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日本のデジタル競争力低下の要因はDXの理解力不足にあり【週刊SUZUKI #1】

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 スイスのビジネススクール「IMD(国際経営開発研究所)」は2022年9月、「世界デジタル競争力ランキング2022」を発表しました。そこには日本のデジタル競争力が、対象の63カ国中29位という衝撃的な結果が示されていました。1位のデンマークのスコアを100とすると、29位の日本のスコアは76.84の低調ぶりです。
 なぜ日本のデジタル力はこれほど低いのでしょうか。日本のデジタルを活用する力は諸外国と比べ、劣っているとは必ずしも思いません。デジタルとビジネスをうまく結びつけられないことが要因の1つになっているのではないでしょうか。
 多くの企業が取り組み出したDXも、デジタルをビジネスに活かしきれずにいると感じます。DXを打ち出す企業の多くが、業務のデジタル化やIT導入をDXと勘違いしていることが背景にあります。これらはDXの「D」に取り組んでいるにすぎません。DXで本当に目を向けるべきは「X(変革)」です。しかし現状はIT導入ばかり進め、肝心の「X(変革)」と向き合おうとしない企業が目立ちます。これではいくら取り組んでも自社の成長に寄与しないし、デジタル競争力だって引き上がりません。
 DXの本質は、デジタルを駆使して自社を変革させることです。「D」と「X」の両輪を回すことではじめてDXと呼べるのです。「D」と「X」をどう結びつけるか。デジタル競争力の低さを解消するヒントは、「DX」という言葉の正しい理解にあるのかもしれません。
 DXを推進して競争力を高めるには、DX人材の重要性も一層増してくるでしょう。ただしこのとき求められる人材は、「デジタル人材」ではなく「変革人材」です。日本企業の多くはすでに、ITやデジタルに精通するデジタル人材を十分確保していると感じます。これから必要となる人材は、自社の変革を主導できる人です。近年の企業の人材戦略を見ると、リスキリングによって従業員のプログラミング知識習得に乗り出す動きが目立ちます。しかし今後は、広い視野でビジネスや業界を俯瞰できる人材の育成、確保に乗り出すべきです。自社の変革に必要なスキルや経験を積ませる人材戦略へと舵を切るべきです。
 今後は、こうした変革人材としての素養を持った人が多数輩出されることを期待します。学校教育に目を向けると、小中学校の教育指導要領は2020年に改訂され、主体的に学ぶ「探求学習」を重視する傾向にシフトしています。高校では2022年度から「理数探求」や「総合的な探求の時間」などといった科目が新設されました。生徒が自ら課題を見つけ、解決する力を養えるようにするのが狙いです。大学でもマークシートによる評価から論文やディスカッションを重視する動きに変わりつつあります。数年後には、こうした教育を受けた学生が企業に入社します。論理的な思考に基づいて課題を解決できる人材は、企業のDXを支える即戦力となるはずです。
 従業員の思考や姿勢が変わり、課題を解決する力を養えれば、企業のDXは正しい道へと一気に進むことでしょう。このとき企業は従業員に対し、学びの場を提供するだけなく実践する場も用意すべきです。失敗から新たな気づきを得て次回の施策に活かすといった、実践を許容することもDXでは大切です。
 新型コロナウイルス感染症のまん延拡大を機に、企業はDXを進めなければ生き残れないと自覚し始めています。さらにこの先、日本では人口減による生産性向上のニーズも一層高まってきます。「いくら取り組んでも効果が出ない」などと、DX推進に向けた取り組みを早々に諦めるべきではありません。DXを正しく理解するとともに、危機感を持ってDXを進めるという強いマインドに切り替わることが極めて大切です。マインドチェンジを伴う取り組みであるか否かがDX成功に大きく左右します。
 デジタル競争力ランキング29位。企業はこの結果を悲観せず、チャンスと捉えるべきです。マインドチェンジしさえすればランキングを一気に引き上げられると受け止めるべきです。真面目で几帳面な日本人の国民性だからこそ、その可能性は十分あります。1年後の日本の順位は上がるのか下がるのか。ひとえに企業のDX推進、個人のマインドチェンジにかかっています。
筆者プロフィール

筆者プロフィール

鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。 デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、日本オムニチャネル協会 会長、学校法人電子学園 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授を兼任
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