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国内市場成熟化を背景に加速する越境ビジネス、成功させるポイントを徹底解説

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日本オムニチャネル協会は2025年11月19日、DXシステムセミナーを開催しました。テーマは「なぜ海外市場で“売れない”のか? 越境ビジネスの落とし穴と突破口」。越境ビジネスを新たな商機ととらえる動きが加速する中、事業化する上での注意点や売れるための方策などを解説しました。

本セミナーでは、越境ビジネス不発の要因が「商品」や「システム」ではなく、各国に合った「顧客体験」や「ブランド発信」にあるという前提のもと、越境ビジネスを成功させるための具体的なソリューションを紹介しました。企業のマーケティング事業を支援するGDX 代表取締役CEOの洞田潤氏と、越境ECプラットフォーム「global-e」を提供するGlobal-e Japan VP Salesの神吉真由氏がゲストとして登壇。現場で得たリアルな知見と成功の鍵を共有し、日本ブランドが世界で売れるために今なすべきことを深掘りしました。

越境市場の現状と「売れない」壁の正体、認知度の不足と法規制の複雑性

セミナーの冒頭では、海外EC市場の現状と、日本の商品が売れない理由を考察しました。そもそも越境ECと言っても、中国、東南アジア、欧米系では、それぞれ市場規模や進出難易度、攻略法が大きく異なります。例えば、中国は2023年時点で9875億ドルと市場は非常に大きいものの、国産企業のブランド力や国の規制が強く、進出には苦戦を強いられるエリアです。一方、東南アジア(2023年時点で1390億ドル)は伸び盛りであり、日本へのイメージも良いため、ビジネスチャンスがあるとされます。欧米系も市場規模は大きいものの、日本ブランドの足場が少ないのが現状です。

進出方法も多様で、自社ECを構えるか、モール(中国では天猫(Tmall)、東南アジアではShopeeやLazada、欧米系ではeBayやAmazonなど)に出展するかで難易度が大きく変わってきます。

こうした前提を踏まえ、日本企業が海外市場で「売れない」要因にも言及。ゲストとして登壇した洞田氏は、「そもそも商品が知られていない、認知度がないといった根本的な要因が大きい」と指摘します。日本国内で人気があっても、現地での認知度は予想以上に低く、まずは徹底的な市場調査が必要だと強調します。一方の神吉氏は、「ブランドの認知があっても、公式ストアで買えることが認知されていないケースは少なくない」と指摘。公式サイト経由で購入可能なことをしっかり訴求するのも重要だと強調しました。

GDX 代表取締役CEO 洞田潤氏

法規制や税務の複雑さにも注意すべきと両氏は訴えます。海外のストアで商品を購入した際、配達時に高額な関税を請求され、利用者が驚いてしまい、受け取り拒否や返品につながるケースが多発します。神吉氏は、この顧客体験を損なう事態を避けるため、グローバルECサイトでは関税や税金を決済時に徴収する「DDP(Delivered Duty Paid)」を推奨していると説明しました。関税などが後で請求される「DDU(Delivered Duty Unpaid)」では、顧客満足度が下がり、返品リスクが増大すると指摘します。

国ごとの納税問題も大きな壁だといいます。アメリカでは45州に売上税が存在し、州ごとに売上の敷居や税率が異なるため、一社で全ての納税義務に対応するのは極めて困難です。さらに、成分表示や規制についても、国によって個人輸入できない商品が存在するため、「各国規制に従った販売を自動的に制御する仕組みが必要不可欠である」(洞田氏)と指摘しました。

成功への突破口、長期戦略とスモールサクセスの積み重ね

越境ビジネスの課題を乗り越えるための具体的なソリューションと成功事例も紹介されました。Global-eは、EC公式ストアからの海外販売に特化したソリューションで、世界で1400社以上の企業に利用されています。神吉氏が説明したその核となるソリューションは、「Merchant of Record(MoR)」という販売者代行スキームです。

このスキームでは、Global-eが販売者として越境EC販売に入り込み、世界中の様々な通貨で商品を販売・回収します。国内事業者には、回収した売上を国内のB2B取引として戻す形をとるため、事業者は国際取引に付随する複雑な法規制や税務対応から解放されます。具体的には、ヨーロッパのIOSS対応やアメリカ45州の売上税対応、さらに国際配送に必要な通関書類の作成までもGlobal-eが代行し、事業者の負荷を大幅に軽減します。

Global-e Japan VP Sales 神吉真由氏

さらに、Global-eは150以上の決済方法を提供。欧米では半数以上が利用するクレジットカード以外の現地決済手段にも対応しています。また、不正決済の取り締まりやチャージバックへの対応も代行することで、安全で安定した越境EC運用を可能にします。神吉氏は、「Global-eのサービスは、システムを提供するだけにとどまらない。運用まで含めてトータルで顧客の越境ビジネスをサポートする」と、その特徴を強調しました。

GDXとセレブリティマーケティングによる市場開拓

GDXは、オムニチャネルをデジタルで加速させるサポートを提供し、世界5カ国7拠点でグローバルに事業を展開しています。洞田氏は、「日本のブランドが苦手とする自己主張を補うため、積極的にマーケティングを代行し、市場を切り開いている」と同社の強みを訴求します。

洞田氏が特に有効性を強調したのが、セレブリティやインフルエンサーを活用したマーケティングです。これはブランドのポジショニングを消費者に伝える上で、「コストパフォーマンスにもっとも優れている」(洞田氏)と強調。実際にGlobal-eと連携して行ったプロジェクトでは、認知度の低いメキシコ市場に集中してマーケティング施策を実施した結果、「売上増という形で明確な効果があった。コストと手間をかけた分だけのリターンを十分得られる」(洞田氏)と指摘します。なお、このときの施策は広告だけでなく、現地のメディアバイイングやセレブリティの起用など、ローカルに合わせた戦略を徹底的に打ち出していったといいます。

成功へのロードマップ、スモールサクセスの追求

越境ビジネスに踏み出そうと検討している企業に、成功のポイントも解説しました。洞田氏は、開始するにあたって「コストをかけずにクイックに実施できることから始めるべき」と、低予算で短期に実施することを推奨しました。具体的には以下の手順で進めるのが望ましいと指摘しました。

1.インバウンド対策からスタート…日本国内のインバウンド客の属性データを収集・分析。旅行中は消費者の購買熱量が高まっているため、彼らの購入を促す施策や、帰国後も越境ECで購入できるよう導線を整える。
2.マーケットプレイスでテスト…インバウンドで得られたデータに基づき、顧客が多い国のマーケットプレイス(東南アジアならショッピー、ラザダ、欧米ならAmazonなど)に出展し、小さく成功体験を積む。この段階では、広告を投下したり大胆な割引戦略を用いたりして、まずは認知度と実績を積むのが望ましい。
3.現地調査と自社サイトへの移行…マーケットプレイスで感触を掴んだ後、自社ECサイト(Global-eなどの活用)での本格展開を検討する前に、必ず現地でインタビューを実施し、現地の本音のニーズを確認する。
4.長期的な投資覚悟…越境ECで短期的な回収を期待すべきではない(GDXが立てる事業計画では、3年は赤字、5年で投資回収完了といったモデルが一般的)。長期的な視点を持ち、諦めずに時間と手間に投資し続けることが重要。

モデレータを務めた日本オムニチャネル協会 専務理事 林雅也氏

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日本オムニチャネル協会
https://omniassociation.com/

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