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インタビュー

商品の魅力を分かりやすく伝える、加速する消費者のデジタル化に追随する体制の早期構築を目指す~日本オムニチャネル協会 商品分科会リーダーに聞く

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オムニチャネルの振興を主たる事業とする日本オムニチャネル協会。「商品」「売場」「販促」「CS」「物流」「管理」の6つの分科会を活動主体とし、会合を定期的に開催するなどして現場の課題解決に取り組みます。ここでは「商品」分科会のリーダーである齊藤孝浩氏に、活動内容や主な課題、今後の取り組みなどを聞きました。

―商品分科会の主なテーマ、活動内容を教えてください。
顧客が商品の購入を検討するときに必要な「情報」をどう用意すべきか。商品分科会では特にこのテーマを中心に議論しています。実店舗では顧客は実際に商品を手に取ることができ、商品を見ながら購入を検討できる。しかしオムニチャネルが進むと、商品の購入先は実店舗だけではなくECサイトも含まれる。このとき顧客は、実店舗のように商品を手に取ることはできません。商品に関する情報を参考にして購入するかどうかを決めることになります。つまり、この情報が顧客にとって分かりやすく、商品の魅力を伝えられるものであるかどうかが重要です。
例えば、商品情報として、ECサイトに写真を1点掲載するだけでは魅力も伝わらないでしょう。大きさや色などの定型情報を並べても参考にならないかもしれません。顧客はどんな情報を求めているのかを考え、オムニチャネル時代にふさわしい商品価値を訴求することが小売業には求められるのです。
もっとも商品情報は、商品の仕入れ担当者や開発担当者が把握しているに違いありません。商品の魅力も誰より理解しているかもしれません。しかし多くの企業が、商品を管理・登録するデータベースに、商品の魅力を伝える情報を登録することはありません。在庫管理や販売管理を目的とした情報しか登録していません。そこで、現在利用するシステムを見直すことも分科会では議論しています。オムニチャネル化を進めるときの商品データベースの在り方、もしくは商品の魅力を情報として管理するソリューションも検討しています。
EC担当者が商品を1つずつチェックして魅力を文章化するといった作業は負荷がかかるし、何より商品の魅力を十分把握しきれない。商品に関する情報を集約し、EC担当者や実店舗のスタッフが情報を参照できる体制、環境づくりを進めることが、商品分科会の主な活動内容です。
写真:日本オムニチャネル協会 商品分科会リーダー 齊藤...

写真:日本オムニチャネル協会 商品分科会リーダー 齊藤孝浩氏

―オムニチャネルを目指すにあたり、分科会ではどんな課題を議論しているのでしょうか。
まずは顧客のニーズを明確にすることから取り組んでいます。ニーズに対して小売り企業の現実はこうである、と双方の現状を言語化することから始めました。2021年の上期は、双方のギャップを明確にし、どのように埋めるのかを考えることを中心に議論しています。
特に新型コロナウイルス感染症の影響により、消費者のデジタル化が一層加速しています。これに対し、店舗を展開する企業のデジタル化は十分進んでいない。消費者ニーズと小売店の取り組みの差は開く一方です。こうした現実を受け止め、危機感を持つことも大事だと考えます。商品の魅力を伝える「情報」の内容、開示方法は今なお不十分です。コロナを機に消費者の購買行動が変化する中、企業は喫緊の課題としてニーズの追随、情報の整備に乗り出すべきだと考えています。
消費者の購買行動の変化として、店内でもスマートフォンを利用するケースが増えていることが挙げられます。これまでは自宅などの店舗外でスマートフォンを利用するのが一般的でした。しかし、店頭で商品を見つつ、他店の価格を調べたり、SNSで商品の評判をチェックしたりし、あらゆる情報を総合させて判断する購買行動が目立つようになりました。もし、企業が独自に商品の魅力を伝える情報を顧客に提供できないならば、価格や評判を調べるための購買行動を支援する取り組みにも目を向けなければいけないと思います。つまり、参考となるWebサイトやSNSにアクセスしやすくする環境を企業として構築することも検討すべきではないでしょうか。例えばアパレルの場合、InstagramやWEARに服のコーディネート写真を投稿する人は少なくありません。こうした写真が服を購入する決め手になり得るなら、単品だけでなく、参考となるコーディネートを参照しやすくする工夫や仕掛けも必要でしょう。必要な施策、ソリューションも含めて議論を深めるべきだと考えます。
―課題に対し、分科会ではどんな解決策を模索していますか?
「商品情報」として何を用意すべきか。どんな項目をデータベースに登録すべきかを議論し、それを実現するソリューションを具現化することを検討しています。2021年上期に議論した内容をもとに、下期はベンダーに積極的に参加してもらい、ソリューションの要件を固められればと考えます。販売管理システムの商品マスターだけでは不十分な情報を社内、社外、ウェブ上から集めて、消費者の購入検討、比較、判断に役立つようなオムニチャネル時代にふさわしいデータベースの設計の在り方を模索しています。
サプライチェーンを構成する企業間のデータ連携も解決策として検討します。例えばメーカーの商品を小売店が扱う場合、商品情報はメーカーが保有しています。小売店が販売する際、メーカー保有の情報を小売店が自由に扱えるようにすることで、商品の魅力を顧客に伝えやすくなる。しかし、取り扱う商品の種類によっては、メーカーと小売店の情報連携が不十分なケースが散見されます。もちろんメーカーが小売店に情報を提供することもあるが、オムニチャネル化を想定し、情報の内容も含めて提供体制を見直すことも大切だと思います。
―商品分科会の今後の予定、目指すべきビジョンを教えてください。
商品の「情報」を整備、活用するためにはデータマネジメントの考え方が重要です。アクセスしやすいソリューションを導入するのはもとより、データの項目や品番などをメーカーや卸売業者、小売業者で統一することも視野に入れなければなりません。そこで分科会として、データを整備、統一するためのガイドラインを設けることも考えています。オムニチャネル時代のデータは「こうあるべき」という姿を提言できればと思います。
もちろん「あるべき姿」は理想にすぎないかもしれません。さらに企業によっては「不利益を被る」「主導権を競合企業に奪われる」などの思惑が働き、業界にとって適切な提言をできないかもしれません。しかし、商品分科会に参加する企業は、自社の都合に関係なく、あくまでも消費者目線で、小売業界にとって最良となる選択肢を模索してくれると信じています。実際、多くの参加企業が企業という垣根を取り払い、忖度のない意見を出し合っています。こうした姿勢、取り組みこそが商品分科会の目指すべきビジョンにつながるのではと考えます。オムニチャネル化したときに商品の魅力や使い勝手を消費者にきちんと訴求できるか。参加者が真剣に話し合える環境こそ、商品分科会の価値だと思います。
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