Smartpayは2022年4月12日、後払い決済サービス「Smartpay」の記者向け発表会を開催しました。EC事業者向けの研修プログラムを無償提供することを打ち出したほか、ひろゆき氏がSmartpayの株主兼ブランドアンバサダーになることを発表しました。日本市場で攻勢をかけ、ECサイトでの後払い決済サービス定着を図ります。
クレジット可、手数料無料などが強みの後払い決済サービス
「いいものなに、売れないなんて。もったいない。」こんなキャッチフレーズを打ち出し、EC事業者の課題解決を図るのが後払い決済サービス「Smartpay」です。これは、商品などの購入代金を分割で後払いするEC事業者向けサービス。特徴はクレジットカードを使って後払いできる点で、「後払い決済サービスは国内ですでに出回っているが、それらは現金しか使えず、分割もできない。クレジットカードを利用し、かつ分割で後払いできる決済サービスはSmartpayが国内初だ」(Smartpay 日本カントリーマネージャーの大坪直哉氏)と強調します。
手数料がかからないのも特徴です。競合となる他の後払い決済サービスは現金支払い時、条件によって手数料が発生します。支払いが遅れたときの延滞損害金や追加手数料も発生します。しかしSmartpayは手数料や延滞料はかかりません。「Smartpayを多くの人に使ってもらいたい。そんな思いを優先し、手数料などを受け取らないビジネスモデルに舵を切った。手数料や延滞料がかからないのはもちろん、Smartpayの利便性を訴求することで、EC業界での普及を目指す」(大坪氏)と意気込みます。なお同社は、Smartpayを導入するEC事業者などからSmartpay決済料の2%を受け取るビジネスモデルを展開します。
一方、分割回数を自由に選択することはできません。分割回数は3回、返済期間は8週間で固定します。例えば6万円の商品を購入した場合、購入者は購入日、4週間後、8週間後に代金を3分割した額(2万円)を支払います。もっとも、「2022年後半には分割回数を増やすプランを提供する予定だ。高額商品でも一度に支払う額をさらに抑えることで、消費者の購入までのハードルを下げられるようにする」(大坪氏)と言います。
なお同社によると、ECサイトで商品を一度カートに入れたのち、購入せずに離脱する「カゴ落ち」率は日本の場合85~89%だと言います。米国の77%より高く、世界的に見ても日本のカゴ落ち率は高いそうです。大坪氏は、EC事業者のこうした課題を解決する手段としてSmartpayが有効だと指摘します。「Smartpay導入により、ECサイトで買い物が完了する割合(コンバージョン)が10%向上することを当社はコミットする。さらに平均受注額の5%増加も見込む。60%増加した実績もある。そのため、値引きして商品価値を引き下げるような販促施策を打たずに済む。日本ではオンラインだとモノが売れないなんてことを聞くが、Smartpayの導入がECサイトの集客やコンバージョン率改善、リピート顧客育成などの施策成功を後押しする」(大坪氏)と、メリットを強調します。
サービスは2022年2月から本格的に提供開始し、国内ですでに約50社の導入実績があります。大坪氏は、「新型コロナウイルス感染症のまん延を機にECの増加に拍車がかかっている。実店舗を運営する事業者がEC事業を本格化するケースも目立つ。事業者のこうした変革を後押しする手段としてSmartpayの利用を加速させたい」と今後を見据えます。
EC事業者向けに100万円相当の教育プログラムを無償提供
同社は発表会で、ECサイトの売上アップを見込むEC事業者向けの支援策も新たに発表しました。それが「ECグロースアカデミー」です。これは、ECサイトのコンバージョン率を向上させるための教育プログラム。動画を使って解説を聞いたり演習に答えたりするオンライン講義で、約60分の動画3本で構成します。
「コンバージョン」「トラフィック」「リピート」の3本で構成します。「コンバージョン」は、カゴ落ちを減らし、コンバージョンをアップさせる方法を学ぶプログラム。ECサイト訪問者を購入者に変える仕掛けづくりなどを学びます。「トラフィック」は、ECサイトに質の高いトラフィックを作り、売上増加につなげるための施策を学びます。「リピート」は、リピーターを育てるテクニックを学びます。顧客エンゲージメントとロイヤルティを生み出す関係や、見込み顧客を特定し、その顧客を惹きつけるプログラム構築方法などを学びます。3本ともオンラインで視聴できるため、何度でも繰り返して受講できます。
「ECグロースアカデミー」最大の特徴は、受講料が無料である点。集客できない、売上アップできないなどの課題を抱えるEC事業者なら誰でも無償で教育プログラムを受けられます。「ECのノウハウやテクニックを習得するプログラムは有償であるケースが少なくない。しかし当社は、約100万円相当の教育プログラムを無償提供する。これにより、国内EC事業者のECビジネススキル向上に貢献していきたい」(大坪氏)と言います。同社は今後、3年間で5億円を投資し、EC事業者のノウハウ習得を支援していく考えです。なお発表会では教育プログラムの一環として、ECサイトのコンバージョン率を一番引き上げた参加者に1000万円を授与する「業績アップコンペ」を実施することも発表しました。
next〈 2 / 2 〉:発表会にはひろゆき氏がサプライズ登壇!
ひろゆき氏がSmartpayの株主として価値を訴求
発表会では、同社とパートナーシップを結ぶ各社と大坪氏との対談も実施しました。最初の対談者として登壇したのが、匿名掲示板「2ちゃんねる」開設者である西村博之(ひろゆき)氏。当日は同氏がSmartpayの株主兼ブランドアンバサダーになることも発表され、Smartpayに注目する理由もひろゆき氏の口から明かされました。ひろゆき氏はSmartpayの株主になった理由を、「普通だったら失敗するビジネス。しかしそこが面白い。手数料や延滞料を受け取らないという発想は性善説で成り立つビジネスモデル。他社が突き進めないビジネスに取り組むことこそ価値があると判断した」と説明します。
ひろゆき氏が在住するフランスのEC事業にも言及します。「フランスではAmazonや楽天を使うケースは必ずしも多くない。多くの事業者が自前のECサイトを構築する。Amazonなどを介して商品を販売すると、類似商品で安価なものが選ばれてしまう。そこで価格を下げて対抗しようものなら自社商品のブランド価値を棄損しかねない。多くの事業者が自社で作るモノに自信を持ち、こうした考えが根付いている」(ひろゆき氏)と言います。さらに、「自前のECサイトなら顧客と直接つながれるのも大きなメリット。顧客と密につながるビジネスモデルを描くことができれば、ビジネスは楽になる」(ひろゆき氏)と続けました。
対談には日本オムニチャネル協会の鈴木康弘会長も登壇。国内のDXの現状について大坪氏と対談しました。鈴木氏は小売事業者のDXの理解度について、「DXの『D(デジタル)』は、日本が遅れているとは思わない。むしろデジタルを積極的に活用しようとする姿勢を感じる。問題は『X(トランスフォーメーション)』だ。どう変革すべきか分からないという企業は多い。変革とデジタルを結び付けられないケースが目立つ」と指摘します。
こうした状況を脱却するには、「教育に目を向けるべきだ」(鈴木氏)と続けます。「デジタルをどう変革に活用するか、最新テクノロジはどんな課題解決に役立つのかなど、デジタルを結び付ける思考を養うべきだ。そのためにはDX推進に必要なスキルをしっかり勉強し、自社や業界を俯瞰する視点を持つことが欠かせない」(鈴木氏)と強調します。ECグロースアカデミーについても、「EC事業者にとって教育の一助となるもの。無償で提供するとのことでぜひ活用してほしい」(鈴木氏)と訴えます。同氏はECグロースアカデミーを実際に受講しており、「自分のスキルやノウハウを確認するという点でも有効なプログラムだ。所々に設問を用意しており、飽きずに動画を視聴できる」(鈴木氏)と感想を述べました。
最後に登壇したのは、三井住友銀行青山支店法人営業部部長の上田孝典氏。新型コロナウイルス感染症のまん延を機に変化した消費行動について大坪氏と対談しました。上田氏は「コロナを機に人、モノ、お金の流れが大きく変わった。中でもECサイトを利用する人が一気に増えた。この商流はコロナが落ち着いた後も変わらない」と推察します。一方、昨今のウクライナ情勢や原油高、物価高騰などの影響についても言及します。「買い控えする傾向が一層強まると思われるが、必ずしもそうではない。例えば高級材を求める消費者は一定の割合でいる。コロナで溜め込んだ消費マインドを発散する傾向が見られる」(上田氏)と分析します。
仕事柄、事業や経営についてアドバイスすることの多い上田氏。大坪氏から小売事業者へのアドバイスを求められると、「変化が激しい時代だからこそ柔軟な対応が欠かせない。成長する企業を見ると、新たなイノベーションを創出するケースが目立つ。新たな考え方や新たなテクノロジを活用する柔軟な視点を持ち合わせることが大切だ。こうした取り組みにより新たな付加価値を創出してほしい。消費者が購入に対してシビアになる中、付加価値を訴求して消費者の購入マインドを醸成していってほしい」(上田氏)とまとめました。
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https://smartpay.co/
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