前回は紙メディアのデジタルシフト化の雑誌広告編の話をしましたが、月刊雑誌の隔月刊化を実行しデジタルのオンラインにシフトすることで、広告面の収益が大幅に改善されただけでなく、編集面でも大きくコンテンツが改善されました。毎月、紙を刊行していた紙ベースの時は、紙の記事コンテンツをオンラインに転載することが中心で、オンライン上での記事は新鮮さに欠けてました。紙ベースの時は雑誌発売の3ヶ月前に企画決定→発売2ヶ月前に取材→1ヶ月前〜2週間前に校了締め切り→雑誌発売→約1ヶ月後にオンライン掲載なので、オンラインに記事を掲載するタイミングでは季節も変わり古臭い時期外れ的な記事に見えてしまいます。
しかし、紙を隔月刊発行に変えてからはオンラインのコンテンツの中から反響のある記事を紙の雑誌にまとめて、記事の補足部分は深掘り取材編集して紙掲載するようになりました。つまり紙は保存版的な役割で、即時性の記事はオンラインで掲載し、記事の新鮮味と循環性を出しました。紙→デジタルの流れをデジタル→紙の流れに変えることで、紙は保存素材、オンラインは新鮮素材という分担と特色を出しました。これで、俄然リアルタイムに読者のニーズを反映でき、オンラインでも雑誌でも常に新鮮なコンテンツを展開できるようになりました。月刊を隔月刊にして、2ヶ月おきの刊行になることで、記事の即時性や新鮮さが薄れると思い込んでいましたが、それも過去の固定観念で、全くもって逆でした。
逆も然りで、紙の雑誌と組み合わせたことで、デジタルコンテンツも生きてくると思います。デジタルコンテンツで旬や人気度合いをマーケティング調査して、紙の雑誌で深掘りして濃いファンを獲得する。濃いファンのデータベースは財産になりますが、デジタルコンテンツだけではなかなか獲得できません。つまり紙のデジタルシフトとは、全てアナログを捨ててオールデジタルにすることではなく、アナログとデジタルを融合させることで、アナログの良さも見直して、それを活用することだと思います。それによってデジタルコンテンツもより魅力的になりブランディングできます。紙がなくても成り立つビジネスを構築できても、アナログな紙を減らしはしますが、絶対に無くさない理由がここにあるのです。このブランディングによって、さらに商品開発やイベントなどコンテンツを立体化していけるのだと思います。
大久保清彦(Kiyohiko Okubo)
雑誌LEON、OCEANSなどを企画創刊し創刊副編集長、創刊編集長を経て、セブン&アイ出版常務執行役員の後、独立。 現在は家族の幸せやSDGsなどをコンセプトに掲げるMADUROなどの雑誌とオンラインを率いるRRデジタルメディア代表取締役としてご活動中。 SNSやデジタルメディアを活用し、「地域、企業、組織の編集力」を高め、「伝える力」をつけるためのソリューションを追求中。