。現在は心理ロイヤルティマネジメントのコンサルティングを中心に活動。お客様の心理ロイヤルティアセスメントに関する独自の方法論を提唱し、ファンづくりの科学的かつ実践的なコンサルティング手法を展開する。業界団体や学術団体での研究活動、啓蒙活動にも積極的に取り組む。

〈著書〉
ファンをつくる顧客体験の科学 「顧客ロイヤルティ」丸わかり読本/リックテレコム(2023/11)
お客様の心をつかむ 心理ロイヤルティマーケティング/翔泳社( 2019/12)
営業変革 しくみを変えるとこんなに売れる/メディアセレクト( 2005/1)

本連載は、リックテレコム刊行の『ファンをつくる顧客体験の科学 「顧客ロイヤルティ」丸わかり読本』の内容を一部編集したものです。

ファンをつくる顧客体験の科学 「顧客ロイヤルティ」丸わかり読本

出版社:リックテレコム
発売:2023年11月27日

<内容紹介>
多くの企業は「ファンづくり」の重要性を認めているものの、日常は「購買者づくり」のマネジメントに終始しています。これはファンづくりの科学的なマネジメントができていないからです。本書では、顧客ロイヤルティの定義からはじまり、構造化、定量化、分析、考察するロイヤルティアセスメント手法を、事例を交えながら解説しています。ファンづくりを、「思いのマネジメント」から「科学的なマネジメント」に変革するための知見が凝縮しています。

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