ドキュサイン・ジャパンは2024年10月10日、グローバルイベント「Docusign Momentum24 Tokyo」を開催しました。テーマは「攻めの『契約』でビジネスが変わる!」。契約を単なる手続きではなく、ビジネスを成長させるための戦略的なツールと位置付け、契約を起点としたビジネス変革の必要性を訴えました。
ドキュサインが描く「契約」の未来
イベントでは「攻めの契約」を実現するため、ドキュサイン・ジャパンとしてどんな支援を打ち出すのかに言及。イベント冒頭の基調講演に登壇したドキュサイン・ジャパン 取締役社長の竹内賢佑氏は、自社の今後の戦略やサービスの具体的なアップデート内容を紹介しました。
竹内氏は、「契約の目指す未来」と題したテーマで講演。契約業務の在り方を見直し、今こそ変革を起こすべきと聴衆に訴えました。「過去の歴史を振り返ると、創造してきた偉人には常に物語がある。創造を通して、世の中を大きく変えてきた。当社も20年前、『契約』という手続きを創造し、新たな契約の在り方を生み出した。それが電子署名だ。紙と手書きのサインといった従来の合意手段を、創造によって異なる方法に刷新した。私たちは今再び、契約のあり方を変革し、新しい時代を切り開こうとしている」(竹内氏)と訴えました。
竹内氏に続き、Docusign, Inc. President and General Manager, Growthのロバート・チャトワニ氏が登壇。同氏は聴衆に向け、「日本のビジネス環境は商習慣や社会に深く根付いている。紙の書類や印鑑を使い続けているのが最たる例だ。しかし今、DXの波が押し寄せている。この波に乗らなければ、企業は競争力を失いかねない。これまでの商習慣に固執せず、DXを推進して新たなビジネスや業務を構築すべきだ」と、DX推進の必要性を訴求しました。
さらに同氏は、契約時の一連のプロセス効率化の必要性も指摘。紙の無駄を削減し、生産性を向上させる手段に目を向けるべきと訴え、「日本の商習慣に合ったソリューションを使いこなすべきだ」(チャトワニ氏)と述べました。
AIが変える契約管理:Docusign IAMで契約書に眠る価値を解き放つ
Docusign,Inc.最高経営責任者(CEO)のアラン・ティゲセン氏もイベントに参加。同氏は契約時の課題を指摘し、契約の電子化に舵を切るべきと訴えます。「これまでの契約は、締結さえすればよいと考えられがちだった。しかし契約書には、重要な条項や、期間、更新日など、価値のあるデータが多く含まれる。多くの企業がこれらデータを活用していない。紙の書類に埋もれているのが現状だ。今後は契約書に書かれた情報を駆使することが、自社の競争力を引き上げる」(ティゲセン氏)と指摘します。
さらに同氏は、ドキュサインとデロイトが実施した調査を引き合いに、業務の無駄にも言及。「調査結果では、企業が契約書の作成に費やす時間は1年間で平均2万5000時間に及ぶ。契約書を保管するのに6000時間、分析するのに1万4000時間も費やしている」と指摘します。その上で同氏は、「多くの企業はなぜ、これほど無駄な時間を費やしているのか」と聴衆に疑問を投げかけ、無駄な時間を削減する手段を模索すべきと訴えました。
続けて、「契約に際し、今ではメールやクラウドを活用するのが常態化しつつあるが、それ以外は今なお古い商習慣に基づく方法で契約している。時間や機会を無駄にし、世界経済に300兆円もの損失をもたらしかねない。こうした状況を打破するため、契約管理の在り方を抜本的に見直さなければならない。AIなどのテクノロジーが台頭したことで、抜本的な改革が可能であることに気づき、取り組むべきである」(ティゲセン氏)と、ITを駆使した契約業務体制の構築を聴衆に呼びかけました。
では、ドキュサインとして、契約業務を支援するためにどんなソリューションを提供するのか。ティゲセン氏は契約の課題を解決する手段の1つとして、インテリジェント契約管理システム(IAM)の必要性を訴えます。イベントでは「Docusign IAM」を国内で本格的にローンチすることも発表しました。
「これまでの契約書の準備には、ドキュメント作成ツールでドラフトを作成し、メールを使って関係者とやり取りを重ねていた。最終的にはどれが最新版の契約書なのか誰も分からない状態になることも珍しくなかった。Docusign IAMではワークフロー機能を装備。事前作成済のテンプレートを使って必要な申請フローを容易に構築できる。ドラッグアンドドロップだけで、自社固有のワークフローを作成することが可能だ」(ティゲセン氏)と、Docusign IAMの利点を強調します。
さらにDocusign IAMでは、すべての関係者の承認プロセスを設計したり、署名前にオンラインで本人確認ステップを実行したりすることも可能。従来は手作業で実施していたコンプライアンス手順を効率化することができます。「従来の契約管理では、契約書をフォルダに保管し、いざ見返そうとするときにはどこにあるのか分からないという事態に陥りがちだった。目的の契約書を探し出すのに多大な労力を費やしていた。Docusign IAMを使えば、こうした無駄を一気に解消できる」(ティゲセン氏)といいます。
講演でティゲセン氏は、Docusign IAMの3つの特徴を聴衆に訴えました。
1.非構造化データを構造化データに変換
契約書の非構造化コンテンツを論理的に整理し、分析、レポーティング、検出を可能にする。
2.専門家の代替ではなく、専門家を支援
契約書の要約、交渉、プロセスを最適化し、いわば副操縦士のような体験を構築する。
3.契約を「生きた文書」に変換
膨大な契約書の中から、重要な用語や概念を的確に抽出し、それらの関係性を明らかにする。同時に、複数の契約書やビジネス成果との関連性も比較できるようにする。
ティゲセン氏はこれらの特徴を業務で活かすべきと指摘。「これからのビジネスはIAMなしでは成り立たない。Docusign IAMを駆使し、契約書をファイルキャビネットから開放してほしい。契約を新たな未来へと誘ってほしい」(ティゲセン氏)と聴衆に強く呼びかけました。
Docusign IAMを支える3つのプラットフォームサービス
イベントではDocusign, Inc. 最高製品責任者(CPO)のディミトリ・クラコフスキー氏も登壇。同氏はDocusign IAMのビジョンを実現するための3つの新しいプラットフォームサービスを発表しました。具体的には次の通りです。
Maestro
コードを記述せず、契約プロセスのすべてのステップを合理化するワークフロー・プラットフォームサービス。秘密保持契約(NDA)、販売契約、従業員オンボーディングなどのケースに対応した事前構築済みレシピを使用し、エンドツーエンドのワークフローの自動化を1ヵ所で設定できます。(2024年10月提供開始)
App Center
契約書や関連するデータやワークフローをMicrosoft、Google、Salesforce、SAPなどのビジネスアプリケーションと簡単に接続するプラットフォームサービス。データのサイロ化や、情報の不正確性、プロセスの分断を防ぎます。(2024年10月提供開始)
Navigator
AIを活用し、Docusignアカウント内のすべての契約、さらには他のシステムにある契約を自動的に取得、保存、分析する中央リポジトリ。締結済みの契約書を積極的に活用し、契約書からより多くの価値を引き出せるようにします。(2025年上旬リリース予定)
戦略的市場と位置付け、日本市場へのコミットメントを強化
ドキュサインでは日本を戦略的市場と位置付け、日本の顧客向けサービスのさらなる強化にも乗り出します。そのための具体的な取り組みもイベントで発表しました。取り組み内容は次の3点です。
1.国内データセンターの開設
2024年9月より、日本国内のデータセンターの稼働を開始。データの国内保存を可能にし、セキュリティ、プライバシー、法規制への準拠を強化することが可能です。
2.「ID Verification(本人確認ソリューション)」の提供
Liquidが提供するオンライン本人確認サービス「LIQUID eKYC」と、ドキュサインの本人確認ソリューションを連携。2025年4月下旬以降、日本の運転免許証を利用した本人確認が可能になります。これにより、より安全で信頼性の高い署名プロセスを実現します。
3.日本語版ユーザーコミュニティの始動
英語以外では初となる日本語版のユーザーコミュニティ「Docusign Community」を始動。ユーザー同士が知識やノウハウを共有したり、質問し合ったりすることで、ユーザー間のコミュニケーションが活発化し、製品を最大限活用できるようになります。
竹内氏はこれらの取り組みについて、「日本のお客様のニーズにより答えられるようにしたい。ドキュサインはそのために投資を行い、必要な体制をさらに強化、拡充していく」と、日本の顧客の声に適宜答えていく姿勢を強調しました。
なお基調講演の最後には、特別ゲストとして、パリオリンピック2024ブレイキン女子で金メダルを獲得した湯浅亜実さんが登壇。
竹内氏とのトークセッションでは、オリンピック後の反響や今後の展望について語りました。イベントではその場で「出演同意書」に電子署名する演出も見られました。湯浅さんは世界を席巻したパフォーマンスを披露し、会場を大いに沸かせました。
【関連リンク】
ドキュサイン・ジャパン株式会社
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