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新たな価値創出には「仮説・検証」が不可欠、仮説力を養う5つの方法とは 【鈴木敏文のCX(顧客体験)入門 Vol.8】

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お客様が望む商品は何か。どうすれば喜んでくれるのか。その答えを導くには「仮説」と「検証」を繰り返すしかありません。では、仮説を立てる力(仮説力)はどうすれば養えるのか。ここでは、「セブン‐イレブン・ジャパン」を創設したセブン&アイ・ホールディングス名誉顧問の鈴木敏文氏の著書「鈴木敏文のCX(顧客体験)入門」の内容をもとに、仮説力を養う5つの方法を紹介します。

問題意識を常に持つ

 セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問 鈴木敏文氏の経営学の真髄は「仮説・検証」に基づく仕事術です。顧客の心理を読んで行動を予測し、どんな体験を望むかを考える。その上で仮説を立てて実行し、結果を検証するといった取り組みの上に成り立っています。実際にセブン-イレブンで展開する「セブンプレミアム」の質への追求も「金の食パン」の開発も、鈴木敏文氏の仮説から出発しています。  こうした仮説を生み出す力を「仮説力」と呼びます。では、仮説力を身に付けるにはどうすればよいのでしょうか。鈴木氏は著書「鈴木敏文のCX(顧客体験)入門」の中で、次のように述べています。
重要なのは、「お客様の立場で」自分の中にもある買い手としての心理に目を向け、お客様の心理を読み、潜在的ニーズの仮説を立てていくことです。
via プレジデント社「鈴木敏文のCX(顧客体験)入門」
 仮説を立てるにあたり、最新のマーケティング理論や特別なスキル、能力は必要ないのです。仮説を立てようと思うかどうか。この姿勢が大切だと鈴木氏は指摘します。  「物事に対し疑問を持つこと」も大切だといいます。世間で言われていることを真に受けず、「本当にそうなのか」と問題意識を持つべきです。自ら物事を掘り下げて考える習慣を身に付けることで、物事の本質を見抜く理解力を養えます。本質を見抜ければ、「こうすればどうか」「こんなことができないか」といった仮説が浮かんでくるようになるのです。

先行情報を見つけて意味と価値を見出す

 仮説を立てるときに役立つのが先行情報です。例えばセブン-イレブンの場合、商品発注時には明日の天気、地元の学校の行事や催事などといった先行情報をもとに顧客の心理を読み取ります。こうしたさまざまな情報を使って売れ筋を予測することが発注に役立ちます。  もっとも、多くの情報を取得するだけでは必ずしも役立ちません。鈴木氏は著書の中で、先行情報の役割を次のようにとらえています。
お客様の心理に潜む、お客様も気づいていないような潜在的ニーズを察知し、新しい商品を見つけたり、生み出すための情報です。(中略)大切なのは、「明日のお客様は何を求めるだろうか」と考え続ける強い問題意識です。常に問題意識や目的意識をもって仕事に取り組んでいけば、さりげない情報にも価値づけができるようになります。
via プレジデント社「鈴木敏文のCX(顧客体験)入門」
 とはいえ、鈴木氏は意識して情報を収集しているわけではありません。新聞や本を読んだり、ラジオを聞いたり、人と話したりする中で、「これは」と思う情報が引っかかってくると言います。それが、何かを考える際のとっかかりになると言います。例えば若い人であれば、芸能ニュースなどへの関心は高いはず。関心が高ければ高いほど、いろいろな情報が引っかかり、こうした情報が仕事に役立ってくるのです。  このとき大切なのは、情報の「意味」を見出すことです。情報に価値づけをし、自分の仕事と結びつけられるようにします。たくさんの情報を知っていたとしても、情報に価値づけできればければ情報力に優れているとは言えません。
一見、無関係と思える情報にこそ新しい価値がある。フックの多い人は何気ないものごともその意味合いを見抜いて、先行情報にすることができます。常に新しいものを生み出そうと挑戦する意欲や問題意識こそが情報力を支えるのです。
via プレジデント社「鈴木敏文のCX(顧客体験)入門」
 過去の経験や常識、思い込みなどの固定観念があると、何もフックされないと鈴木氏は述べています。

ミクロとマクロの両視点を持つ

 では、情報に意味を見出し、価値をつけるにはどんな姿勢や取り組みが必要か。お客様の立場を意識するとともに、「ミクロとマクロ」、つまり木と森の両方に目を配ることが大切です。  例えばコンビニエンスストアにおける商品発注なら、担当者は商品だけ見ていればいいわけではありません。商品(ミクロ)とともに、ミクロを通してお客様の傾向や地域の特性、トレンドなどのマクロを把握することが欠かせません。売場全体でどんな品揃えにすべきかを考え、それを商品(ミクロ)に落とし込むべきだと鈴木氏は指摘します。ミクロとマクロの関係を意識しなければ、お客様の期待には応えられないといいます。木を見て森を知るとともに、森を知り、その中にどんな木があるべきかを考えることが大切です。  鈴木氏は著書の中で、こうした視点を養うことが仮説を立てるときに役立つと言います。
ミクロの向こうにマクロのトレンドを見るには、「この現象は何を意味するのか」とクエスチョンを発し、「これはこういうことではないか」と仮説を立てることです。 一度、仮説を立てると、それを検証する情報が次々とフックにかかり、次第に確信になり、一歩先の未来の可能性を迷わず判断できるようになります。
via プレジデント社「鈴木敏文のCX(顧客体験)入門」

客観的な“もう一人の自分”の視点を持つ

 「お客様の立場」は誰もがなれます。仕事から一歩離れれば、誰もが買い手の立場になれるからです。この視点を見失わず、普通の生活感覚で考えれば、お客様の心理を読み取ることはできます。  鈴木氏もヨーカ堂に入社以来、管理部門を担当し、販売や営業、商品開発といった部署に在籍したことはありませんでした。しかしそれでも、新たな発想や事業、商品・サービスを発案できたのは、鈴木氏自身が客の心理を持ち、買い手として普通の生活感覚を持っていたからだといいます。  まずは「こんなものがあったらいいな」と思うことからヒントを得て、お客様の潜在的なニーズを探ることから始めます。その上で、こうしたニーズに応えるための仮説を立てます。仮説は、お客様の中にあると同時に「自分」の中にもあるのです。  自分を客観的に見つめる視点を持ち合わせることも大切だと鈴木氏は言います。著書の中では、「もう一人の自分」が自分を見ることの大切さを訴えています。
仕事をしていると、会社の都合で考えてしまう。そのような立場の使い分けをせず、常に普通の生活感覚を忘れず、生活者の視点で発想し、その発想を「もう一人の自分」から客観的にとらえて、意味は価値を見出していく。そこから仮説は生まれます。
via プレジデント社「鈴木敏文のCX(顧客体験)入門」
 ポイントは、思い込みを持たないこと。さらに頭の中を白紙の状態に置くこと。「もう一人の自分」の視点を持ち、自分を捉え直す習慣を身に付けることが、仮説力を養う上で役立ちます。

過去にとらわれない素人の発想を持つ

 「自分はプロだ」と思い込まず、素人の発想を重視することも大切です。素人の発想とは、「自分がお客だったら、こうあってほしい」という潜在的な願望から湧き上がる発想です。  プロだと思い込んでいる人は、過去に成功した方法を知っていることが素人との違いだと思い込みがちです。こうした思い込みが、過去の経験を否定的にとらえられにくくします。その結果、新しいことに挑戦することがなかなかできなくなるのです。  つまり、過去の経験や既存の概念に染まらない素人の発想を大切にする姿勢が極めて大切です。こうした発想を持ち合わす人が、新しい価値を生み出せるようになるのです。幅広い視点で仮説を立てられるようにもなるのです。

DXマガジン総編集長 鈴木康弘の提言「事例を模倣するだけでは何も生まれない」

 「競合店を見ても何にもならない。自分の頭で考えることが大切だ」。私がセブン&アイ ホールディングス在籍中、鈴木敏文氏はこう言い続けていました。多くの人は何か新しいことを始めるとき、事例を探し始めます。さらには、データから何かを得ようとします。しかし、この2つに共通しているのは「過去」のことであり、根拠を他者に求めようとする行為です。仮説を立てるときには、自分でマーケットや顧客の心理を感じ、自分の頭で考えることが何より大切です。  DXにおいても同じです。日本企業のDXは今、迷走しています。その理由は、欧米の事例を模倣しようとしたり、コンサル会社やシステム会社に戦略を考えさせたりしてしまうからです。戦略はビジネスにおける仮説に他なりません。自らが将来のマーケットを想像し、自分の頭で会社の進むべき方向を考えていくことが大切なのです。
via DXマガジン総編集長 鈴木康弘
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