日本銀行と関係府省庁は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の検討を制度設計段階へと進めています。これまでの実証実験を踏まえ、今後は法制度や運用ルール、データ管理の枠組みなど、実装に向けた土台づくりが中心となる見通しです。一方で、政府・日銀ともに「発行ありきではない」とする慎重な姿勢を繰り返し示しており、発行時期は依然として明確ではありません。
2021年以降、日本銀行はCBDCの概念実証を段階的に進め、基盤システムの処理性能や障害耐性、個人認証や資金移転の流れなどを検証してきました。2024年度からは、関係府省庁と日銀による連絡会議が設置され、制度面での具体的な検討が始まっています。金融機関との役割分担、利用者保護、個人情報の取り扱いとプライバシー確保といった論点が中心となります。
海外では、欧州や英国など先進国がCBDCの導入に向けた準備を進めており、新興国では金融包摂を目的に実用化する例もみられます。しかし先進国では、既存の決済インフラが整備されていることから、新通貨の導入は社会的・技術的な検討を丁寧に進める必要があります。日本も例外ではなく、既存のキャッシュレス決済サービスが普及している状況を踏まえ「共存」が重要テーマとなっています。
議論の焦点となるのは、法制度、リスク管理、マネーロンダリング対策、プライバシー保護、そして企業・金融機関の実務負担などです。国内の金融・ITインフラは高度に発達している一方、国民の現金利用志向も根強いため、新しい通貨の設計には信頼性と利便性のバランスが求められます。特に、利用者の取引データをどこまで中央銀行や金融機関が持つのかという点は、社会的な議論が進むとみられます。
また、デジタルウォレットや本人確認(KYC)といった周辺技術も重要です。CBDCは単なるデジタルマネーではなく、認証やデータ管理と密接に関わる社会インフラとなる可能性があります。技術的には一定の準備が進む一方、プライバシー保護技術などは今後さらに成熟が必要と指摘されています。
政府と日銀は「必要な準備を進め、発行の是非を最終的に判断する」としています。発行条件としては、社会の理解、法制度の整備、安全性の確認、そして民間決済サービスとの役割整理が挙げられています。つまり、CBDCは目前の施策というより、未来の金融基盤を巡る重要な政策検討の段階にあると言えます。
今後は、政府の経済政策文書や日銀の研究会報告、関係省庁の制度設計議論などが節目となり、方向性が徐々に明らかになっていく見通しです。金融政策、決済インフラ、デジタル社会基盤を横断するテーマであるため、国民的な議論と理解が求められる段階に差しかかっています。日本の金融インフラの未来を左右するデジタル円の検討は、引き続き注目されます。






















