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コラム

若手社員が挑戦したがらないのは、実は上司や会社のせいだった!?

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 自社の変革を主導する「X(変革)人材」なしにDXは成功しません。既存の枠にとらわれない自由な発想、デジタルの可能性を模索するアイデア力、さらにそれらを具現化する実行力と挑戦する姿勢…。X(変革)人材にはこうした要素が不可欠です。しかし、今の若い世代を見ると、挑戦しない人が増えていると感じます。
 世の中が複雑化したのに加え、景気が悪く先行きの不透明感が強まっているのが一因でしょう。「失敗なんて絶対できない」と考えてしまっているのです。物事に対して保守的で、社内も挑戦を後押しする雰囲気が失われているのです。若い世代に限りませんが、自由に発想するのを恐れ、挑戦を嫌がる傾向が年々強くなっていると感じます。その半面、ルールを守ることが大事と考える傾向も強くなっていると感じます。自由よりルールに沿って働く方が楽、そんな考え方が定着しつつあります。
 これまでは、上司や先輩から仕事のやり方などを「飲み会」という場を通じて教わってきました。就業後に上司と飲みに行き、説教されながらも仕事のやり方を1つずつ教わったものです。しかし近年、上司や先輩と飲みに行く機会は減りました。時代の流れと言えますが、ここで問題なのは上司や先輩が若手に対し、仕事のやり方や考え方を伝える場がなくなってしまったことです。若い世代にとって、仕事のやり方を知る機会がないのです。
 職場のコミュニケーションでも同じことが言えます。隣に座る先輩や同僚を見て学ぶことは多々あります。上司に怒られている同僚から学ぶこともあるでしょう。多くのビジネスマンが、席を並べて働くメンバーとのコミュニケーションを通じて仕事のやり方を学んできたのです。しかし最近は、チームメンバー間のコミュニケーションが希薄になりつつあります。新型コロナウイルス感染症のまん延を機にリモートワークが浸透し、必要事項しか共有しないコミュニケーションが常態化しつつあります。リアルの社内会議であれば、開始前や終了後の何気ない会話から多くの気づきを得られたはずです。しかしオンラインの会議では、開始前や終了後の会話すらありません。コミュニケーションの形態や目的が変わる中、仕事に対する姿勢や自社の価値観などを共有する機会がなくなっているのです。
 仕事は各自が経験を積んだり、スキルアップしたりするだけでは成り立ちません。全従業員が自社のビジョンに向かい、同じ価値観で突き進まなければなりません。コミュニケーションの場が失われつつある今、従業員が同じ価値観を持つには仕事のルールを設定することが極めて重要です。
 ここで言うルールは、業務内容を整理したマニュアルではなく、仕事に対する姿勢や考え方をまとめたものです。いわば、自社の価値観をまとめた「心得」です。「仕事は背中を見て覚えろ」という言葉がある通り、多くの日本企業が自社のルールを明確に書き記していません。今の若い世代には、自社の価値観を知るための明確なルールが必要です。
 「心得」はビジネス全般に当てはまるもの、営業担当者や接客担当者などの職種ごとに当てはまるものなどを用意すべきです。業務マニュアルではないため、仕事のやり方を厳密に定義せず、応用しやすい内容にとどめておくのが望ましいでしょう。さらに、他の会社にも当てはまるような内容ではなく、自社ならではの考え方や価値観を伝えられる内容であることも大切です。飲み会で上司や先輩が伝えてきたような思いや苦労を若手に継承することに主眼を置きます。
 若手は心得を通じ、上司や先輩の思いを知ることになります。自社の先輩たちが挑戦してきたこと、多くの失敗を積み重ねてきたこと、さらに失敗を通じて多くを学んだことを知るでしょう。こうした継承が、「失敗なんて絶対できない」という考えを「挑戦してもいいんだ」という考えに改めるきっかけになるのです。
 挑戦できるかできないかは、DX成功に大きく左右します。失敗を恐れず挑戦しようという風土を醸成すれば、自社のDXは大きく前進するはずです。そのためには「心得」となるルールを用意し、自社の挑戦の歴史を若手にきちんと継承すべきです。近年の職場コミュニケーションは「挑戦の芽」を摘み取りかねない。引いてはDX推進の足かせになりかねない。経営者はこうした状況を強く認識すべきです。
筆者プロフィール

筆者プロフィール

鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。 デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、日本オムニチャネル協会 会長、学校法人電子学園 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授を兼任
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