新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、消費者の「デジタル化」が加速しています。企業はそんな中でも消費者を正しく理解し、消費者のニーズを満たす製品・サービスを提供することが求められます。では、デジタル化によって見えにくくなった消費者の行動をどう把握し、事業や利益拡大に結実させるのか。このとき考える指標の1つが、顧客起点で売り上げや利益を拡大させる「顧客勘定」です。【DX時代に求められる“顧客勘定マーケティング”を極めよ 第3回】は、筆者が「顧客勘定」の必要性を考えるようになったきっかけを紹介します。なお、本連載は日経BPマーケティング「売り上げを倍増させる“顧客勘定”マーケティング “赤字顧客”を黒字に変える実践手法」の内容をもとに編集しております。
今回は、筆者がなぜマーケティングに興味を持つようになったのか。顧客起点である「顧客勘定」の必要性を感じるようになったのかをお話しします。
前回(第2回)の記事で触れた通り、筆者が某百貨店に就職したのは1980年代後半です。私が大学生だったころは、「全く」と言っていいほどビジネスに関心はなく、実は本気で脚本家、映画監督を目指していました。今になって分かったことですが、脚本家や映画監督、またはその道のプロであり続けるためには、ビジネスの知識が当然不可欠です。当時はそんなことも知らず、就職試験で某大手映画会社の最終面接に落ちました。日本映画について批判的な考えを話してしまったのが不採用の原因だと自己分析していますが、業界を取り巻くビジネスそのものを理解していなかったことも原因の1つだったと思います。
そこで「泣く泣く」入社したのが某百貨店でした。某百貨店では当時、さまざまな文化事業を手掛けており、「文化事業に携わりたい」と思っていました。脚本を書くという仕事に少しでも近い業務に携わりたい。そんな思いを抱きながら、映画会社に入れなかった悔しい気持ちを紛らわせていました。
ところが、入社してから分かったことが。文化事業は、自社の社員とほぼ無縁の人たちが進めている仕事だったのです。筆者が文化事業に関われる可能性は皆無でした。当時の業務は激務で、脚本を書くための時間など捻出ではないことも分かったのです。
入社後も興味をなかなか持てなかった「小売」ですが、日々の仕事を通じて、商品を売るために「マーケティング」という考え方と手法があることを次第に理解するようになりました。優秀な先輩の姿を見たり、話しを聞いたりするうちに「なるほど。この商品を仕入れて売るには、こんなことまで考えているんだ! やっているんだ! 知らなかった!」という出来事が数々起こりました。筆者にとって「知らなかったことを知るようになってきた」わけです。このころから「あ! マーケティングって面白いかも」と思い始めるようになりました。
「人を理解して、その人が望む以上の価値を提供して、Win-Winな関係を構築する」。これも、マーケティングの定義の1つであると筆者は考えます。まずは「人を理解する」ことが大事です。前回(第2回)の記事で伝えた通り、1980年代後半から1990年代後半にかけては「人を理解する」ための材料があまりに不足した時期でした。そのため、「人を理解すること」に異常な渇望感を持っていました。そんな中、登場したのが「FSP(Frequent Shoppers Program)」です。
社員なら、「権限さえあれば誰でもFSPを使える」という状態になったのです。しかしながら、データを使いこなすには、次の点を実行することが必要でした。
・データを行動に結びつく「情報」に変換すること、
・「情報」を、「思考」と「行動」に変えること
・「思考」と「行動」にチェック、アクションを加えること 後者の2つを粘り強くやるかやらないかで、使いこなせるかの勝負は決まります。筆者の場合、会社がFSPをいち早く導入したことで、データを活用するチャンスを与えられたことが大きな転機となりました。データに基づく具体的なアクション立案は地道かつ粘り強く取り組むことが大切です。そんな環境を会社が提供してくれたことが、マーケティングに没頭するきっかけになったと思います。 そもそも筆者が脚本家や映画監督になりたかったのは、「人を感動させる仕事がしたい」という思いからでした。しかし、百貨店という小売業に携わっていく中、「マーケティングにも人を感動させる力があるのではないか」。そう考えるようになりました。そんな思いが徐々に強くなると、仕事がさらに楽しくなっていくのを感じました。 当時は、「顧客起点経営を追求していこう」「“顧客勘定マーケティング”を追求していこう」と、具体的に言語化できたわけではありませんが、今振り返ると、顧客起点のマーケティングの重要性を認識したのは、こうしたきっかけが多分に影響しているのではと思います。
・「情報」を、「思考」と「行動」に変えること
・「思考」と「行動」にチェック、アクションを加えること 後者の2つを粘り強くやるかやらないかで、使いこなせるかの勝負は決まります。筆者の場合、会社がFSPをいち早く導入したことで、データを活用するチャンスを与えられたことが大きな転機となりました。データに基づく具体的なアクション立案は地道かつ粘り強く取り組むことが大切です。そんな環境を会社が提供してくれたことが、マーケティングに没頭するきっかけになったと思います。 そもそも筆者が脚本家や映画監督になりたかったのは、「人を感動させる仕事がしたい」という思いからでした。しかし、百貨店という小売業に携わっていく中、「マーケティングにも人を感動させる力があるのではないか」。そう考えるようになりました。そんな思いが徐々に強くなると、仕事がさらに楽しくなっていくのを感じました。 当時は、「顧客起点経営を追求していこう」「“顧客勘定マーケティング”を追求していこう」と、具体的に言語化できたわけではありませんが、今振り返ると、顧客起点のマーケティングの重要性を認識したのは、こうしたきっかけが多分に影響しているのではと思います。
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本連載は、日経BPマーケティング刊行の「売り上げを倍増させる“顧客勘定”マーケティング “赤字顧客”を黒字に変える実践手法」の内容をもとに、筆者が一部編集したものです。
日経BPマーケティング「売り上げを倍増させる“顧客勘定”マーケティング “赤字顧客”を黒字に変える実践手法」
本連載は、日経BPマーケティング刊行の「売り上げを倍増させる“顧客勘定”マーケティング “赤字顧客”を黒字に変える実践手法」の内容をもとに、筆者が一部編集したものです。
日経BPマーケティング「売り上げを倍増させる“顧客勘定”マーケティング “赤字顧客”を黒字に変える実践手法」
筆者プロフィール
前田徹哉
慶應義塾大学文学部卒業後、西武百貨店(現そごう・西武)入社。その後PwCコンサルタント(現日本IBM)にて主にB2C領域のマーケティング戦略立案などのコンサルティングに従事した後、スクウェア・エニックスに入社。オンライン事業部長としてECやコミュニティを統括。2011年10月にタワーレコード入社、オンライン事業本部 本部長としてECの統括の任に従事。2019年4月にビービットに入社。SaaSセールスのシニアマネジャーを経て、2021年1月より「QuizKnock」を運営する株式会社batonに参画、マーケティング部 部長。中小企業診断士。