はじめに
日本の企業における総務部門は、業務の多岐にわたる柔軟性とバランス感覚が求められる重要な役割を担っています。しかし、最近の調査によると、約58%の総務担当者が自社の評価制度に不満を持っています。この現実は、評価制度が総務の業務を適切に反映できていないため、多くの担当者が自身の成果や努力が正当に評価されていないと感じ、モチベーションの低下を招いています。本記事では、総務部門の評価制度の実態を分析し、課題克服に向けた新たなアプローチを考察します。
評価制度の現実
総務の仕事における評価に関する難しさは多岐にわたります。調査結果によると、70%以上の総務担当者が「評価制度が総務の仕事を適切に評価できる仕組みになっていない」と回答しています。この発言は、評価制度に対する不信感の表れとも言えます。また、「自らの仕事が適正に評価されている」と感じる担当者は約4割に留まっていますが、実際にはその実感は薄いのが現実です。
評価制度の不満を背景にしている要素の一つとして、目標設定の難しさが挙げられます。約80%の総務担当者が、目標管理が困難であると感じており、その理由として最も多く共通しているのは「定量的な指標が設定しにくい」という点です。業務の多様性や性質上、定量化が難しいタスクが多く存在し、そのため評価に一貫性が欠けてしまっています。
定量的指標の難しさ
総務部門の業務は、多岐にわたります。具体例を挙げると、社内問い合わせ対応、文書管理、健康管理、施設管理などがあり、これらの業務はそれぞれ異なる性質を持っています。調査によれば、社内問い合わせ対応に関する定量化が最も難しいと感じている担当者が多いことが明らかになっています。このように、どの業務がどのように評価されるのかが明確に定義されていないことが、不満の一因となっています。
評価基準の不明確さは特に、役職が低い人たちに強く影響しています。役職が低いメンバーの多くは自己評価が低く、自身の努力や成果を適切に評価される機会が少ないため、モチベーションの低下を招いています。このような評価制度の運用では、現場の声が反映されず、組織全体でのエンゲージメントの低下につながる恐れがあります。
組織目標と個人目標の連動性
総務部門の業務風景において、目標が不明確である状態では業務成果も評価されません。目標設定が無理な場合、多くの担当者は「目標を具体的なタスクに分解する」ことを試みていますが、自らの業務に関連した具体的な目標を定義することが難しいと感じています。この結果、個々の目標と組織目標の連動性が薄れることになります。
この問題に対処するために、組織と個人の目標をしっかりと関連付けるための取り組みが求められます。提案できるアプローチの一つには、「定期的な面談」を導入することが挙げられます。定期的なフィードバックを通じて、目標達成状況を確認し合うことで、個人の進捗が組織の目標とどのように関わっているかを再確認し、納得感を持たせることが可能になります。
新たなアプローチの提案
総務部門の評価制度を見直し、効果的に改善するためには、以下の新たなアプローチが必要となります。
- 業務の明文化と明確化: すべての業務内容を文書化し、業務の役割を明確に定義します。業務が具体的にどのような成果を求められるのかを明示することで、評価基準を整備し、よりスムーズに評価を実施することができるでしょう。
- 具体的なフィードバックの提供: エンゲージメントを高めるためには、具体的なフィードバックが重要です。評価結果を受けて自己の強みや改善点を明確にすることで、従業員は自身の成長の実感を促進され、モチベーションの向上が期待できます。
- 目標設定の柔軟性: 業務に応じた個々の進捗や状況に合わせて、目標を柔軟に設定します。これは総務が持つ多様な業務に柔軟に対応でき、また各従業員のモチベーション向上にもつながります。
ケーススタディ:成功事例から学ぶ
成功事例として、ある企業の総務部門は評価制度の再設計を行い、業務を詳細に明文化しました。その結果、指標の設定がより明確になり、具体的なフィードバックの実施頻度も増加しました。この企業の取り組みでは、エム・エム・ポートフォリオ法を採用し、各業務の重要度に応じた定量的な評価を行ったことで、従業員の満足度が飛躍的に向上しました。このように、業務の明文化と定量化に基づく評価制度は、エンゲージメントを高める有効な手段であることが示されています。
結論
総務部門の評価制度に対する不満を解消することは、組織全体のパフォーマンスを向上させるための重要なステップです。業務の明文化、具体的なフィードバック、柔軟な目標設定といった明確な戦略を採用することで、評価制度は従業員にとってより意味のあるものとなり、エンゲージメントの向上も期待できるでしょう。これにより、総務部門は組織全体の生産性を向上させ、さらなる成長を促す役割を果たすことができるようになります。
執筆:DXマガジン編集部